劇場公開日 2021年11月5日

パリ、テキサスのレビュー・感想・評価

全50件中、1~20件目を表示

5.0見る/見られる、見せる/見せられる

2022年4月30日
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鑑賞方法:映画館

覗き部屋と映画は似ている。映画は観客が一方的にスクリーンを見る。見る主体としての観客と見られる客体としての映画。覗き部屋は、マジックミラーのようになっており、客からは女性が見えるが、女性側は客を視認できない。見る主体としての男性客と見られる客体としての女性。映画研究者ローラ・マルヴィの「視覚的快楽と物語映画」の影響があるんだろう。映画がなぜ魅力的なのか、それは「のぞき見る」快楽があるから、そしてハリウッド映画においては大抵、男が女をのぞき見る構造をしているとローラ・マルヴィは言ったわけだけど、彼女が言ったことがそのまま映画の中で再現されている。
「見る/見られる」という関係において、確かに男が女を見ることの方が多かっただろう。しかし、「見る/見られる」は何かの拍子に「見せる/見せられる」という関係に反転するのではないか。この映画を久しぶりに見てそんなことを思った。主人公の男はかつての妻を覗き部屋の鏡越しに見たくなかったのか、背中を向けて話し始める。しかし、最終的には見なくてはいけなくなる。彼はあの時、主体的に「見た」のか、それとも「見せられた」のか。

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杉本穂高

4.0ニュートラルなロードムービー

2024年5月15日
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鑑賞方法:映画館

午前10時の映画祭で観賞。

俳優は自然な間や脚本。
街や小物は自然なセット。
魅せようとやっきな昨今の映画とは違いナチュラルでしたので文化や時代が興味深かったです。

洋版、寅さんのような‥

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カルカソンヌ

5.0とても繊細だけれどもじんわり温かい

2024年5月14日
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鑑賞方法:映画館

いい映画でしたね。

きっと何回も観たくなる。

荒野を歩き続ける男が何故何のために歩き続け、そして倒れ、そしてだんまり。
不思議極まりなくさっぱり分からないオープニングだが、音楽とトラヴィスなるその男の表情に釘付けになる。

トラヴィスが倒れ運び込まれた病院から連絡を受け、弟のウォルトがはるばる迎えに来るが、記憶が曖昧で、だどたどしいトラヴィスを連れ帰るのに苦労する。

それだってトラヴィスが飛行機を嫌がったから、2日かけてテキサスからロスに車で帰ることになったのだから。

なんだよ、何があってトラヴィスそうなったんだよ

でもやっぱり ストーリーに入り込む。

ウォルトが優しい。そしてアンもすごく優しい。トラヴィスの失踪後、トラヴィスの子供ハンターを我が子のように愛情を注いで育てた2人。7歳のハンターも素直に育ち、ハッキリと覚えていない父親トラヴィスとの再会も、最初こそぎこちなかったが、だんだんと打ち解けていく。

アンから妻の消息について打ち明けられたトラヴィスは、妻のジェーンを探すことに。そしてそれを聞いたハンターも、もちろん行きたい。それまで父親としての記憶も曖昧だったが、行くか行かないかもハンターに決めさせて、家への電話にも責任を持たせるためにハンター自身に電話させる。
トラヴィス自身も父親らしく成長を遂げていっていたのだ。

だが、突然いなくなったハンターを心配するウォルトとアン。ハンターからの電話に、頬に一筋の涙をつたわせながら安否を確認するアンの気持ちが切なすぎた。ついに私まで泪してしまった。

そしてトラヴィスとハンターの、ママを探す旅が始まるのだ。2人の、前からそうだったかのような仲のいい父子のやり取りが、空白の4年間を感じさせない。

そしてとうとうジェーンを探し出すが、そこで何故トラヴィスが、さまよい歩き続ける程に、心が壊れ記憶をなくしてしまったのか露になる。
そしてジェーンもトラヴィスを愛してはいたが、不安定な夫と小さな子供を支えるには若すぎたのだ。

トラヴィス、ジェーン、ウォルト、アン
の演技がすごく良くて、表情だけでものすごくいろんな感情が伝わってきたが、何よりもハンターの純真な演技が響いて素晴らしかった。

