劇場公開日 2023年10月20日

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「【”被害者を加害者にしない。”仏蘭西原子力産業複合企業の労働組合代表女性が、一度は被害者から加害者にされながらも最終的に法的に覆し無罪を勝ち取る姿を、イザベル・ユペール独特の演技で魅せる作品。】」私はモーリーン・カーニー 正義を殺すのは誰? NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【”被害者を加害者にしない。”仏蘭西原子力産業複合企業の労働組合代表女性が、一度は被害者から加害者にされながらも最終的に法的に覆し無罪を勝ち取る姿を、イザベル・ユペール独特の演技で魅せる作品。】

2024年5月2日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

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■実在した仏蘭西原子力産業複合企業アレバ社の労働組合代表、モーリーン・カーニー(イザベル・ユペール)は、中国とのハイリスクな技術移転契約の内部告発者となった。
 その後、彼女は自宅で何者かに襲われ凌辱されるが、さらに警察側からそれが自作自演だと嘘の供述を強要され、肉体的にも精神的にも追い詰められそれを認めてしまう。

◆感想<Caution!内容に触れています。>

・モーリーン・カーニーを演じたイザベル・ユペールの、毅然とした労働組合代表の姿として5万人の従業員の雇用を守るため内部告発する。
 が、その後自宅で襲われつつ、その真実を警察のブレモン曹長(ピエール・ドゥラドンシャン)の執拗な尋問で徐々に追い込まれ、自作自演を認めてしまう流れ。
ー イザベル・ユペールの「エル ELLE」のイメージも入ってしまい(意図的かな。)、彼女が襲われた事実が自作自演かもしれない・・、と思わせるストーリー展開が面白い。
  彼女は、縛られた椅子を自宅の庭で燃やしてしまうし、拘束されたテープ類は全て自宅のモノだし。だが、過去同様の事件が有り納得できない若き女性捜査官がクレモン曹長に資料を掲示し食らいつく姿が後半効いてくるのである。-

・そして、彼女は被害者から加害者になってしまうが、常に彼女の側に立つ夫ジル(グレゴリー・ガドゥボワ)の姿に救われる。
 夫の支えが無かったら、彼女は国家的陰謀に屈したのではないかな。実在のモーリーン・カーニーのコメントにもあるように。-

■4年が経ち、モーリーン・カーニーに且つての不屈の闘志が戻り、彼女は新たな訴状を提出し、世論も巻き込み、更に当時クレモン曹長に”同様の事件が有ります。”と資料を出して食らい付いた女性捜査官から資料を貰い、その事件の当事者に会い証言を得る事などにより、新しい弁護士と共に、当時の警察の捜査上の不備、押収品が全て無くなっている事を指摘し”自分は、被害者である。”と事実を勝ち取るのである。

<今作は、いわゆる社会派サスペンスになるのであろうが、根本にあるのは組織の中枢にいる女性に対する無言の圧力と排除しようとする見えない力の恐ろしさを描いているのだと思う。
 故に、今作の女性の告発者であるモーリーン・カーニーが巨大組織に抗い、一度は屈するモノの最後は復活して勝利する姿に喝采を覚えるし、ラストの法廷シーンでモーリーン・カーニー演じるイザベル・ユペールが、第四の壁を抜けて観る側に毅然とした視線が
 ”貴方が所属している組織は、女性に対する無言の圧力と排除しようとする見えない力がないか!”と言っているように、私には思えた作品である。>

NOBU