劇場公開日 2022年8月19日

「プラトニックな美しい不倫劇」花様年華 ゆみありさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5プラトニックな美しい不倫劇

2022年9月21日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

幸せ

湿度の高い亜熱帯の気候、雨にうたれびしょ濡れのトニー・レオン、雨宿りするマギー・チャン。こうしたシーンが繰り返し現れる。狭いアパートにたくさんの人々が居住し住民たちは密な人間関係で結ばれている(彼らは決して底辺層というわけではない、それが香港なのだ)。二人もそうした人間関係の中、同じアパートの隣人として生活している。きれいとは言えない狭いアパートの共有スペース(階段とか)でのスレ違いと挨拶という当たり前の行為から始まり、二人のプラトニックな不倫は誰にも気づかれることもなくじわじわと進んでいく。それぞれが配偶者持ちなのだが、その配偶者の顔は最後まで映されない。そのためか、この不倫劇はどろどろしたものに描かれない。美しい映像と音楽が流れるなか、どこまでもロマンチックなのだ。それがカーウァイ流なんだろう。

ゆみあり