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Qoo

5.0トラビスはどこへ行くのだろうか

2024年5月12日
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『パリ、テキサス』、冒頭の砂漠の彷徨とナスターシャ・キンスキーが美しい覗き部屋をぼんやり憶えているだけで約40年ぶりの再見。

昔は長く思えた146分も今では比較的普通の上映時間。
謎を孕む展開を緊張感を抱えて進んでいくロードムービーを最後迄楽しんで観た。

導入、意図不明の放浪を続け行き倒れたトラビスと知らせを受け4年ぶりに再会した弟との奇妙な道行きが興味深く非常に面白く観られる。

紆余曲折の末ロスの弟夫婦の家で4年前残した8歳の息子と再会する。
最初はぎこちなく学校の迎えも拒まれるトラビスだが過去の8ミリを観ることなどを経て次第に親子の絆を取り戻していく。息子役ハンター・カーソンの最初のよそよそしさと次第に愛情を露わにしていく変化の表現、幼いが賢さを感じさせる演技は見事。
やがて2人はヒューストンへ妻ジェーン(母)を探す旅に出る。
もう兄の息子を手放せない程愛している弟夫婦の気持ちが強く伝わる描写も良い。

この作品は途中迄しか脚本がなく順撮りで随時考えられたというがトラビスが妻ジェーンを見つけた後に選ぶ最後の選択は意見が分かれるのはわかる。

本来弟夫婦がトラビス達を追いかけて行く展開も考えられ撮影もされたらしいがこれはあった方が良かったと思う。

話相手を確認できないマジックミラーで隔てられた覗き部屋で再会するナスターシャ・キンスキーは美しい。二つの場面でのワンカットに近い長い会話場面は高い緊張感でみせる名場面となった。またホテルでの再会も胸を打つ。

ヴェンダースは昨年『PERFECT DAYS』で美しい東京の夕闇や夜景の中で孤独な男の姿を描いたが『パリ、テキサス』にも共通する部分も多く今観る(観返す)べき映画だと思う。

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おさかな

4.0フランスのパリと思ってました。

Mさん
2024年5月12日
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たまたま母の日に鑑賞。

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M

3.5柔らかい無常感が魅力の作品。「PERFECT DAYS」と比較してみると面白いですよ。

2024年5月12日
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ドイツでのロードムービー3部作で国際的に評価を得たヴィム・ヴェンダースがアメリカ資本を得て念願だったアメリカ南西部を舞台のロードムービーとして撮った作品。
弟ウォルターが兄トラヴィスを迎えにテキサスまで行き車でロスアンゼルスに連れ帰る第一部、トラヴィスと弟夫婦そして実子のハンターとの交流を描く第二部、そしてトラヴィスとハンターが、トラヴィスの妻ジェーンを探しにヒューストンに行く第三部の三部構成になっている。(かなり長い)
狭い意味でのロードムービーは第一部であり、二部・三部は脚本のサム・シェパードにより家族の崩壊や再生といった要素が取り入れられている。でも広い意味では全編を通して人生を旅として捉えるロードムービーであるといっても良いかもしれない。ヴィム・ヴェンダースという人は不思議な人で故国ではあまり作品を作らず海外で色々なテーマの映画を撮っている。いわば常にエトランジェ、旅人の視点に立っている人であるのでロードムービーはお手の物である。ただ基本、映像詩やドキュメンタリー向きでありドラマはあまり得意ではないと私は思っている。午前十時の映画祭で次回、上映される「ベルリン天使の詩」も少なくとも私は全く駄目だった作品である。ユーモアが効かないのも昔からの特徴だと思う。
とはいえ本作は、覗き部屋のくだり以降は一気にトーンが暗くなるものの、そこまでは何かふわふわとした明るい無常観のようなものが漂っていて嫌いではない。恐らくはカメラとライ・クーダーの音楽によるものであろう。ロードムービーっていうものはそもそも地に足ついていないほうが良いかもと思うのです。
「PERFECT DAYS」も主人公の人生を旅のように捉えた一種のロードムービーなのですが、映画自体がタイアップであり主人公をかなり無理を重ねた設定にしており、そんなやついねぇよ、とイヤな気分になってしまうところが本作と全く違いますね。

