女の座

劇場公開日:

解説

「ベビーギャングとお姐ちゃん」の井手俊郎と「二人の息子」の松山善三が共同で脚本を執筆、「妻として女として」の成瀬巳喜男が監督した家庭劇。撮影もコンビの安本淳。

1962年製作/111分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1962年1月14日

ストーリー

秋晴れのある日、バスから降りた松代が石川屋という荒物店に駆け込んだ。父金次郎の枕元には家族一同がほっとした面持ちで坐っていた。一時はあやぶまれた金次郎も、どうやら持ち直したのだ。松代は先妻の長女で、年下の夫良吉とアパートを経営しているが、その夫は下宿人と逃げてしまった。父の後妻あきといくらも年齢の違わない松代は、映画館の切符売りをしている五女雪子に招待券を貰ってそそくさと帰っていった。生花の師匠で婚期のすぎた次女梅子は、そんな姉が気にくわない。次男の次郎は妻蘭子とラーメン屋を開いているが、失業中の女夏子に店を手伝って貰うことに決めた。この家で唯一の他人である長男の未亡人芳子は、一人息子で石川屋の後継ぎの健を頼りに生きている。さて、美人の夏子は次郎の店蘭々亭で客受けがよいが、蘭子は面白くない。夏子は常連で気象庁勤めの無骨者青山に好意をもつようになった。青山を知る雪子は「姉さん好み……」などとからかうのだった。そんなとき九州から三女路子と夫の正明が上京してきた。当分居る気らしい。秋も深まった。芳子の亡夫の三回忌の日、仲人好きの住職は一流会社の技術員小宮を芳子に引き合わせた。墓参の帰路、料亭にくつろいだとき、正明は実は会社をクビになって九州を出てきたと打ち明けた。松代は正明夫婦に空いている部屋を占領されては面倒と、慌てて入れた下宿人が、六角谷というあきが初婚に破れたとき婚家に産み残してきた子であった。奇しきめぐり合わせに石川屋の人々はおどろき、あきは嬉し涙にくれた。男ぎらいの梅子と松代の娘靖子が六角谷を好きになった。が、六角谷は芳子の姿に母の面影を見るのだった。そんな六角谷が外車ブローカーで、警察にあげられたことがあると判って、芳子は梅子をたしなめた。晩秋になって間もなく夏子の見合いの相手小宮のブラジル行きがきまった。夏子を想う青山も、富士山頂の観測所へ転勤するという。そして、夏子は小宮を選んだ。石川屋の店はすでに正明夫婦が牛耳っている。ある日、金次郎夫婦は、芳子と郊外に立った。今は帰る家とてもない芳子に金次郎はいたわりの思いをこめて「いつまでも一緒に、のんびり暮らそう」といった。

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映画レビュー

4.0大家族と経済問題

2023年2月12日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

1962年。成瀬巳喜男監督。ほとんどが女の複雑な大家族。あるじ夫婦以外に、長男亡き後で家と商店を切り盛りする嫁、下宿を経営する長女、ラーメン屋を経営する次男、九州へ嫁に行った次女、自宅住まいでお花とお茶の師匠をする三女、フリーターになってしまった四女、バイトの五女。前妻の子どもか今の妻の子どもか、結婚しているかしていないか、同居しているかしていないか、でばらばらに分かれている大家族のなか、一人血のつながっていない長男の嫁が苦労する、という話。
あるじの怪我、九州から帰ってきた次女、四女と五女の結婚問題、今の妻の生き別れた息子の登場、嫁の一人息子の成績不振、というイベントが次々と起こり、家族がせわしくなく集まる。そして話し合うのはお金のこと。高速道路開通による立ち退き料、親の遺産、ラーメン屋や下宿の回転資金、結婚資金、しばらく会わなかった息子に騙されたふりで払う慰謝料、車購入の前金の口実で渡す愛情の証としての資金。見合い相手が勤める会社の株価。皮算用だったりリアルな現金だったりただの情報だったする金の多寡が人間関係を決めていく。
豪華スター勢ぞろいで悲喜こもごも。家の間取り(気の強い三女が借りている離れ、嫁親子がひっそり暮らす二階など)もすばらしいし、ここぞという場面での電車の迫力、なにげなく聞こえる町の騒音(チンドン屋、救急車、為替相場)もすばらしい。若者からベテランまで俳優人はみなすばらしいが、気高く独りよがりな草笛光子が美しく哀しい。

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