バカ塗りの娘のレビュー・感想・評価
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【”津軽塗は、私がやり続ける。”不器用で引っ込み事案な娘が津軽塗職人を目指す姿を描いた作品。モノ作りに一心不乱に取り組む人の姿は美しいモノであると思った作品でもある。】
■青木家は津軽塗職人の父・清史郎(小林薫)と、スーパーで働きながら父の仕事を手伝う娘・美也子(堀田真由)の2人暮らし。
家族より仕事優先の清史郎に母(片岡礼子)は愛想を尽かせて出ていき、兄ユウ(坂東龍汰)は自由に生きる道を選び、同性の尚人(宮田俊哉)と暮らし始める。
美也子は津軽塗に興味を持ちながらも父に継ぎたいと堂々と言えず、スーパーのバイトにも気が入らない。
◆感想
・モノ作りに一心不乱に取り組む人の姿は美しい。
今作で言えば、自分の津軽塗への想いをぶつけた学校の廃屋に置かれていたピアノを、津軽塗で装飾する美也子の姿だろう。
ー 雪の降る中、深夜までピアノを、津軽塗で装飾する姿。-
・清史郎の父で、大臣賞も取った祖父の葬式のシーンも良い。
ー 久しぶりに揃った家族と、弔い酒を酌み交わす清史郎。勿論、そこにはユウ、尚人もいる。そして、美也子も・・。
<今作は、日本が誇る伝統工芸・津軽塗がつなぐ父娘の絆、そして家族の物語を描いたヒューマンドラマである。
派手さはないが、良き作品であると思う。>
「家業を継ぐ」ということ
「伝統工芸は(当事者が)ちゃんと守っていかなくてはいけない」とか、「継げる家業があるなんて羨ましい」など、当事者じゃないから言える暴力的な言葉だ。
どんなに努力しても最後はセンスがものをいう厳しい伝統工芸の世界は、センスがなくてもなんとか惰性でメシは食っていけるサラリーマンには決して理解できないことだろう。
軽薄で陳腐な言葉にしかならないが、それでも誰かがバトンを継いで欲しい。
輪島市の惨状に対しても私たちは鈍感すぎる気がする。
少子高齢化による後継者不足、家父長制、ジェンダー等、今の伝統工芸世界の課題に真摯に向き合う。
津軽塗職人の父と、その娘の奮闘を描いた物語。 ばかみたいに手のかか...
津軽塗職人の父と、その娘の奮闘を描いた物語。
ばかみたいに手のかかる塗りの作業、寡黙に丁寧に続けてゆく様子。人付き合いやおしゃべりは不得手そうですが。
多くを語らない職人気質、大作を仕上げて周囲に認められる様子、感心して見入ってこられるお話でした。
津軽塗を知れた
青森県弘前市で、青木美也子は高校卒業後もやりたいことが見つからず、スーパーで働いていた。不器用で何をやってもうまくいかず自分に自信を持てない彼女だったが、津軽塗職人である父の手伝いは好きだった。しかし父は津軽塗を続ける気力を失い、父の身勝手さに愛想を尽かして家を出ていって新しいパートナーのいる母、津軽塗の家業を継がず美容師になりゲイの兄、施設に入ってる祖父、と家族はバラバラだった。そんな中で、津軽塗をやりたいと言い出せない美也子は兄のパートナーに連れて行かれた廃校に有ったグランドピアノに津軽塗を施す事を思いつき・・・てな話。
津軽塗はバカに手間をかけ丈夫な塗りと言われる、と紹介が有るが、漆塗りは輪島塗くらいしか知らず、調べてみると日本には主な漆器の産地だけでも23位有るらしい。その中でも丈夫なのが津軽塗だと知り興味を持った。今度青森に行ったら津軽塗を買ってみようかな。
美也子役の堀田真由は自信の無さそうな役どころなんだけど、やりたい事を見つけだんだんと自信を持って明るくなっていくところが良かった。父役の小林薫はいつも通り渋かった。
それでいいのか?って思ってしまったな。
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真由は両親が離婚し、漆塗りの父と住んで、少し手伝ってた。
本当は漆塗りを継ぎたいが、スーパーで働いてた。
やりたい仕事ではなかったからか、ヘマばかり。
ある日、兄が恋人とロンドンに行って同性婚すると言い出す。
よって漆塗りは継がないと、喧嘩同然で出て行った。
そんな折に真由は廃校になった母校に忍び込み、ピアノを発見。
それに漆で装飾することを思いつき、役場で許可を得て実施。
するとそれが好評になり、ヨーロッパに招かれることに。
ということで空港で父との別れのシーンでジ・エンド。
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バカ塗りというのは、バカ丁寧に何十回も塗り直す津軽塗りのこと。
うーん・・・評価がいいので見てみたが、今イチに感じたなあ。
真由がそもそも引っ込み思案で口下手で、あまり自分の意志がない。
その人が急にピアノを装飾しようと思った経緯が、よく分からず。
わざわざ役場まで行って、許可を求めるなんて相当な意志やで?
