劇場公開日 2006年1月21日

「【”e πi +1=0”。そして、時は流れず・・。”友愛数の如き温もり溢れた作品。博士と”N"との関係が明らかになる過程は、心に響きます。】」博士の愛した数式 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【”e πi +1=0”。そして、時は流れず・・。”友愛数の如き温もり溢れた作品。博士と”N"との関係が明らかになる過程は、心に響きます。】

2022年10月4日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

幸せ

ー 小川洋子さんの原作は好きで、且つ、素数、虚数、完全数、ネピア数、階乗、オイラーの公式(これだけは、完全に理解出来ていない・・。)という数学の言葉を自然に、博士(寺尾聰)と、”母”(深津絵里)と10歳のルート(大人になり数学の先生になったルート(吉岡秀隆))との会話に盛り込んだストーリー構成が素晴しい。ー

◆感想

 ・今作は、観賞していたと思っていたが、未鑑賞であった。
 (どうやら、私も記憶が80Mしか残っていないようである。)
 で、観賞した訳であるが、結論から言えば、非常に面白き作品であった。

 ・”事故”の後遺症により、80Mしか記憶が継続しない博士と、”母”と10歳のルートとの、丁寧語での会話の遣り取りが、心地よい。
ー ”母”と10歳のルートが、博士に対して自然に触れる姿。
  ”君の靴のサイズは幾つだい?””24センチです。””階乗の数字だね。清々しい。”
  ”君の頭は√のようだね。素敵だ・・。”
  と毎日繰り返す教授と、”母”とルートの会話の品性高くも、教授を気遣った態度。-

・そして、”本宅”の暮らす義姉(浅丘ルリ子)と別宅に暮らす博士との関係性を自ら語る義姉”N"の真実を語る言葉。

・大人になり、数学の先生になったルートが学生に対し、黒板に様々な数式を描いて数学の美しさを解くシーンも、とても良い。

■”e πi +1=0 ”ネピア数e・虚数i・円周率πの決して交わることのない矛盾するものが統一され、自然と繋がり、そしてゼロ(無)になる・・”。
 この数式に、博士の義姉に対する、時を越えた愛が凝縮されているのである。

<今作は、哀しき物語ではあるが、数学の公式を極く自然に会話と、博士の変わらぬ愛に織り込んだ品性高き作品である。>

NOBU