現代やくざ 人斬り与太

劇場公開日:

解説

やくざ組織に挑戦する愚連隊と組織の中で巧みに泳ぐ二人の男を通して“暴力”のナマの姿を描く。技術的には、ノーライト、ノーレフ、手持ちカミラ、望遠レンズ一〇〇ミリを主体にし、また全篇四倍増感現像で粒子の荒れた画像を出している。脚本は「博徒斬り込み隊」の石松愛弘、監督は脚本も執筆している「軍旗はためく下に」の深作欣二。撮影は「喜劇 セックス攻防戦」の仲沢半次郎。

1972年製作/92分/日本
配給:東映
劇場公開日:1972年5月6日

ストーリー

川崎のうす汚れた売春街に住んでいる沖田勇は、売春婦だった母親が死んでからは、チンピラの手下となって馳げずりまわっていた。そして、感化院とシャバを往復しているうちに、男は街の愚連隊の番長となっていた。ところが、何年かたって、滝川組が川崎を牛耳るようになった。組織に支配されるのを嫌う勇は、滝川組と対立し組員を斬って刑務所入り。勇を失った仲間は自然離散していった。それから五年--。日本は終戦後の復興処理が急速に進みあちこちの都市では、大きなビルディングが建ち、その姿を変えていった。川崎も例外ではなく、ただ勇が住んでいた売春街の一角だけは取り残され、今だに昔の面影を残していた。勇が出所したのはそんな頃だった。彼の眼に写ったのは街の変貌であった。暴力団絵図も変り、現在は、滝川組と新興暴力団の矢頭組の二つの組織が川崎を二分していた。勇はかつての愚連隊仲間の安夫、鉄男、サブ、次郎、それに勇の女君代、一匹狼の木崎達と手を結び再びこの川崎で羽振りをきかそうと二つの組織を相手とるべく立ち上った。手始めに、滝川の子分達をつぎつぎと痛めつけていった。狂った野獣のように暴れまくる男達を滝川が黙って放っておく筈がなく、ある夜、数人の子分を使いサブ達を袋だだき、勇も拳銃で撃たれ負傷してしまう。この両者の抗争を静観していた矢頭組組長矢頭は、勇達を傘下に置こうと木崎を口説き桜会という組織を結成。矢頭組が勇達の後押しをするとなると滝川は手出しが出来なくなる。そこで滝川はこの機会に矢頭組をも壊滅させるべく関西系暴力団サイエイ会々長・大和田英作をかつぎ出す。やがて、川崎の街には、サイエイ会行動隊郡司組を始め、ぞくぞくと同系の組織が集結する。傷がすっかり癒えた勇はこのサイエイ会の圧力に最後まで抵抗しようと意気込む。一方、矢頭は、この不利な状況に、幹部の風間に滝川暗殺を命令。その夜、風間は見事滝川暗殺に成功。しかし自らもサイエイ会の白刃に倒れる。幹部を一人失ってまでも滝川を殺ることを強行した矢頭の頭には滝川組を潰し、大和組と手を握りたいと冷酷な考えがあった。大和田もこの矢頭の度胸に惚れこみ手を組むことに同意する。しかし、今だに抵抗を続ける桜会を抹殺するという条件を出した。矢頭は勇の命だけは助けると約束を取り付ける。川崎の工場跡のアジトにたてこもり必死に抵抗していた勇達は、矢頭が大和田と手を結んだ事を知り愕然とする。脅える子分達を思った勇は自ら指をつめ詫びを入れるのだった。しかしその勇を郡司組は痛めつける。その勇を庇おうとした君代は郡司組に殺される。押し黙ったまま、君代の死骸を見つめる勇は、遂に怒りが爆発。矢頭、郡司等に向って突進するが、多勢に無勢、背後より銃弾が勇の背に撃ち込まれる。倒れる勇。立ち去ろうとする矢頭はじっと身動きせぬ勇を瞶める。「これが“やくざ”だ」と言わんばかりに……。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

3.0パイパ

2024年1月21日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

2024年1月21日
映画 #現代やくざ #人斬り与太 (1972年)鑑賞

まあ、女好きで、女を人と見ていないロクデナシな男を菅原文太が演じており、すごくギラギラした映画

ノーライト、ノーレフ、手持ちカメラ、望遠レンズ100mm、四倍増感現像で粒子の荒れた画像が生々しさを増幅している

さすが深作欣二

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とし

3.0レイ◯した女と痴情のもつれ等、どうしようないチンピラ特攻隊の話。菅...

