「“それ”がいる森」。相葉雅紀×「事故物件」中田監督でホラー映画のヒットを再び生み出せるか?【コラム/細野真宏の試写室日記】

2022年9月30日 09:00


「“それ”がいる森」
「“それ”がいる森」

映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。また、クリエイター目線で「さすがだな~」と感心する映画も、毎日見ていれば1~2週間に1本くらいは見つかる。本音で薦めたい作品があれば随時紹介します。更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑)(文/細野真宏)


今週末の9月30日(金)から「“それ”がいる森」が公開されます。

この作品のキャッチコピーは「この森は、実在する。」となっています。

主演・相葉雅紀×中田秀夫監督で配給会社は松竹。この組み合わせは、今から2年前の“ある作品”を連想させます。

それは、2020年8月28日に公開された「事故物件 恐い間取り」です。

主演・亀梨和也×中田秀夫監督で配給会社は松竹となっていて、まさに「主演ジャニーズ俳優×中田秀夫監督×配給・松竹」となっているのです。

この「事故物件 恐い間取り」は、ある程度のヒットを予想していましたが、ふたを開けてみると、期待以上の興行収入23.4億円を記録したのです!

そのため、本作の関係者は「事故物件 恐い間取り」の再来を狙いたい面もあると思われます。

「事故物件 恐い間取り」
「事故物件 恐い間取り」

実際に「“それ”がいる森」の完成度は「事故物件 恐い間取り」と近い感じになっていました。

というのも、中田秀夫監督に加え、脚本も「事故物件 恐い間取り」のブラジリィー・アン・山田がメインで担当し、「スマホを落としただけなのに」シリーズの大石哲也も共同で参加したホラー映画になっているのです。

では、「“それ”がいる森」も「事故物件 恐い間取り」のように大ヒットできるのか、というと、そこまで簡単にはいかないところに映画興行の興味深さがあります。

実は、「事故物件 恐い間取り」は、「2000年以降に日本で公開されたホラー映画の興行収入1位」まで記録しているのです!

ただ、これにはいくつかの背景がありました。

まず、2020年は「ホラー映画ブーム」が起こった年、と言えそうです。

2020年2月7日に公開された邦画「犬鳴村」と、2月21日に公開された洋画「ミッドサマー」が、予想を大きく上回るヒットをしたのです。

「ミッドサマー」
「ミッドサマー」
「犬鳴村」
「犬鳴村」

この2作品に共通するのは、公開のタイミングが新型コロナウイルスによって世の中がざわめき出した時。そして、実在の心霊スポットや祭りなど、作品の題材が「リアルっぽさ」のあるホラー映画であった点です。

世の中の空気に共鳴するように、「ホラー映画ブーム」が起こり、 「犬鳴村」の清水崇監督は、キャリア初の「日本公開での興行収入10億円を突破」し、興行収入14.1億円を記録しました。

ちなみに、日本における「ホラー映画ブーム」は、「2020年」以前では、2000年周辺までさかのぼることになります。その象徴的な作品にハリウッド映画化もされた「リング」と「呪怨」がありました。

リング」の監督といえば「事故物件 恐い間取り」の中田秀夫監督で、「呪怨」では「犬鳴村」の清水崇監督となっています。

そのため、2020年8月28日公開の「事故物件 恐い間取り」の際には、まさに“あの頃”を彷彿させる組み合わせが実現し、再び「ホラー映画ブーム」が起こるのではと話題になったのです。

このような後押しも加わり、コロナ禍であるにもかかわらず、「2000年以降に日本で公開されたホラー映画の興行収入1位」を記録するまでの大ヒットとなった背景があります。

その後は、清水崇監督が“恐怖の村シリーズ”として第2弾となる「樹海村」(2021年)、 第3弾の「牛首村」(2022年)と、コロナ禍に負けずにコンスタントに作り続けました。

しかし、残念ながら、コロナにも慣れが生じるように、世間の作品への関心は薄れていき、興行収入はどんどん下がっていくことに。

このように見ていくと、「ホラー映画ブーム」を起こすことが、いかに難しいのかが分かるでしょう。

「“それ”がいる森」
「“それ”がいる森」
「“それ”がいる森」
「“それ”がいる森」

では、「“それ”がいる森」も同じ運命をたどるのか、というと、まだ未知数です。

それは、「事故物件」シリーズとしてではなく、「“それ”がいる森」といったタイトルからも分かるように、大きく舵を切っているからです。

題材に「実在するスポットを舞台」という「リアルっぽさ」を取り入れつつも、怖さだけを追求するのではなく、どこかユーモアを追求している面もありそうです。

例えば「事故物件 恐い間取り」の場合は、見た人は、最終的には「あれ? これって『ハリー・ポッター』?」のようなツッコミをしたのかもしれませんが(笑)、本作でも「似たDNA」を感じます。

「“それ”がいる森」
「“それ”がいる森」

このように、なかなか前例を見ない「チャレンジングなホラー映画」となっていますが、これまでも創意工夫によってヒットを導いている中田秀夫監督だけあって、どこまでヒットできるのか興味深いところです。

冷静に見ておきたいのは、今は「事故物件 恐い間取り」の時のような「ホラー映画ブーム」ではないので、興行収入10億円を突破できれば十分なヒットだという点です。

2020年の際には10代~20代がコア層でしたが、彼らは再び大きく動くのか? また、今も根強い「嵐ファン」はどのように動くのでしょうか?

この「チャレンジングなホラー映画」がどのように受け入れられるのか注目したいと思います。

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