劇場公開日 2024年4月12日

「箱庭の中の群像劇」クラメルカガリ 路傍立石さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0箱庭の中の群像劇

2024年5月8日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

萌える

脚本:成田良悟と聞いて、期待したとおりに小気味よい群像劇だった
尺の短さに合わせてか、物語としては全体的にコンパクトに、それこそ箱庭の中に収めたようなスケール感
キャラクターひとりひとりに対する描写は少なめだけれど、“見えないところに、それぞれの抱えるものがあるんだな”と匂わせるには十分な示唆はされている
作中に繰り返し登場するクラガリや自然空洞・ムシクイが示すように、地中に埋もれ隠され、全容が見えないこと、を楽しめるか否かで評価が分かれそうだ

鉄錆や煤煙で霞むような時代感と言うべきか、和製スチームパンクと言うべきか、大正ロマンとも一線を画した独特のレトロ感に溢れた世界観は、画面をどのタイミングで切り取っても満足度が高い絵になっているし、楽曲もその空気感を高めるのに一役買っている
その密度と一体感もあって、一時間という短い時間でありながら物足りなさは感じなかった

地下坑道や夜のシーンが多めで、各キャラクターに示唆された背景もそれなりに重たいものがあったのに、雰囲気に陰鬱をほとんど感じなかったのは不思議な感覚
好き嫌いはある程度分かれそうなところはある
けれど自分は文句なしに好きと言える作品だった

路傍立石