【世界の映画館めぐり】二ューカレドニア、ラ・フォア映画祭で「浅田家!」を見る ヌメア&田舎の映画館を訪問<前編>

2023年7月23日 09:00


ニューカレドニアのラ・フォア(La Foa)映画祭で上映された「浅田家!」
ニューカレドニアのラ・フォア(La Foa)映画祭で上映された「浅田家!」

映画.comスタッフが訪れた日本&世界各地の映画館や上映施設を紹介する「世界の映画館めぐり」。今回は早めの夏休みをとった編集部スタッフが、南太平洋に位置するフランスの海外領土、ニューカレドニアの2つの映画館に行ってきました。

のどかで美しいビーチ…ですが今年多くのサメが出現し遊泳区域が制限されています
のどかで美しいビーチ…ですが今年多くのサメが出現し遊泳区域が制限されています

ニューカレドニアといえば、大林宣彦監督、原田知世さん主演で映画にもなった「天国にいちばん近い島」で有名ですね。渡航前に原作の森村桂さんのエッセイをはじめ、ニューカレドニアの文化や歴史について書かれた書籍を読んで現地の情報を収集しました。首都ヌメアだけでなく、離島や他の地域も訪れてみたいな……と旅行ガイドを見ていたら、本島の北西部にあるラ・フォア(La Foa)市で毎年映画祭が行われているという情報を発見。今年の開催は6月30日~7月9日と、ちょうど筆者の渡航期間と一部重なっていたので、これは行くしかありません。映画祭の公式HPには「浅田家!」「映画 えんとつ町のプペル」という日本映画2本がラインナップされていました。「浅田家!」上映日に現地にいるので、オンラインで事前にチケットを購入しました。

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ラ・フォア映画祭(https://www.festivalcinemalafoa.nc/)は今年25回を迎えた映画祭で、毎年主にフランス本土やオセアニア地域からの映画人をゲストに迎え、地元の映画館とヌメアの映画館の2会場を中心に、ニューカレドニアの映像作家の短編作品や最新フランス映画のほか、世界の良作が上映されます。監督&出演作「わたしたちの宣戦布告」や主演作「ベルヴィル・トーキョー」が日本でも公開されたバレリー・ドンゼッリが今年のメインゲストでした。すでに10年以上前になりますが、私はフランス映画祭で来日したドンゼッリ監督を取材(https://eiga.com/news/20120913/13/)したことがあるのでご縁を感じます。

今年25周年を迎えた映画祭
今年25周年を迎えた映画祭

そして「浅田家!」は、昨年パリで開催された第16回キノタヨ現代日本映画祭で最高賞のソレイユ・ドールを受賞、今冬フランス本土で公開され、3週間で15万人の動員を集めるヒットとパリ在住のジャーナリスト、佐藤久理子さんのコラム(https://eiga.com/news/20230225/13/)でレポートされていました。欧州から遠く離れたニューカレドニアでどのような反応を集めるのか、期待が高まります。渡航前から現地のニュースレターをチェックしていたのですが、映画祭開催直後に「浅田家!」チケット完売のお知らせが届き、既にニューカレドニアの映画ファンからも注目を集めていたことがわかりました。

ヌメアの映画館、シネシティ
ヌメアの映画館、シネシティ

浅田家!」は、映画祭期間中3回の上映があり、私はヌメアでの上映を鑑賞することに。現地に到着してすぐに泊まった宿近くに、映画祭の看板も掲出されていました。「浅田家!」上映会場となったヌメアの映画館、シネシティ(https://cinecity.nc/)はヌメア中心部の港とバスターミナルほど近くに位置します。1912年にオープンした映画館Grand Cinema Caledonienから進化を続け、現在までニューカレドニアの人々に幅広い作品を届けている、老舗の映画館です。

映画館ほど近くの港にて
映画館ほど近くの港にて

夜の上映時間まで、市内を散策しました。のどかで美しいビーチや、ヨットが並ぶ港、公園でのんびり過ごす地元の方々の姿など、東京とは全く違う景色に目を奪われます。右も左もわからない初めての土地の映画館に行くのは、この上なく刺激的です。シネシティでは、映画祭の作品のほかに、最新のフランス映画、「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」などハリウッドのヒット作が上映中でした。「名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン)」のポスターも発見、8月に公開されるようです。

シネシティの券売機
シネシティの券売機
コナン君を発見!
コナン君を発見!

館内には、規模は小さいものの映画祭の特設ブースが設けられ、チケットを持った人々が集まります。自由席でしたので、上映時間前に長蛇の列ができていました。「浅田家!」が上映されたスクリーンはほぼ満席で、映画祭主催者から作品の紹介があり、フランス語字幕付きの上映がスタートです。

映画祭ブース
映画祭ブース
「浅田家!」観客の列
「浅田家!」観客の列

筆者が本作を日本の劇場で見ていなかったので比較が難しいのですが、二宮和也さんが演じる政志の型破りな行動力と、寛容でユーモアあふれる浅田家メンバーのやりとりでは、様々な場面で大きな笑いが起こっていました。誰もが心を揺さぶられる家族のストーリーはもちろんのこと、ロケ地となった三重県津市のほか、東京や桜など日本らしさを感じさせる風景、そして東日本大震災の爪痕と、外国の観客の興味関心を引く要素も多かったと思います。

ほぼ満席でした!
ほぼ満席でした!

筆者のこれまでの海外の映画館での鑑賞経験上、本編が終わるとすぐに席を立つ人が少なくないのですが、「浅田家!」ではエンドロールが終わるまで楽しめる映像が続くこともあり、観客の皆さんのほとんどが最後までスクリーンに見入っており、終映後には大きな拍手が起こりました。出口で観客賞を投票するボックスには多くの方々が集まり、「投票したいけれど筆記用具を持っていないので貸してほしい!」と、係の人に頼んでいた姿が印象的でした。もちろん私も1票投じました!

観客賞投票箱
観客賞投票箱

そして、「浅田家!」の二宮さんといえば昨年公開の主演作「ラーゲリより愛を込めて」で、強制収容所に抑留された実在の日本人捕虜を情感豊かに演じられていたことも記憶に新しいですね。ステンレスの原料になるニッケルを産出するニューカレドニアには、明治、大正期に5000人以上の日本人男性が鉱山労働者として移住した歴史があります。現地の女性と結婚し、定住した方も多かったそうなのですが、第2次世界大戦で日本人、日系人は敵国側となったため、多くの方々がオーストラリアの収容所に送られました。その後、日本に強制送還されて家族と引き裂かれ、生き別れとなってしまった人がたくさんいるそうです。筆者もこの旅を企画するまで知らなかったのですが、「ラーゲリより愛を込めて」で描かれた戦争の悲劇と同様に、多くの日本人に知ってほしいと思いました。

今も多くの日系人が住んでいるヌメアのストリートアート
今も多くの日系人が住んでいるヌメアのストリートアート

ヌメアでの鑑賞を終え、翌日は映画祭のメイン会場であるラ・フォアに移動しました。現地で映画祭関係者の方とお話ができ、映画.comでのSNSでの「浅田家!」ファンの反響を伝えたところ、驚きと共に「私は『浅田家!』を夫と一緒に見て、たくさん笑って、涙を流しました。多くの人に勧めました」とコメントをいただきました。

近日配信のレポート後半では、「アメリ」のジャン=ピエール・ジュネ監督の名を冠した、ラ・フォアの素敵な映画館をご紹介します。お楽しみに!

ヌメアのシトロン湾
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