ましてや、不法侵入を咎められる可能性だってあるのに。
その作品を作るに当たって、過労で倒れるシーンは確かにあった。
でも大変さが伝わるのはそこくらいで、意欲も苦労も今一つ分からん。
でその最初の作品がいきなり世界に認められました~・・・って!
大ベテランの父でさえ漆だけで食ってくのが難しいから、
家計を支えるためにパートで働いてた真由が簡単に成功・・・・。
うーん、それでいいのか?って思ってしまったな。
蛙の子は蛙…血は争えない
馬鹿に手間隙がかかる塗りものなので「ばか塗り」というそうですけれども。
それだけ精魂を傾けなければ身につけられない技ということなのでしょう。
評論子も見習いたいところですが、一つのことに打ち込めることは、この地方の気質(かたぎ)の美しさなのかも知れません。
そんなことにも思いが至りました。
一芸にに取り組む父娘ということですから、「父親の背中を見て」というのか、「蛙の子は蛙」というのか、「血」は争えず、両者の絆も自(おの)ずから深まりそうです。
そんな深くて温かな父娘関係の再生を、しかし静かに描いた会心の一本だったと思います。評論子は。
佳作としての評価が妥当と思います。
伝統工芸の後継者問題の中に現代の価値観とのぶつかり合いもあって、見応えがあった
面白かったし、バカ塗りの意味や、漆を塗る工程なども知れて良かった。
片思いの相手がいて恋愛展開になりそうだったが、実はその相手が同性愛者でお兄ちゃんの婚約者・・・
ショックで吹っ切れて職人の道に進む。父親に反対されるが、作品が海外で評価されて、家族にも認められる。主人公が後継者になることで、兄が家業を継がずに外国で暮らす事も許されるだろうし、大団円で終わる。
少し残念だったのが、同性婚の話を聞いた両親の発言が曖昧だったこと。
怒りもせず、祝福もせずに意見を言わずにスルーした。
賛成はできないけど、不満を口にする自信もないといった感じか。
どういう反応をするんだろう?とワクワクした分、肩透かしだった。
映像が綺麗。堀田真由ちゃんが可愛い。
弘前の津軽塗の職人である父とその娘との家族のお話。堀田真由ちゃん目的で鑑賞しましたが、不器用だけどひたむきに生きる、美也子の繊細な心情に心動かされました。絵がとても綺麗で、弘前にも行ってみたいなと思いました。
どこかで見た既視感はあるけれど
「あさイチ」に堀田真由が出演した時に紹介していた映画。アミューズは堀田真由のような所属俳優を主演にした映画を製作するわけだが、在籍時代に神木隆之介が初めて浜辺美波と共演した作品も製作された事情は同じようなものか。ヒロインに揺れがあるので少しもたつくところはあるが、それほどイライラはしない。
堀田真由は「わろてんか」で知ったけれど演技を実感したのは「エール」で登場した時期は短いが主人公をたぶらかした上で奈落に突き落とすダンスホールの踊り子役だ。堀田真由は滋賀の人なので滋賀を舞台にした映画かドラマか何かに出演しないだろうか。
舞台が青森でありヒロインが廃校になった学校の備品のピアノに漆を塗るので何か東北のどこかにある母校の高校にピアノを寄贈した設定がある昭和55年にNHKで放送した「四季・ユートピアノ」と似通っていてヒロインのピアノ調律師の栄子役で出演した中尾幸世が製作された時点の年齢は今作を撮影当時の堀田真由と大体同じくらいなので連想してしまった。
東北だなぁ・・・
みんな口数少ないし、我慢強いし、どこか意地っ張りだし。でも堀田真由さんや小林薫さんは東北出身じゃないし、監督さんも違う。音楽も少ないし、焦れる位のゆっくりしたテンポがそういうイメージを喚起したんでしょう。だからこそ終盤、吹っ切れた堀田さんの笑顔が眩しい。
そうはならないと思うんだけど・・・
2023年劇場鑑賞252本目。
パンフレットが売り切れていて、再入荷の目処はなく、メルカリやヤフオクも全滅状態だったのでこの後もう一本観たあと高速乗って往復3時間かけて隣の県に買いに行きました・・・。これから公開する地域の方は早めに買いに行った方がいいですよ!
