無垢なシリアルキラー誕生描く「Pearl パール」、「X エックス」撮影前から共同執筆 タイ・ウェスト監督&主演ミア・ゴスインタビュー

2023年7月7日 19:30


「X エックス」撮影時のタイ・ウェスト監督とミア・ゴス
「X エックス」撮影時のタイ・ウェスト監督とミア・ゴス

へレディタリー 継承」「ミッドサマー」を手掛けた映画スタジオA24の最新作で、史上最高齢の殺人鬼夫婦を描き、ホラー映画ファンからの話題を集めた「X エックス」の前日譚「Pearl パール」(7月7日公開)。「X エックス」で主人公のマキシーンと、最高齢のサイコキラー・パールを演じたミア・ゴスが、本作では若かりし頃のパールを演じ、脚本とエグゼクティブ・プロデューサーとしてもクレジットされている。本作で再びタッグを組んだタイ・ウェスト監督との2ショットインタビューが公開された。

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<あらすじ>
人里離れた農場で、スターの華やかな世界に憧れるパール。厳格な母と体が不自由な父に育てられた彼女の愛への渇望が、スターへの夢を育み、両親からの異常な愛が、その夢を腐らせていく。籠の中の無垢なる少女が抑圧から解き放たれたとき、比類なき無邪気さと残酷さをあわせもつシリアルキラーが誕生する。

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Pearl パール」誕生の発端は、「X エックス」の製作準備が始まった2020年10月。コロナ感染対策のために、撮影地のニュージーランドでの隔離中、ウェスト監督はシリーズ化の可能性を感じて2作目を考え始めたという。

企画についてゴスと、フェイスタイムを通して定期的に様々なアイデアを話し合い、ウェスト監督からの提案でゴスが初めての脚本を手がけることになった。「X エックス」のマキシーンと老婆のパールの二役を演じたゴスはアイデアにあふれていたという。結果的に、ウェスト監督は「ミアなしじゃ映画を作れないと思った。ミアはパールだった。やり遂げるには、僕らふたりが全力で打ち込む必要があったんだ」振り返る。

しかし、共同執筆時は、「X エックス」の撮影も始まっておらず、次回作を作れるかどうかもわからない状況下での執筆だった。ウェスト監督は「脚本の出来には満足していたけど、作ることができるかどうかは僕たちには判断できないことだった。A24のがゴーサインをくれないと何も進められないから、何度も口にすることで実現させようと努めていた。そして本当に実現することができたんだ」と明かす。

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ゴスも「それは本当の話よ。(三部作の最終章となる)「MaXXXine(原題)」を撮る前も同じだった。いろんな不安はあったけど、“絶対に作ってみせる”と言い続けたら、現実になったの」と強い意志があったことを強調する。そして、ウェスト監督は「すべてはリスクを取ってくれたA24のおかげだね。まだ1本目も完成していなかったのに、2本もゴーサインをくれたのは、普通では下せない判断だよ。とても幸運だったし、彼らには感謝している」と、気鋭の映画スタジオ、A24ならではの勇敢な判断に対して感謝を口にした。

全米公開時には「女性版ジョーカー」(Texas Monthly)という評判も呼んだ、“静止画で笑い続けるパールの笑顔”については、「脚本にはパールの顔の静止画」とだけあったそう。「タイが、カメラを回し続けて何が起こるか見てみようというアイデアを思いつき、それを撮る直前に言ったのが効果的だったんだと思う」「考えすぎたり、分析したりする時間がなかったからよ。突然その状況に放り込まれ、そこから生まれた演技だったの」と、ゴスはパールの内面を、そのまま表現することに意識を集中した。

ウェスト監督も「現場でふと思い浮かんだアイデアだった。『いつカットをかけるか分からないけど、とりあえずその表情を保って』と伝えて、2分半ほど経って、もう十分かなと思ってカットをかけたんだけど、その時にかけてなかったら、今でも撮り続けているかもね」と撮影を振り返る。そして、まっすぐに夢に向かって突き進む、パールというキャラクターの濃度が凝縮された<ダンスオーディション>のシーンについても言及する。

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パールのオーディションがスタートし、舞台のカーテンが開いた瞬間、そこには別世界が登場するというアイデアは「最初から思い描いていた」と理想通りの演出だった。「でもこのシーンは3回に分けて別々の場所で撮影し、それをつなぎ合わせているんだ。作品にとって象徴的なシーンではあるものの、(他のシーンのように)長回しでは撮っていない。一部は教会で撮り、一部はブルースクリーンの前で撮り、もう一部はさらに別の場所で撮っている。そういう意味では漸進的だったが、華やかなショービジネスを初めて味わうという意味では重要なシーンになってるんだ」とシーンへの思い入れを語る。

このシーンを撮影するために振付師について数週間ダンスを練習したゴスの熱意を称え、「オーディション直後もパールが叫ぶ『私はスターよ!(I’m a star)』のミームがここまで浸透したのは、このダンスシーンの成功を意味していると思う。パールは相当酷いことをしてきたのに、観客は思わず彼女を応援したくなるはずだ。妙に感じるかもしれないが、ミアをはじめ、ダンスや音楽担当など、あのシーンに関わったキャストやスタッフが観客を引き込むことができたから、そういう感情が湧いてくるんだ。チャレンジグで不安もあったけど、最初からそれが狙いであり、パールにとっては大切なシーンだったから、何とか成功させなければいけなかった」と明かす。

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日本映画ではバイオレンスの巨匠・深作欣二監督による「バトル・ロワイアル」(2000)が好きだと言うウェスト監督。ほか、「リング」(1998)や「THE JUON 呪怨」(2004)や「回路」(2001)などの映画タイトルを挙げ、「1990年代~2000年初め、ジャンル映画好きはみんな日本に目を向けていた。誰もが“次のホラー映画はいつ公開される?”とワクワクしていたのを覚えているよ。黒沢清監督や三池崇史監督の作品など、すばらしい日本映画がたくさんある。ホラー映画好きとしては、あの4~5年がとても印象深いね。新しくてエキサイティングな作品はすべて日本から出てきていたような気がしたよ。当時は日本にとってツァイトガイスト(時代精神)的な瞬間だった」と分析する。

そして、次回作「MaXXXine(原作)」について「何もヒントは出せないけど、他の2作品とは全く違うものになるとは言える。公開を待ってから見るのが、最大の楽しみ方だと思う。口頭で説明するよりも、実際に観る方が断然いいよ!」とアピールした。

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