劇場公開日 2001年6月30日

A.I. : 特集

2001年5月7日更新

ネットを席巻する「A.I.」怪情報
壮大な謎解きの先にあるものは?

「誰がイーバン・チャンを殺したのか?」

編集部

イーバン・チャンの検死報告
イーバン・チャンの検死報告

だが、ここまで来たらもう止めるわけにはいかない。この底なし沼からは簡単には抜け出せないのだ。もちろん、コンテンツはすべて英語だが、こんな怪しい日本語のページ(右写真)、イーバン・チャンの俳句が読めるページなどもあって、プレイフィールドのとんでもない広さを垣間見せる。

イーバン・チャンのサイトを見てみよう。この男は、2066年上海生まれ。ドヌ・テック・コンサルティング社で、生物体温の研究をしている。アラゴン工科大学を卒業しており、恐らくここでジェニーン・サラと知り合ったのだろうと思われる。

関連サイトの中には 日本語のページも出現
関連サイトの中には 日本語のページも出現

彼は2142年、自らが所有するヨット“クラウドメイカー号”で航海に出るが、帰還の途中で死亡する。Pan American Coroners Officeによる検死報告に(左写真)よれば、彼は頭部を鈍器で殴られており、殺人と認定されている。

このゲームのために用意されたと思われる30以上のサイトを次々に見て回るうち、IDとパスワードを要求されるものに出くわすことになる。ところが、このパスワードがなかなかやっかいで、人物写真にある胸のタグを拡大したり、HTMLのソースコードの記述を見たりしないと分からないものもあるのだ。もちろん、ページ上にあるアドレスや電話番号にE メールを送ったり、電話をかけたりという行為も必要とされることは先にも述べた。

現在、ネット上には、この謎を解くためのフォーラムが次々に出現しており、盛んに情報交換が行われている。Yahoo!に「Cloudmakers」というグループができている他、「Cloudmakers BBS」、「Help Solve The Mystery Of Evan Chan」、さらに「The Trail」といったグループが活発だ。情報は日々アップデートされ、彼らの研究の成果は膨大なリンク集のような姿となって、この遊びに後から参加する者のための「攻略サイト」の様相を呈している。

だが、ここで生じる疑問は、「誰がチャンを殺したか?」ということよりも、「誰がこのキャンペーンを仕切っているのか?」ということかも知れない。日本の「A.I.」配給元であるワーナー映画は、我々がつかんでいる以上の情報は何も持っていないし、米本国のワーナー・ブラザース、ドリームワークスも、この件にはノーコメントを通している。しかし、これほど巨大で手の込んだキャンペーンは、どう考えてもスタジオが意図的に仕掛けているとしか思えない代物だ(それぞれのサイトを検証していくと、マイクロソフトの関与も見え隠れするという)。スピルバーグ自身がこのキャンペーンに深く関わっているという見方は十分にできるし、自分の映画の宣伝を自らコントロールしていたキューブリックが、そもそもこの方法論を思いついていたという可能性も否定できない(渦中の人物イーバン・チャンの人生は、「アイズ・ワイド・シャット」の脚本家、フレデリック・ラファエルが71年に書いた「Who Were You with Last Night」に似ているのだという)。

果たして、この謎解きにはどんな結末が用意されているのか? 映画との関連性はあるのか? 日米同時公開まで2カ月を切った今、このオンライン・キャンペーンから目を離すわけにはいかないのである。

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