さて、会津塗の職人と、その娘の話なのですが・・・。この堀田真由演じる娘さん、見た目の印象通りちょっとぼーっとしてまして、小林薫演じるお父さんは息子に継がせたいので娘には伝承していません。
この前提があっての物語の展開やオチがどうも無理があるなぁと思ってしまいました。
父の救い
高名な職人である父の息子であるプレッシャーと、世界で認められた娘を誇らしく思いながら自分の不甲斐なさを感じつつ・・・
一人の職人の人生を感じる。
作品というのは好みだし、運もある。でも残してくれてありがとうという感謝を送りたい。
バカ丁寧に塗って削ってを繰り返すのが津軽塗り。そこに暮らす人びとの実直さが培ってきた伝統工芸の行く末が気になります。
タイトルを見ても内容が「?」だったのですが
作品紹介を読んでみたら「津軽塗り」職人の話との事。
地域発作品だし観てみましょう、という訳で鑑賞です。
舞台は青森県弘前市。
津軽塗り職人の父(小林薫)とその娘(堀田真由)。
その家族を中心に、
・津軽塗りってどういう物なのか
・津軽塗の現状はこんな感じ
・津軽塗の未来への不安と希望
といった事を、津軽塗に関わってきた家族を中心に描いた
地域発ヒューマンドラマです。・_・
◇
ヒロインは青木美也子(堀田真由)。
津軽塗職人の家に生まれる。
祖父は、手がけた作品が賞を取るほどの名人。
父(小林薫)もその後を継いだ。
だが、仕事の量は年々減る一方。 …う~ん
時代の流れ。仕方無い。頑張ろう との思いがある。
もうこの仕事に先は無いのでは… との思いもある。
父がこなす仕事だけでは、生活していけない…。
そのため美也子は高校を卒業後
地元のスーパーで働いてきた。レジ担当。
” 家計を助けるため ” そう割り切れば良いのだが
自分なりのこだわりがあるようで、対人関係に
機転の利く性格でも無いようだ。 …う~ん
客とこじれる事もあり、息の詰まる日々が続く。
そんな美也子も、仕事の後に父の仕事を手伝う事も。
津軽塗の仕事は、ひとつの工程が繰り返し行われる。
そんな時間が美也子は気に入っている。
実は美也子には3つ違いの兄がいる。
父は、兄が家を継ぐことを期待した。
兄は、家を継がずに美容師になった。
たまに家に顔を出すが、独立して生計を立てている。
と、作品の前半は、
このように比較的緩いペースで話が進むのですが…
美也子が仕事先のスーパーに通う途中の花屋さん。
そこの男性の店員さんにほのかな恋心が…
そんな話の辺りから、話が一気に流れ始めます。
( 予想外の展開でした・_・; )
ある日、家に兄がやってきます。男性と二人連れ。
” (あ…) ” と美也子。
そこに居たのは、花屋で見かける「彼」。
兄が、父と美也子に花屋の彼を紹介する。
「彼と結婚しようと思っている」
「… (父)」
「… (美也子)」
美也子のほのかな恋心、あえなく終了…。
とまあ、このような感じに
地域発+伝統工芸 だった話が
地域発+伝統工芸+LGBT になり
地域発+伝統工芸+LGBT+国際化 へと
想定外の方向に話が膨らんだ印象もあるのですが
伝統工芸の世界をテーマに、伝統を守るだけではなく
生き残るための行動や活動を模索していること
それが伝わってくる内容でした。
彼らの努力が実を結べばいいな と思います。・_・
観て良かった。
◇あれこれ
■堀田真由さん
ストレートの黒髪。
どことなく漆器の持つイメージに近いかも、と思いつつ
どこかで見たような気がしたので過去の出演作を確認。
「殺さない彼と死なない彼女」の
「きゃぴ子」でした。
「地味子」とのコンビが良い味を出していました。・_・☆
この作品での「物静か」なイメージとは反対の陽気キャラ。
