仁義の墓場

劇場公開日:

解説

戦後の混乱期、暴力と抗争に明け暮れる新宿周辺を舞台に、強烈に生き、散った一人のやくざの生き様、死に様を描く。原作は藤田五郎の「関東やくざ者」と「仁義の墓場」より。脚本は「女番長 タイマン勝負」の鴨井達比古、監督は「新仁義なき戦い」の深作欣二、撮影は「安藤組外伝 人斬り舎弟」の仲沢半次郎がそれぞれ担当。

1975年製作/94分/日本
配給:東映
劇場公開日:1975年2月15日

ストーリー

昭和二十一年。新宿には、テキ屋系の四つの組織が縄張りを分けあっていた。石川力夫の所属する河田組は、経営の才にたけた河田修造を組長に、組員三百名を数え、野津組に次ぐ勢力を誇っていた。兄弟分の今井幸三郎、杉浦、田村らを伴った石川は、中野の愚連隊“山東会”の賭場を襲い金を奪った。山東会の追手から逃がれ、忍び込んだ家で、石川は留守番をしていた娘、地恵子を衝動的に犯した。この事件をきっかけに、山東会と石川たちの抗争が起こり、石川らが山東会を壊滅させ、同時期に今井組が誕生した。粗野で兇暴な石川に手を焼く河田は、最近、縄張りを荒らす、池袋親和会の血桜の政こと、青木政次を消すように示唆した。石川は、政の情婦夏子を強姦し、駈けつけた政の顔をビール瓶でめった突きにした。政の報復のために、続々と親和会の兵隊が新宿に進出して来た。だがこの抗争は、野津組々長の仲介で大事には致らなかった。それから間もなく、杉浦が野津組の幹部・岡部の妹と結婚した事で野津の盃を受けた。一方、相変らず無鉄砲な石川は、野津に借金を断わられたために、その腹いせに野津の自家用車に火をつけた。岡部は杉浦に石川殺しを命じるが、杉浦は失敗。その夜以来、杉浦とその女房は東京から消えた。この一件で河田は石川に猛烈な制裁を加えたが、逆上した石川は河田を刺してしまった。一時は今井の許に身を隠した石川だが、今では石川の女房になっている地恵子が彼の身を案じ警察に報せたために、石川は逮捕され、一年八カ月の刑を受けた……。出所した石川は、河田組から十年間の関東所払いになっているため大阪へ流れた。そして一年後。ペイ患者となり一段と凄みの増した石川が、今井組の賭場に現われた。だが、石川は、一番信頼していた兄弟分の今井からも説教され、狂ったように今井を撃ち殺した。一匹狼となった石川は、自殺を企るが死に切れず、警察病院で治療を受けた後、殺人及び殺人未遂で十年の刑に服した。昭和二十六年一月二十九日、地恵子が自殺した。それは胸部疾患の悪化した石川が病気治療のため仮出獄する三日前の事だった。地恵子の骨壷をぶら下げ、骨をかじりながら歩く石川の姿は、まるで死神のようだった。そして神野、松岡、河田の邸にまで出向き金をせびり取った石川は、その金で自分の墓を建てた。昭和二十九年一月二十九日、石川力夫は府中刑務所において、二十九歳の短い一生を自らの手で終えた。その日は奇しくも、亡き妻・地恵子の三回忌でもあった。

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映画レビュー

3.0ヤクザの中のヤクザをヒーローに出来た幸福な昭和

2020年12月19日
iPhoneアプリから投稿

不粋な公権力は悪、義理堅いヤクザが寧ろ善と幻想し、ヤクザの中のヤクザをヒーローに出来た幸福な昭和の歴史資料。
この男は只残虐で自堕落な薬物乱用者だろ。
実は深作欣二のブレまくるカメラは苦手。
この瞳のギラつきは渡哲也から弟の渡瀬恒彦に託されたのね。

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きねまっきい

3.0岸谷五朗

2020年4月30日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

リメイク版の岸谷五朗を先に見ていたらやたら渡哲哉がかっこよく見える。多岐川裕美かわいい。

渡哲也があまりに立派なもんで、ヤク中役の田中邦衛が妙に際立つ。田中邦衛さんこれ必要だったんだろうかとニヤけてくる。

遺骨食いながらカツアゲは珍妙さと禍々しさがあっていいですね。

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filmpelonpa

2.5伝記映画として見れば

2019年11月12日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

そんなに悪くないと思う。

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奥河内多忙丸

4.0深作欣二監督にしか、他の誰にも撮れない作品

2019年10月28日
Androidアプリから投稿

正に仁義の墓場
仁義なき戦いの三倍は面白い

ヤクザ組織のヒエラルキーなぞ、どうでもよいという真のアウトローの姿に焦点が絞り込まれている
脚本も、強烈な印象を残す演出も、配役も
俳優陣の演技も何もかも見事そのもの
深作欣二監督にしか、他の誰にも撮れない作品だ

焼骨を食べるシーンは最早伝説
渡哲也の演技は演技というものを突き抜けて、異常な男を画面の中に現出させている

赤い風船とは一体何のシンボルだったのだろう?
もしかしたら彼が考える仁義のシンボルだったのかも知れない
石川が墓に仁義と大きく彫らせた意味を監督が解釈した映像表現だったのだと思う

多岐川裕美の配役は特に秀逸
彼の人生のもうひとつの赤い風船であったことを見事に表現した配役と演技。それを引き出した演出と撮影だ

1946年の新宿、大阪西成のシーンは目を奪われる強烈な再現ぶりだった

ラストシーンの墓がある寺は西新宿7丁目に今も実在します
日蓮宗 常圓寺という寺です
大ガードから青梅街道を西新宿に向かって徒歩10分程、末広がりの形で有名な超高層ビルの向かいです

近くの高層ビルから寺を見下ろすと
ラストシーンそのままの光景を今も見ることができます

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