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あんちゃん

5.0全部かっこいい

2024年1月23日
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映像もストーリーも音楽も、演技・演出・役者も、ロケーションやモチーフも、とにかく画面に広がるありとあらゆるものが格好良くて、静かにじっくりと映画時間を堪能できるのではないでしょうか。小難しいことなど一切ありません。展開される事柄を素直に感じるがままに捉えていけば最高の2時間半になるはずです。

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SH

4.5なんとなくずっと鑑賞するタイミングがなかったけど 観てよかった。 ...

2023年11月14日
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なんとなくずっと鑑賞するタイミングがなかったけど
観てよかった。
すごく言い映画だけど言葉で説明するのが難しい。
トラヴィスがほとんど話してくれないので。
でも言葉で語ることが全てではないとゆうことを映画で示してくれてる作品で、多くの人に愛されているのに納得。
スタイリングが神がかってる。

配信で鑑賞

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madu

4.0答えなんてない...

2023年10月9日
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鑑賞方法:VOD

 学生だった30数年前、ヴェンダースの作品は一通り目を通したはずなんだけど、今この映画を観返してみるとほとんど記憶にない。若くて人生経験に乏しかったあの頃。きっとただただ長くて退屈なこの映画のレンタルビデオを舟をこぎながらから回しさせていたんだと思う。
 時を経て、社会に出て、家族をもって、それなりの人生の厳しさや喜びを味わってきた今、この作品のあらゆるシーンで色々と考えさせられてしまう。随所で流れるギターの音色が心にしみる。家族の在り方って何なの...その答えはやっぱりわからないまま。そう、答えなんてないんですよね...

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おまつ

4.0タイトルなし

2023年9月30日
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鑑賞方法:映画館

ハーフミラーに映ったジェーンの髪にトラビスの髪が重なるシーン。この出会えない出会いに貫かれた作品である。
ちょっと『フェイブルマンズ』を思い出す。

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ouosou

5.0ギターの音色が奏でる!! 真紅に染まる♥空白の時間を埋めるロード・ムービー

2023年9月21日
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鑑賞方法:VOD

4年間、行方不明だった兄のトラヴィスが
病に倒れ、弟のウォルトに会った!

不運に見えたトラヴィスでしたが、
実の息子、ハンターに初めて会うことができるチャンスを与えてくれたように思いました。

心に傷を負った男性が、自分を探す放浪の旅に出るストーリーでした。

久しぶりに会って、兄と弟が空白を埋めるようにアルバムの写真を見たり、8ミリビデオの
映像を見たりして、家族の想い出を振り返る
場面は、兄弟2人の物語でした。

育ての母親、アンヌはハンターを自分の子供のように愛していました。

ハンターは、トラヴィスが実の父親であると
知って戸惑う様子を見せていたけれど

夕景と道路を走らせる車のライトの灯

抜けるような青空、高層ビルの下
トランシーバーで会話するトラヴィスと
ハンター。

テキサスのパリスに向かうトラヴィスは
救いの地を求めていたように思いました。

パリスで再会した元妻、ジェーンと
トラヴィス。

マジックミラー越しに語られる感情の
ぶつかり合い!『愛』
受話器を通して聴こえてきた声の主
に気が付いたとき!

ジェーンの切ない感情が溢れ出してきました。

ホテルで初めて会うことができた
ハンターとジェーンが抱きしめ合う瞬間。

ジェーンの濡れた瞳、ハンターの横顔
美しい親子の愛がありました。

2人から去っていく選択をしたトラヴィス。

自己より、家族の愛情を深く感じた
ストーリーでした。

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美紅

5.0不朽の名作

2023年9月19日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

何度観ても発見があります。
3度目なのですが、毎回感想が違います。
20年前に初めて観た時。
まるっきり理解できなかった。
映画の基礎知識と映画体験があまりに欠けていたのでしょうね。
2回目。3年前。
これは凄い切ないラブストーリーなのだ。
トラヴィス(ハリー・ディーン・スタントン)が思い詰めてる愛に
涙が止まらなかった。
究極の愛の物語。
そう思いました。
そして今回。
息子への愛と責任。
そう感じました。