演技の幅が広い女優さんだなぁと、改めて認識。
■木野花さん
ドラマで、主人公のご近所に住む「おばちゃん」を
演じさせたらピカ一な女優さんです。 ・_・☆
※最近の作品だと「波紋」も少し前で「凪の島」など
津軽弁もネイティブに聞こえるのがすごいです。
■漆器の産地
弘前の津軽塗というのを初めて知った気もするのですが
日本のどこが名産地なんだろう と気になって調べてみました。
よく「日本三大○○」と言われるものがあります。
漆器にも「日本三大漆器」というのがあるようです。へぇ
異論はあるだろうなぁと思いつつ、名前を上げてみると…
・会津塗り
・輪島塗り
・紀州漆器(これだけ紀州塗と呼ばないのは何故?)
この辺りになるのでしょうか。
他にも沢山の産地名が確認できました。
日本の伝統工芸品と言っても良さそうです。・_・
◇最後に
父と娘が主人公の話というので「高野豆腐店」のような
お話かと(勝手に)想像していたのですが
違いました・_・;
豆腐は食べ物ですが、津軽塗りは食べられません
…ってそうでは無くて☆
そうではないけれど、間違いとも言い切れない(どっちだ)
豆腐は食べるものです。日常の食品。
漆器は日用品にもなり、工芸品にもなります。
この作品では、美術工芸品として「未来」への希望を
見い出すような終わり方をしていて、現状からの脱却
という点で、間違っていないとは思うのですが
手の込んだ工芸品は、使われずに飾られてしまうような
ケースが多いのでは とも想像してしまいます。
次第に生活の場から遠ざかっていってしまいそうな予感…。
実用品としての漆器は、剥げたら何度でも塗り直し、繰り返し
何年でも何十年でも使えるという利点があるそうです。
「物を大事に」使う世の中に回帰するならば、漆器への陽の
当たり方も変わってくるのでしょうけれど。う~ん。
いずれにしても「塗り」の技術が廃れてしまわないよう
継承されて行けばいいなと、ただ祈るのみです。
※ 部外者の言い分とは承知の上で描きました。勝手な事を…と
気分を悪くされる方がいらっしゃいませんように。( _”_ )
☆映画の感想は人さまざまかとは思いますが、このように感じた映画ファンもいるということで。
地味ながら良作
漆塗り職人の娘の話。
優れた職人だった祖父は介護施設に。父はやる気なし飲んだくれ。兄はフリーダム同性愛者。母は価値観押し付け理解なし。
なかなかの状況だけど、何をやっても身のはいらないミヤコの漆塗り職人としてやっていく覚悟を丁寧に描いている。
ミヤコはあまり口数が多くないのでこちらが慮っていく必要があるが、演技もよくて応援したい気持ちになった。
近所のおばさんも良かった。バラバラになりつつある家族を陰ながら気にしつつ、助け船を出す感じ。おばさん偉い。
一点、いくら兄のパートナーで憧れの人だったとしても、人気のない場所にのこのこついていくのはどうかと思ったけど…
派手さはないけど話の展開も演者のレベルも高い良作。
お兄ちゃん
自然な演技がよかったです。
主人公の最後の方の笑顔がもう少し早く見れたら、もう少し感情移入ができたかも。
前半退屈だったことと、肝心の完成したピアノにそこまで感動できなかったので、物足りなく感じました。
いい映画だけれど、物足りない
途中、エッと思わされるヒネリがあるものの、基本は、若い女性がいろいろあって、結局は家業の津軽塗の職人になるという、極めて素直なストーリー。
堀田真由や小林薫の演技、津軽塗の美しさ、そのほかいいところはたくさんあるが、わざわざ映画館で見るには地味。物足りなかった。
主人公の揺れ動く心情を読み取らせる作品
