劇場公開日 2023年10月13日

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「人間とは?」月 Noriさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0人間とは?

2023年11月4日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

知的

難しい

2016年、やまゆり園における植松聖の為したことをモチーフとして描かれた本作。まだ記憶に新しく、自身がどう感じ何を考えたのか、今どう考えているのか、一定の年齢に達した者ならば皆が思考できるだろう。

今、障害者に関する施策は施設から地域へと題され、施設に収容して日常生活を送ることからの脱却を希求している。そのためにはマンパワーが絶対的に必要なのだが、生産年齢人口の減少が明らかに見込まれるこの国、社会福祉にかけられる予算も脆弱なこの国で可能なのか?という思いは拭えない。脱施設によって、結果家族への負荷が日常になるような。

人間って何ですか?と周囲に問いかけ、あなたは今幸せですか?と障害を有する者たちに問うて回る元施設従業員・さとくん。行動障害を有する者は、関わり方次第でその障害の発現も軽減するが、周囲の者が100%その障害に気を使える者ばかりではない。自身の子どもが突然噛まれたり叩かれたりすることを許容できる親は多くないだろう。それでもなお共生を模索しなければならないのは、理屈としては分かっているが、どこまでできるか?私には自信がない。

どの命も大切だが、時と場合によっては、という思考が私には確実にある。私はそんなに善人ではないのだろう。それでもなお、そこから目を逸らさずに、難しい答えのない問いを死ぬまで考え続けていくこと。その覚悟だけは持っておきたい。安易な答えに飛びついてしまうことなく。

Nori