ファースト・シーン。
広大な赤茶けた砂漠のような土地。
乾ききった男が水を求めている。
生き倒れた男。
一言も話さない。
記憶がないらしい。
一枚の紙切れの電話番号。
電話を受けた弟はロサンゼルスから駆けつける。
優しい弟。

徐々にその男・トラヴィスが家を捨てた理由が見えてくる。
彼には若い妻と生まれたての男の子がいた。
育児と男の束縛を嫌った妻・ジェーン(ナスターシャ・キンスキー)は、
トレーラーを燃やして出て行ってしまった。
それから男は可笑しくなった。
発見されるまでの4年間は、何をして生きてきたのか、
分からない。
弟のロサンゼルスの家に憩い、息子の7歳に成長したハンターと
どう向き合えば良いのかも分からない。
そして義妹のアンから、ジェーンがらの送金が月に一度
ヒューストンの銀行から振り込まれると聞かされる。
ハンター(ハンター・カーソン)を連れてピックアップトラックで
ヒューストンに向かう。
銀行の前で張り込む。
見つけたのはハンター。
赤い小型車を尾行する。
行き着いた場所はゲームセンターのような、バーのようなビルの
風俗店。
ジェーンが美しい。
トビッキリに美しい。
(ナスターシャ・キンスキーの美しさは、事件です)
カーテンで仕切られたブースに幾つもの小部屋がある。
女の個室のような部屋にはマジックミラーが付いている。
客からは女が見えるが女から客の姿は見えない。
客は受話器越しに女と話すのだ。

2回目に会ったとき。トラヴィスは長い話をする。
どうして、こうなってしまったのか。
男が女を愛しすぎて縛り付けてしまったから・・・。
息の詰まった女は息をするために、子供と3人の生活を壊した。
若く美しすぎる女。
トラヴィスには似合わない。

「息子(ハンター)に会いたくないか?」
「ダウンタウンのホテルにいる。1520号室だ」
ジェーンとハンターが抱き合うシーンは、なんとも言えない。
安堵、放浪の果ての帰航。

トラヴィスとジェーンとハンター。
このトライアングルは、上手くいかない。
けれどジェーンは母親ならちゃんと出来るはず。

心が壊れるほど、1人の美しい女性を
愛しすぎた男
身を滅ぼす愛
究極の愛の映画だった。

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琥珀糖

4.0傑作‼️

2023年7月18日
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泣ける

知的

幸せ

ヴィム・ヴェンダース‼️

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ブロディー署長

5.0赤いドレスのナスターシャ・キンスキー‼️

2023年7月14日
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泣ける

悲しい

興奮

主人公とその息子が、自分たちを置いて行方が知れなくなった妻を探す旅に出る・・・ヴィム・ヴェンダース監督は「都会のアリス」「まわり道」「さすらい」といった作品でロードムービー作家として知られていたのですが、それらの作品がどちらかというとドキュメンタリーぽい作風であったのに対し、この「パリ、テキサス」は夫婦愛と親子愛をからめたメロドラマ的な展開で、そこが我々日本人好みになってるんじゃないでしょうか‼️その無常観漂う佇まいが印象的な主人公ハリー・ディーン・スタントンが、テキサスの荒野をさまよう冒頭の風景の荒涼さが象徴する映像‼️切なさを高めるライ・クーダーのギター音楽も、その映像にぴったりとハマってます‼️そして圧巻は、クライマックスの覗き部屋でのガラス越しの夫婦の再会シーン‼️「東京画」というドキュメンタリーを製作するくらい小津安二郎監督を敬愛するヴェンダース監督‼️その小津安二郎監督へのオマージュなのか、カメラをロー・アングルの長回しで撮影、妻への贖罪を祈るような神秘的な名場面となっています‼️そしてこのシーンで、待ちに待ったという形で登場する赤いドレスのナスターシャ・キンスキーの美しさは、この世のものとは思えません‼️女優として新しい領域を開拓した彼女の代表作ですよね‼️そして妻と息子を合わせた主人公がまた1人で去っていくラストシーンも、男ならジーンとくるでしょう‼️