津軽塗り職人を引継ぐお話と思って観に行ったら、心がぐちゃぐちゃにかき混ぜられました。
淡々としたしみじみとしたお話と思っていたら、ちょっと辛いお話で、感情を飲み込まれないように観ました。
詰込み過ぎという感想も読みましたが、確かにいろんな人生のちょっとしたことなんたけど実際にはとても辛い事が次々と起きており主人公美也子、頑張ったなぁ…と思います。
●気になる点
でも、私はもっともっと美也子をいじめて欲しかった、と思います。
卵を落とした所ももっと店長に嫌な顔をされて欲しかったです。
学校の冬の水道水って本当に凍る冷たさで、指が真っ赤になってしもやけができるんです。
ストーブを、使っていても窓の沢山ある学校、ましてや夜は本当に寒いのです。
息が白くなるシーンあって欲しかったです。
なんとなく、全体にあんまり寒くなさそうで、寒くない時期に撮影したんだろうなと思いました。
何故美也子が風邪をひいたのか伝わらない感じでした。
兄が髪を切る所も唐突にカット終了で、多分上映時間2時間以内にする為に切れる所は切っていったのでしょうが、もっと美容にこだわる兄の描写が欲しかったです。なんなら繊細さを描いて欲しかったです。
●良かった点
でも、兄がパートナーを連れてきたときの衝撃は凄く伝わりました。というか、何もネタバレ無しだった知らなかった私はとてもビックリしました。
母の登場も嫌悪感がしっかり伝わりました。
昔の写真を見た時の、その写真の中の家族の偽りのない幸せも感じました。
なんだかんだあったけど大団円、とは思いません。
一個一個身を切り刻まれるようなでも世の中のみんなが耐えているような出来事を耐えて何事もなかったかのように平気な顔をして、前に進んでいる、
そういう風に思います。
●方言
私は昔一度仕事で青森に行った時、支店ではみんな標準語だったのに、飲みに行った先のスナックのママと話す支店の社員さんたちが、何喋っているのかわからないくらいの方言でビックリしました。
もっと方言が聞きたかったです。仕事関係?のおじいさんと施設の介護のおねえさんや王林さんの方言はとても方言らしかったのですが、職人さんはもっともっと方言を話すだろうに…と感じてちょっと違和感がありました。
●LGBT
鈴木さん(宮田俊哉)の描写は、美也子のほのかな思いを寄せる人だけあって、とても丁寧に描かれていました。結婚式場のシーンは、険しい表情に「ん?鈴木さんの元カノが結婚するの?」と勘違いしたのですが、結婚というものの在り方を考えていたのでしょうか。
鈴木さんが兄のパートナーであるLGBTの人とわかると、あ〜確かにLGBTらしさがあって、しかも色っぽく描くのではなく誠実なキャラクターで、後からそう言えば宮田さんは今までもそういう役を演じていた人だったと、腑に落ちました。
鈴木さんが学校に誘った理由があまり伝わらなかったのですが、兄の思い出を聴くシーンがもっとあると好きな人の昔の話も聞きたいし、家族として認めてもらいたいというなにかもっと鈴木と美也子の二人の新しい関係性を見たかったです。ちょっと描き足りないというか、だから、描き切っていないから詰込み過ぎと言われるのかなと思います。
ただただ、鈴木(宮田俊哉)が柵を飛び越えるのがかっこよかったし、美也子が体育館に入るのを手を差し伸べたりするところも、本当に無駄に女性が心を惹かれるようなキャラクターでした。
●全体として
美也子は口数が少なく美也子の周囲の出来事を通して美也子の心情を辿らせて乗り越えていく物語はとても成功したと思います。
あと30分長くして物語の行間をもっと埋めて、方言にこだわり、美也子をもっと苦しめる描写を描けば星5です。予算の限られた中で職人として生きようとする若い女性をしっかり描いてくれている良作だと思います。