2023年11月5日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

レイ◯した女と痴情のもつれ等、どうしようないチンピラ特攻隊の話。菅原文さん、似合ってます(笑)
BS12

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はむひろみ

3.0仁義を欠いたら

2023年10月26日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

悲しい

怖い

興奮

愚連隊のリーダーが主人公(菅原文太)、地元のヤクザと反目するが、人の下になるのは大嫌いだ。
追い詰められ、隣のシマの親分(安藤昇)に世話になってしまうが・・・。
映画のタッチが次に来る「仁義なき戦い」によく似ている。
東映も義理と人情に別れを告げることに。

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いやよセブン

4.0仁義なきプレリュード

2022年11月21日
iPhoneアプリから投稿

『仁義なき戦い』の直前に撮られたいわば「東映実録系」の走りともいえる一作。高倉健や鶴田浩二が牽引したヤクザ善人論を真っ向から否定するような、粗暴で欲深く、独善的な無鉄砲者が美もへったくれもないザラついた画角の中でひたすら空転を演じる。さながら爆竹のごとき狂人を見事に演じ切ってみせた菅原文太の技量にはただただ感服だ。

本作はその冒頭からして受け手の同情を突っぱねる。チンピラの沖田(菅原)は上京したばかりの生娘をひっ捕まえて犯したり、そのまま女郎に売り飛ばしたり、暴力に盗みに悪いことならなんでもしてきたことをまるで武勇伝化のようにボイス・オーバーで述懐する。とんでもない悪人ぶりを隠そうともしない。

人斬りで服役を経ても彼の性格は変わることがなく、出所後すぐに川崎で愚連隊を再結成する。彼はそのうちに川崎を取り巻くヤクザ模様に巻き込まれていくことになるのだが、ここで手厚く彼の面倒を見てくれるのが矢頭組の組長(安藤昇)。彼は沖田の無鉄砲な生き様に「そんなんじゃヤクザ渡世はやってけねえ」と忠告はするものの、沖田が窮地に立たされるたびに何かと助け舟を出す。ある時は自分の指まで詰める始末だ。彼はまさに60年代的な仁義の体現者といっていい。しかし沖田はそんな彼を「いけ好かねえ」と一蹴する。

結局沖田は矢頭組と縁を切り、単身で関西ヤクザ勢力と相対する。そこでも矢頭組の組長は命を張って沖田の命を保証してくれるよう頼みこむ。

しかし沖田は「一度負けた奴ってのは負け癖がついちまうもんなのさ」と啖呵を切って最後の最後まで関西勢力に抵抗。街外れの廃工場に立てこもる。しかし組長の必死の説得で彼はしぶしぶ投降する。「今までの挨拶だ」と言って無抵抗の彼をボコボコに殴りまくる関西勢力の幹部。それをたまたま見かけた彼の女(冒頭で彼が犯した女)が彼のもとに駆け寄る、が、返り討ちに遭って死んでしまう。

堪忍袋の緒が切れた沖田は周りにいた男たちを敵味方の区別なく切りつけるが、間もなく蜂の巣にされる。切りつけられた者の中には組長もいた。

徹頭徹尾己が衝動に狂った男にふさわしい死の罰を画竜点睛とし、本作は幕を閉じる。その野獣のような死に様に70年代的なヤクザ像が既に胎動していたことは今更指摘するまでもない。

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