カルメン故郷に帰る

劇場公開日:

解説

わが国最初の総天然色映画として、松竹と日本映画監督協会が企画、高村松竹常務が総指揮に、月森仙之助(大船撮影所次長)が製作に当っている。脚本と監督は「婚約指輪」の木下恵介、撮影は同じ作品の楠田浩之である。色彩技術には富士フィルムの小松崎正枝と赤沢定雄が当る。尚、同時に白黒映画も製作される筈。出演者は、「宗方姉妹」「戦火を越えて」の高峰秀子、「破れ太鼓」の小林トシ子、「てんやわんや」の佐野周二、「宗方姉妹」の笠智衆、「三つの結婚」の佐田啓二などの他に井川邦子、望月美惠子、小沢栄などである。

1951年製作/86分/日本
配給:松竹
劇場公開日:1951年3月21日

ストーリー

浅間山麓に牧場を営んでいる青山の正さんの娘きんは、東京から便りをよこして、友達を一人連れて近日帰郷すると言って来た。しかも署名にはリリイ・カルメンとしてある。正さんはそんな異人名前の娘は持った覚えが無いと怒鳴るので、きんの姉のゆきは村の小学校の先生をしている夫の一郎に相談に行った。結局校長先生に口を利いてもらって正さんをなだめようと相談がまとまった。田口春雄は出征して失明して以来愛用のオルガン相手に作曲に専心していて、妻の光子が馬力を出して働いているが、運送屋の丸十に借金のためにオルガンを取り上げられてしまい、清に手を引かれて小学校までオルガンを弾きに来るのだった。その丸十は、村に観光ホテルを建てる計画に夢中になり、そのため東京まで出かけて行き、おきんや朱実と一緒の汽車で帰って来た。東京でストリップ・ダンサーになっているおきんと朱実の派手な服装と突飛な行動とは村にセンセーションを巻き起こし、正さんはそれを頭痛に病んで熱を出してしまった。校長先生も、正さんを説得したことを後悔している。村の運動会の日には、せっかくの春雄が作曲した「故郷」を弾いている最中、朱実がスカートを落っこどして演奏を台無しにしてしまった。春雄は怒って演奏を中止するし、朱実は想いを寄せている小川先生が一向に手ごたえがないので、きんと二人でくさってしまう。しかし丸十の後援でストリップの公演を思い立った二人はまたそれではりきり村の若者たちは涌き立った。正さんは、公演のある夜は校長先生のところへ泊りきりで自棄酒を飲んでいたが、公演は満員の盛況で大成功だった。その翌日きんと朱実は故郷をあとにした。二人の出演料は、そっくり正さんに贈り、正さんは、不孝者だが、やっぱり可愛くてたまらない娘の贈物をそっくり学校へ寄付した。丸十は儲けに気を良くしてオルガンを春雄に只で返してやった。春雄は一度腹を立てたおきんたちにすまないと思い、光子と一緒に汽車の沿道へ出ておきんと朱実に感謝の手を振った。

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映画レビュー

3.0故郷に錦

2024年4月3日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

楽しい

 浅間山麓の牧場に、家出した次女おきんから手紙が届く。彼女は東京で舞踏家リリーカルメンとして有名になり、故郷に錦を飾りたい。カルメンは同僚のマヤ朱実を連れて北軽井沢にやってきて、姉おゆきは歓迎、父は憮然とし、村人は好奇の目で見て。
 国産初の総天然色作品。高原の風景が美しく、カルメンらが景色から浮きまくってるのが楽しいです。日本は文化と言う校長、自分たちは芸術家というカルメン。戦後わずか五年で制作された作品とは思えない、勢いと陽気さがありました。風刺もまぜているけど、あまり不幸な様子を感じさせないのが良かった。
 シューベルトは、シューバートと言っていたのか。軽井沢の高原の鉄道が、電化されているのに驚き。

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sironabe

3.5シューベルト

2024年3月31日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

デジタルリマスターのおかげか、色が鮮やか。カルメンとマヤの服が、ほんとケバケバしくていいわ。ひなびた村に、南国の花でも咲いたみたい。

ストリッパーだって立派な仕事だけど、色眼鏡で見られるのはしかたない。でも、カルメンは、自分達を芸術家だと誇りを持っている。素肌をさらすことに全く抵抗感がない。こんなにスタイルいいなら、確かに自信があってもうなずける。脚ほんとにきれい。あと、高峰秀子が歌い始めるのもびっくりしたが、なかなか上手いので驚いた。

村人たちの前で踊る曲はシューベルト「楽興の時」、山でのBGMがシューベルト「未完成」。なぜこんなにシューベルト推し?

BS松竹東急の「生誕100年高峰秀子特集」放送を録画で鑑賞。

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ぷにゃぷにゃ

0.5きんちゃんは昔から余り利口な方じゃ無かったから、なんでも出来る

2024年1月8日
スマートフォンから投稿
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マサシ

4.5木下惠介監督の代表作に笑い、涙する。

2023年3月5日
PCから投稿

本当に面白い物語、映画だった。

木下惠介という監督の作る映画には
こちら側の意表をつくものが多い。
しかしこの映画に関しては終始あっけらかんとし
都会慣れしたカルメンと、純朴な村人たちの
何ともいえない交流と、すれ違いに終始する。
一方、カルメンの父は最初から暗い。
カルメンの存在に蓋をしているのだ。
その父が吐露するカルメンのエピソードで
過去に起こった事故を勝手に引きずり、
今も娘を案じているのが分かる。
物語の変調役として、カルメンの妹と、後輩の存在があり
彼女らとの絡みとセリフには深刻な表現は一切ない。

笑う村人と少し足りない都会っ子のすれ違い。
真剣に対応しているカルメンの姿に涙する。

ほんとうはどちらが賢いのかは分からない。
分からないけれどカルメンの帰郷で村に残ったものもあり
ラストシーンと同じく、実は清々しい映画である。
監督のメッセージはそこかな?

そして、やっぱり凄い、スゴイ、凄いと
高峰秀子の凄さを再確認した映画でもある。

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星組
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