劇場公開日 2023年6月16日

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「主人公の無表情な顔を捉えたアートワークが全てを物語る一作」アシスタント yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5主人公の無表情な顔を捉えたアートワークが全てを物語る一作

2023年8月17日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

2017年のワインスタイン事件以降、#MeToo運動やその成果に関わる映画作品がいくつも制作されました。本作もその一つに含めるべき作品ですが、映画が語る物語は、バラ色などではありません。

むしろ便利な小間使い程度にしか扱われず、社内の問題を指摘しようとした途端に上層部は彼女を危険な異物として認識し、圧力をかけてきます。その過程で、主人公、ジェーン(ジュリア・ガーナー)は徐々に表情も生気も失っていきます。

彼女が問題に主体的に立ち向かうのであれば、この息苦しさも軽減されるのですが…、しかし物語は、ジェーンの勤務する企業の会長が女性社員に対して不適切な行為を行なっている、ということ示唆するのみで、ジェーンにも観客にも容易に問題に立ち入ることを許しません。

ジェーンの姿を通じて、「映画の中で分かりやすい勝利や前進を描いたところで、まるで現実は変わらない」と痛烈に批判してるかのようです。追い討ちをかけるように、結末付近である男性がジェーンに投げかける言葉は、当事者性の欠如どころか全ての責任を女性の方に負わせようとする意図が垣間見え、背筋が寒くなりました。

楽しい気分で劇場を後にしたい人に本作のおすすめはやや躊躇しますが、優れた作品には変わりないので、機会があればぜひ。

もちろん本作と合わせて、『シー・セッド その名を暴け』や『ウーマン・トーキング』も、未見であれば鑑賞をおすすめ。

yui