乱れる

劇場公開日:

解説

「みれん」の松山善三がオリジナル・シナリオを執筆、「女の歴史」の成瀬巳喜男が監督した女性ドラマ。撮影もコンビの安本淳。

1964年製作/98分/日本
原題:Yearning
配給:東宝
劇場公開日:1964年1月15日

ストーリー

礼子は戦争中学徒動員で清水に派遣された際、しずに見染められて森田屋酒店に嫁いだ。子供も出来ないまま、夫に先だたれ、嫁ぎ先とはいえ、他人の中で礼子は森田家をきりもりしていた。森田家の次男幸司は、最近、東京の会社をやめ、清水に帰っていた。何が原因か、女遊びや、パチンコ喧嘩と、その無軌道ぶりは手をつけられない程だ。そんな幸司をいつも、優しくむかえるのは、義姉の礼子だった。再婚話しも断り、十八年この家にいたのも、次男の幸司が成長する迄と思えばこそであった。ある日見知らぬ女との、交際で口喧嘩となった礼子に幸司は、今までわだかまっていた胸の内をはきすてるように言った。馬鹿と言われようが、卑怯者といわれようが、僕は義姉さんの側にいたい」義姉への慕情が純粋であるだけに苦しみ続けた幸司だったのだ。それからの幸司は真剣に店をきりもりした。社長を幸司にしてスーパーマーケットにする話がもちあがった日、礼子は家族を集め『せっかくの良い計画も、私が邪魔しているからです、私がこの店から手をひいて、幸司さんに先頭に立ってスーパーマーケットをやって欲しい。私も元の貝塚礼子に戻って新しい人生に出発します私にも隠していましたが、好きな人が郷里にいるのです』とうちあけた。荷造りをする礼子に、幸司は「義姉さんは何故自分ばっかり傷つけるんだ」と責めた。『私は死んだ夫を今でも愛してる、この気持は貴君には分からない』礼子の出発の日、動き出した車の中に、思いがげない幸司の姿があった。『送っていきたいんだ!!いいだろ』幸司の眼も美しく澄んでいた。

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映画レビュー

4.0乱れ髪

2024年1月8日
iPhoneアプリから投稿

ラストの展開は想像できぬ。乱れ髪のワンショットの美しさ。対するは恐ろしい現実。えらいことになってしまって、これからどう世間に顔向けできるのか?そこまでの罪を犯した訳でもなし。加山、何やってんだよ。さすがに無責任だろ。
草笛・白川小姑姉妹の論。女性が女性を閉塞する。しかし言われなくとも身を引くのが正解かも知れぬ。現代的に言えば相手のスーパーに引き抜かれて、一家を駆逐するのも一興。恋と家と業が混然として絡まって、判断基準がむらだらけである。

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Kj

5.0高峰秀子映画の最高峰!

2023年8月23日
スマートフォンから投稿
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nensho

4.5成瀬巳喜男による加山雄三

2023年8月18日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

スーパーの進出によって、存亡の危機に立たされる商店街の店々。その内の一軒の酒屋を、亡き夫の後を継いで逞しく切り盛りする礼子(高峰秀子)と、そんな礼子に密かに思いを寄せる酒屋の次男・幸司(加山雄三)の恋の物語。

終盤の電車の中でのシーンは素晴らしかった。
電車が走り抜けるカットが逐一挿入され、それに合わせて、車窓の景色も山深くなっていき、車内の幸司と礼子の物理的距離も徐々に近づいていく。視線を送って目が合うと微笑んだり、「雑誌替えて」「みかん取って」などとしきりに話しかけ、子供のように礼子に甘える幸司。
高峰秀子の芝居が、(所々で、ちょっと…と思わせる)加山雄三から子犬の様について回る年下の可愛さを引き出していて、空間移動·時間経過のスマートな処理と重層的な演出の中で、この二人だからこそ生まれたのだと思わせる独特の場が作り上げられていた。鑑賞中はもう満ち足りた気持ちになって思わず「ぼかぁ幸せだなあ」と呟いてしまった。

しかし、幸せも束の間。
有無を言わせぬ圧巻のシークエンスで物語は衝撃のエンディングになだれ込む。ラストカットは、乱れ髪の高峰秀子をアップで写し、鑑賞中ずっと疑問だったタイトルの「乱れる」の意味を即物的にサッと回収し、「終」。まるで素晴らしく手際の良い強盗にでもあったみたいにキョトン…、だった。

この作品はラスト含めやはり加山雄三こそ、だなあと思った。ちなみに加山雄三のシーンでは、所々に若大将を思わせるギターのモチーフがさり気なく(これ見よがしに)使用されていた。

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抹茶

5.0わからないのよ

2023年4月9日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

1964年。成瀬巳喜男監督。職人気質の成瀬監督が最晩年に撮ったメロドラマ。スーパーマーケットの勢いに押される小さな商店をめぐって、一人で店を切り盛りしてきた長男の嫁と、ぶらぶらしながら同居している次男。「嫁」という家族内での異質で微妙な立場、さらにそこへ次男に愛されてしまうという事件が起こる。高峰秀子の、百面相というほかない微妙な表情の変化がすごい。怪演。
ついに家を出る嫁とそれを追う次男が電車のなかで位置を変えていくことで気持ちの変化を表現する有名な場面や銀山温泉でのラストシーンはさすがというほかない。温泉に誘っておきながら次男を拒絶する嫁の、本当に正直な本音としての「わからないのよ」。
自宅兼店舗では、嫁だけが商店と続いた一階の居間奥に寝起きしており、義母や次男は二階で寝起きしている。二階への階段と一階の居間をつなぐ細い橋のような板。家族のなかの嫁の立場、商店との関係、さらに次男との微妙な愛情関係をこの板一枚で表現している。なんという素晴らしいセット。最後に高峰が駆け降りることになる温泉の階段さえセット。

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