まんず漆っていうのは摩訶不思議で、やればやるほどやめられねんだ。
評価が高めだったので期待したけど、結局はよくあるストーリーだった。「地元に伝わる伝統工芸を愚直に守ってきた父と、それに反発する息子。継承しようと張り切るのはまだ未熟者。最後にはその努力が花開く成長記」というスジ。それでいい、なら構わない。けど、新鮮味はない。
たしかに、親父に素人呼ばわりされてはいても、門前の小僧、さすがに幼少の頃から漆職人の家に育ち手伝いもしてきただけはある。けどね。どうも都合いいよね。そこが映画だけどね。
家族
鶴岡監督の「過ぐる日のやまねこ」がとても好きで、なんとか観たいなと思ってました。地元でも遠くでは上映あったんですが(監督の地元)、別の所の上映に間に合いそうで、最終日の最終回(早朝)で鑑賞できました。
家族とは、いいですね。描き方がとても丁寧で、いろいろあっても理解して、会話して、ご飯を一緒に食べればわかり和えます。わたしも妻は本当に大事にしている(つもり?)わけですが、父や兄弟とも、もっともっとわかり合える時間を共有したいと思いました。
女性の自立ものとしてはちょっと弱いのかなとも考えましたが、堀田真由さんはほぼ初見ですがいいですね。漆を「綺麗だ」と見惚れるシーン、とても良かったです。
実は小林薫さんじゃなければ映画館には行かなかったかも?なんですが、大好きです。そこにいるだけで見惚れてしまう俳優はそんなにいません。
片岡礼子さんは流石に上手いです。最後、なんで帰る演出になったんですかね。あそこにいてもいいと思いましたし、いるべきじゃないかと。唯一疑問でした。
四季を通しての撮影が丁寧にされていて、素晴らし作品でした。鶴岡監督の次回作モ楽しみです。
津軽弁ネイティブが観た
いい映画なんだと思います。皆さんの評価も高いし。
ただ、僕は映画に集中できませんでした。登場人物の津軽弁が気持ち悪かったからです。(イントネーションというのか、抑揚というのか)津軽弁と標準語の間を行ったり来たりして、落ち着くことができず、イライラさえ感じました。話す内容が多ければ多いほど、行ったり来たりするんですね。
僕が生まれ育ったのは、映画の舞台となった弘前からかなり北。地図で言えば、青森県の左側にある津軽半島の突端の出身です。
『いとみち』でまとめたように、津軽弁と言っても、グラデーションがあるので、弘前だからどうこうとは言えません。弘前は歴史がある街なので、訛りが強いとは言えますけど、比較的大きな街なので、標準語しか話せない人も住んでるはずです。
まぁ、主人公の堀田真由さん、その父親である小林薫さんは撮影中に実際に津軽塗をしているので、その所作に集中しなきゃいけないはずなので、津軽弁という話し言葉は二の次だったのかもしれません。
そう割り引いたとしても、母親役の片岡礼子さんの津軽弁は本当に居心地が悪かった。もう少し何とかならないのか……。
救いは木野花さん。木野さんは青森市出身なので、(全くとは言わないが)津軽弁が上手。津軽弁で驚きを表現する「わいは」が本当に心地よかった。
そう考えると、尾道が舞台の『高野豆腐店の春』の広島弁に違和感があるという人もいるのかしら……。
津軽弁映画の成功作『いとみち』があっただけに、期待してしまった僕が悪いんです。『いとみち』監督の横浜聡子さんがやってくれたら…。『バカ塗りの娘』を観ながら、何度も思ってしまいました。
そうそう、僕の実家はもちろん、親戚の家でも箸と汁椀はほとんどが津軽塗。至極当たり前のことです。
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