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活動写真愛好家

5.0子役のハンター•カーソンの演技が秀逸

2023年6月22日
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彼の凛とした演技に心を掴まれました。
8歳。現実の世界にも、環境などによって、年齢以上に精神的に強くならざるを得ない子どもがいると思います。
子どもを育てる上で様々な事件や問題が多い、現在に通じるメッセージが込められているように感じました。
ナスターシャ・キンスキーがとても綺麗でした。
最後にこの映画を教えてくれた友人に、心より感謝します✩

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sugURu

3.5マジックミラー

2023年4月15日
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男のストーリーを待ち構えるナスターシャ。触れ合わない両者が重なりあい、濃厚に心が通い交わる。息をのむ。

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Kj

5.0ストーリーなんてどうでもいい。映像美を堪能する。音楽も映像にあっている。

2022年4月24日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル、DVD/BD、映画館

繰り返し視聴することに耐えうる映像美。
ストーリーなんてどうでもいい。
ナスターシャキンスキーも、どうでもいい。
いなくてもいいぐらい。
ただただ、LAやヒューストンや、そういうアメリカの風景が美しい。
自然だけじゃない、人工物も美しい。
ドライブスルーの銀行、ハイウェイ、映像のすべてが美しい。

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PatrickViewing

4.5夢の終着点

2022年4月2日
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今まさに眼前に広がる映像が自身の映画経験そのものに影響を及ぼすことって実はあんまりなくて、100本のうち60本くらいは可もなく不可もない平坦さをじっと耐え抜いている。後になってそれらの蓄積を眺めているうちに傾向やら感慨やらが見えてくることもあるけど、見ている最中に芯から打ちのめされるような作品は両手で数えられるくらいしかない。本作はその稀有な一本。

トラヴィスの大切な写真に映ったテキサス州パリスの砂漠、それは「限界」のメタファーだ。一度は散ってしまった家族という夢をボロボロのフォードでいくらかき集めても、彼らが最後に辿り着くのはこの不毛なる砂漠なのだ。

それでもトラヴィスは息子との生活の先に家族の再生を思い描かずにはいられない。4年前に撮ったホームビデオを観るシーンや、車道越しに息子と歩調を合わせながら帰宅するシーンが印象的だった。そういえば是枝裕和『そして父になる』にも同じようなシーンがあった。

ガラス越しに妻と4年ぶりの再会を果たすシーンは本当にすごかった。ガラスというフィルターを介しているからこそ互いに本心を吐露できた二人。一方でガラスという壁があるがゆえ永遠に交わり合うことができない二人。あまりにも悲痛な二律背反。壁を壊したところでどうにもならないことは二人とも痛いくらいよく理解している。

息子を妻に託し、ひとり夕闇に消えていくトラヴィス。彼の頬を涙が静かに伝い落ちていく。そこに西部劇的なダンディズムの気配はなく、美しい記憶に押し潰された男の、海よりも深い悲しみだけがある。

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因果

3.5ナスターシャ・キンスキーが美しかった

2022年2月28日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

難しい

萌える

ガソリンスタンドで倒れた記憶喪失の男は、弟により4年前に失踪したトラビスだと確認された。トラビスはテキサス州の町パリに所有する土地を目指していた。徐々に記憶を取り戻したトラビスは、4年ぶりに再会した幼い息子と一緒に、妻ジェーンを探しにヒューストンに向かういう話。
アメリカにはヨーロッパの街の名前や街の名にNEWを付けてる所が多く有るが、パリまで有るとは知らなかった。後でググったらテキサス州ダラスの北東に本当に有ったので行ってみたくなった。
鏡越しに話をするトラビスとジェーンの会話が切なかった。
夫婦だけじゃないだろうけど、愛しすぎると嫉妬するのは有る意味普通だけど、酒に溺れちゃいけんよね。
ジェーン役のナスターシャ・キンスキーが美しかった。

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りあの