五番町夕霧楼(1963)

劇場公開日:

解説

水上勉の同名小説より「武士道残酷物語」の鈴木尚之、「ちいさこべ」の田坂具隆が共同で脚色、「ちいさこべ」の田坂具隆が監督した文芸もの。撮影は「無法松の一生(1963)」の飯村正彦。

1963年製作/137分/日本
原題:A House of Shame
配給:東映
劇場公開日:1963年11月1日

ストーリー

京都五番町タ霧楼の女将かつ枝は、夫伊作の死を聞いて駆けつけた与謝半島樽泊で、はじめて夕子に会った。夕子の家は木樵の父三左衛門と肺病の母、それに妹二人という貧乏暮らしであった。色白で目もとの涼しい夕子を、かつ枝は一目見て、いける子だと思った。長年の水商売の直感だ。夕霧楼につれてこられた夕子は、同僚のうけもよく、かわいがられた。そんな夕子にかつ枝は、夕霧楼とは長年のお得意の西陣の織元竹末甚造に水揚げをたのんだ。夕子の境遇に同情したおかつのはからいなのだ。数年前妻をなくし、独り暮しをつづける甚造は夕子の旦那としてはかっこうの男だった。それから素直にうなづいて甚造に従う夕子の姿が、夕霧楼にみられるようになった。甚造も美しい夕子の身体をほめ、ひきとりたいとおかつに話した。そんな時、この夕霧楼に一見学生風の陰気な男が、夕子を訪ねて来る様になった。見とがめたかつ枝の忠告を、常になくはねつける夕子の固い態度に、かつ枝は意外に思った。青年は櫟田正順という鳳閣寺の小僧だった。織物の展示会の日、甚造が会場に借りた燈全寺で青年を見てわかったのだ。寺の小僧に遊女を買う金がある筈がない。夕子を問いつめたかつ枝は意外なことを聞かされた。夕子と正順は幼な馴染みで、吃音のため誰からも相手にされず、狐独な正順を、夕子がかばっていたというのだ。泊っても、二人は故郷の美しい風景を語ったり童謡を口づさんでいるという。そして遊びの金は全部夕子が自前でもっていたというのだ。社会から疎外されうとまれる正順も、夕子にとってはかけがえのないやさしい人であった。夕子の身体を心配して高価な薬をもって来る正順、そんな二人も、甚造の企みから正順は鳳閣寺で折かんを受ける身となり、夕子も肺病で身を横たえる運命にあった。そんな夕子の耳に鳳閣寺放火の声が!! 狐独な正順の心が社会に放った復讐の一念だった。留置場で正順が自殺したと報じる新聞を手に、夕子は美しい百日紅の花のある故郷をなつかしく思った。蒼く澄んだ日本海を下に見る、故郷の墓地、今は全てを失った薄幸の夕子のうえに、その死体をつつむようにして真紅な百日紅が散りかかっていた。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

4.0佐久間良子の魅力と京都の遊郭のまち並み、そして悲劇。

2023年2月15日
PCから投稿

水上勉の原作の映画ならば見なければ。
金閣寺放火事件を題材とした同名の小説のようで、原作は読んでいないが実際の映画の展開もそれを思わせる内容であった。

佐久間良子が登場する最初の純真さから京都の遊郭でだんだんとこなれてきて、エロティシズムを出す所がこの映画の売りどころかと思われる。店を仕切る女将の木暮実千代はとても凛とし、度胸・貫禄があった。

後半、変貌する佐久間良子と若い男性の登場。水上勉のトーンだろうか、そこから物語にいっきに暗い影が覆いかぶさる。少し、性急な展開と結末である気もするが、佐久間良子の物事を隠さない誠実さが心を打つ。人の心の奥底にある残虐さと、そのことで一人の人間がどん底までに追い詰められてしまう因果。一方、他の誰もが避けるが純粋に支えようとするもう一人の人間の苦悩。この小説・映画のテーマであるように思う。

ところどころに、新聞記事が出くる。サンフランシスコ講和条約など戦後の占領下から、徐々に日本の自治や売春についての法整備などの会話や組合の話しが出てくる。最後の方のクライマックスも新聞報道が情報を知らせてくれる。そういう時代を反映した社会性のある映画であった。

京都では遊郭があったと思われる歴史保存地区だろうかとても雰囲気のあるまち並みがスクリーンに映し出されてとても見入ってしまった。
水上勉が福井県大飯郡本郷村生まれとのことで、丹波の辺りでロケしたのだろうか。日本海の荒波に洗われた岩と海辺の家々、急斜面に立つ墓。そして主人公佐久間良子のふるさと。そのふるさとの映像はいつまでも子供の頃の純真な思い出を思い起こさせる。

広島市映像文化ライブラリー

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M.Joe

4.0日本的叙情映画。一歩間違うと「お涙頂戴映画」だ。

2022年6月24日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
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共感した! 0件)
いなかびと
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