ルナ

劇場公開日:

解説

 近親相姦を感じさせる、過剰なまでの愛情を息子に注ぐオペラ歌手の母親と不安定な思春期をおくる息子。ニューヨークとイタリアを舞台に、義理の父の死や実父との再会を通して親子の葛藤が描かれる。原題にあたる「月」が、劇中シンボリックな存在としてたびたび映し出される。撮影はベルナルド・ベルトルッチ作品には欠かせない、名カメラマン、ビットリオ・ストラーロ。脚本のジュゼッペ・ベルトルッチはベルナルドの弟。

1979年製作/145分/イタリア
原題:La luna
劇場公開日:1980年4月12日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第37回 ゴールデングローブ賞(1980年)

ノミネート

最優秀主演女優賞(ドラマ) ジル・クレイバーグ
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映画レビュー

3.5脚本が未消化ながらベルトルッチの重厚にして流麗な演出美がある

2022年6月6日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

「ラストタンゴ・イン・パリ」で一躍脚光を浴び、イタリア映画を代表する監督のひとりに数え挙げられるベルナルド・ベルトルッチ監督の最新作。傑作「暗殺の森」をテレビで観た程度では、まだ何も言えた資格はないのだが、ベルトルッチにはヴィスコンティの演出を連想させる映像美術があり、その演出は重厚で流麗である。題材の選択や思想上のドラマツルギーの異なる点があるも、ヴィスコンティに劣らぬ耽美主義がベルトルッチの命であろう。ヴィスコンティ亡きイタリア映画界において、今後の活躍が期待されるのも必然である。そんな感慨を持ちながら、この作品を観ていると、大変面白い映画に出会えたと思った。主人公の母親をオペラ歌手に設定したイタリア映画らしさが嬉しい。ただし、最後まで観て行くと、古くて衝撃的な近親相姦のテーマが充分ドラマ化できていない。月をイメージした歳月の中の家族愛の変貌の帰結を、親子相姦の継承という余りにも単純で安易なものにしている。しかも曖昧な幸福感がスッキリしない。
それでも、ヴィスコンティのズームアップに対してベルトルッチの流れるような移動撮影は、人物の動きを鮮やかに捉えていて素晴らしい。特に物語の端緒を暗示させるプロローグのシークエンスが、イメージ豊かで優れた演出を見せる。これだけでもベルトルッチだけの特長が分かる。ジル・クレイバーグは、アメリカ女優の現代的なライフスタイルを艶やかに出したが、歴史あるイタリアの舞台では溶け込まない違和感を残す。熱演であるし彼女の経歴を少しも傷つけるものでは無いが、イメージの豊潤不足であった。脚本が良ければ傑作になっていたと思う。

  1980年 10月22日  池袋文芸坐

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Gustav