劇場公開日 2007年2月10日

「 国家保安局(シュタージ)が支配する1984年の東ベルリンを舞台に...」善き人のためのソナタ 疲れたおじさんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0 国家保安局(シュタージ)が支配する1984年の東ベルリンを舞台に...

2024年2月27日
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 国家保安局(シュタージ)が支配する1984年の東ベルリンを舞台に、盗聴任務に従事する1人の局員の心の揺らぎを通して東ドイツの徹底された監視社会の実情と問題を静かに描いたヒューマン映画。

 世間的には非常に評価が高い作品ではある。が、本当にヴィースラー大尉は『善き人』化したのだろうか?

 大学の教壇に立ち学生に講義を行い、冷徹に学生の選別を行っているシーンがある。価値観が固定化しているであろう年齢の男性が、全てのキャリアを投げ捨ててまで短期間で善人化することが果たしてできるのだろうか。違和感を感じる。

 大尉はもともと女優の熱烈なファンという描写もあるが、女優が盗聴対象となったので、女優の生活を守るためにシュタージの掟を破らざるを得ず、結果、女優の恋人であるドライマンを保護することになっただけ、という解釈も不可能ではない。

 もともとヴィースラー大尉は『善き人』であり、その要素を隠しながら嫌々にシュタージの仕事をしているという描写があれば、解釈も変わるのだが・・・。

 なお、国家保安局(通称:シュタージ)はドイツ語の Ministerium für Staatssicherheit の略称から由来している。ドイツ民主共和国(東ドイツ)の秘密警察・諜報機関を統括する省庁で1947年のK-5(秘密警察組織・第5委員部)を前身として始まり、1989年ベルリンの壁崩壊の1990年に解体されるまで続いた。ゲシュタポ(ナチス・ドイツ期の秘密警察部門:Geheime Staatspolizei)の手法を踏襲した徹底的な相互監視網を敷いて国民生活の抑圧を行った。組織解体時には9-10万人の正規職員を抱えていたとの記載がある。

疲れたおじさん