劇場公開日 2000年2月26日

カリスマ : 映画評論・批評

2000年2月15日更新

2000年2月26日よりテアトル新宿ほかにてロードショー

一本の樹が象徴する「世界の法則」とは?

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タイトルから「美容師もの」と想像されると困る。そんなんじゃないんだから! 「CURE/キュア」(97)や「ニンゲン合格」(98)の黒沢清監督が〈カリスマ〉という言葉が流行する前から、このタイトルで創ろうと決めていたそうだ。

荒涼とした大地のただ中にぽつんと立つ一本の樹。樹の影響か、周辺では植樹が進まず、太古から根は張っていた木々が次つぎ枯れて果 てていた。悪魔の樹なのか?  樹は一人の青年(池内博之)が守り続ける。樹と彼をめぐり、仕事をほされた刑事(役所広司)、樹を倒そうとする者(大杉漣)、森に暮す謎めいた姉妹(風吹ジュン、洞口依子)らの思惑が、欲望が入り乱れる。樹は管で薬が注がれ、辛うじて生きている。その姿から連想するのは〈死〉。その死相は、大地の息吹と、樹に関わろうとする者たちの生気を吸い込むほどの強烈な存在(カリスマ)。観ながら、背筋が寒くなってくる。

憎悪、嫉妬、物欲、殺意…など、人間の根源にある〈欲望〉の象徴とも思える。樹に、人間の本性が託されている。それだけにこの世の〈終末〉を予感させるラストショットの持つ意味は、ゾッ~とするほど恐ろしい。

田沼雄一

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