劇場公開日 2024年5月10日

「音楽はあるが映画はない。」Ryuichi Sakamoto | Opus comeyさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0音楽はあるが映画はない。

2023年11月23日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

すでに言われてるとおり、これはただの演奏記録映像にすぎず、ここには音楽はあっても「映画」はありません。著名な音楽家はピアノの前から一歩も動かず、カメラはその指先と表情をピアノの前や横から、PANやズームを繰り返して撮っているだけです。演出というほどの演出はなく、正直言って「監督」がこの作品において何に貢献したのかもよく分からない。

すでに死の半年前を切った時点での記録がときとして胸を打つことは確かで、筋と骨が浮かび上がった痩せこけた指が、鍵盤の上で音を探ってゆく姿が感動的ではあります。

感動的ではあるんだけど、それは「記録」としての感動であって、演奏そのものへの感動ではないんですよね。彼は著名な作曲家であって偉大な演奏家ではなかったのだから、これは仕方がない。仕方がないが、それならなぜこんなに延々と演奏をきかされるのか。

そしてその「記録」としての感動も、やはりさしたる演出もないまま延々とつづくので白けてくるのです、正直言って。かなり熱心なファンでも、「もうちょっと何とかならなかったかな」と微かに不満を抱くような気がします。坂本氏のコンサート映像はたくさんあって、それらを上回って見る価値があるかというと、個人的には疑問ですね。

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milou