劇場公開日 2023年12月22日

「役所広司が差し出す新たな引き出し」PERFECT DAYS 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5役所広司が差し出す新たな引き出し

2023年12月22日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

幸せ

毎朝、木造アパートの一室に敷いた布団から起き上がり、植木に水をやり、自販機でコーヒーを買って飲み、トイレ清掃に向かう男。平山というその男性の日々のルーティンが、関わる人々とのやり取りによって微妙に揺れ、それでも基本型はキープしたまま進んでいく。

なんとミニマムで上手い構成かと恐れ入る。与えられる情報の積み重ねによって、平山の背景が垣間見えて来るのだ。なぜ、彼はアパートに一人暮らしなのか、なぜ、トイレ清掃員なのか、という疑問が、本当に微かではあるが、腑に落ちて、ビム・ベンダースの脚本と演出の妙に心を奪われてしまった。

世界的な建築家たちが携わった東京・渋谷にある17のおしゃれトイレが舞台というのも上手いと思う。しかし何よりも、平山を演じる役所広司の、人を遠ざけず、かと言って近づけず、日々の生活を存分に楽しんでいるようで、実は心の底には深い悲しみを湛えている、ハッピーでアンハッピーな表情と演技が凄くてまいる。ベンダース演出の下、彼はまた新たな引き出しを差し出してきた。

清藤秀人
またぞうさんのコメント
2023年12月24日

掃除には車で行ってます、本編見てますか?

またぞう
momokichiさんのコメント
2023年12月23日

>実は心の底には深い悲しみを湛えている

まさにこれ。言語化していただきありがとうございました。
ほんと深みのある演技でした。

momokichi