パリタクシーのレビュー・感想・評価
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記念すべき500レビュー。
92歳のかわいいおばあちゃんをタクシーに乗せて、パリ市内のおばちゃんの思い出の地を巡りながら、壮絶な人生を振り返るという話。
一人息子をベトナムの戦争に巻き込まれて亡くし、
DVの夫に悩まされて、
その夫を懲らしめたら懲役刑になり、
いろいろあったでは語りつくせないマドレーヌ。
それを問題を抱えたタクシー運転手が大きな心で受け止め、その心でマドレーヌの半生を引き出していく。
口数が多くないドライバーがこれまたいい味を出している。
旅路の果てにながめる人生はどんな色をみせるだろうか。
人生の窮地にいてイライラが隠せない中年タクシードライバー・シャルルがのせた客・老婦人マドレーヌ。
はじめはなんだか面倒くさそうな様子でマドレーヌの話かけに応じるシャルルなのだが、激動の時代をたくましく歩んだ彼女が語る生き様は説得力をもってシャルルの心を揺すりだす。
人生の緩急、複雑な重なりだからこその味わいを感じたシャルルはついには祖母をみるようなまなざしに。
マドレーヌも後部座席から助手席へ移り孫に乗せてもらっているような嬉しい顔をみせる。
そのころには自分も後ろの席に乗車していた錯覚が不思議である。
それはウィットに富んだ経験豊かなマドレーヌが、シャルルの不機嫌や短気で否定的な考え方を察知し、さりげなく明るくやわらげるのを目撃し、だんだん変わっていく空気を肌で感じとりながらいるせいだろう。
さて、二人の様子に安心しはじめると横を流れるパリの街並みはそれまでよりぐっと魅力的だ。
細い枝の先でおどるような緑も、流れる川のフォルムも、洗練された塔がなじむ石の道も、行き交う人々も、そばにある不安をとりのぞいた状態で眺めると、そこに受け入れられて立つ自分のありがたい命に触れるような感覚が際立つ。
やはり気分は捉え方を変え、捉え方は気分を変えるのだとつくづく思う。
そんなふうにして観客達はこの出会いが自分を含めて必要なものだったことを知っていく。
いいときもある。
わるいときもある。
でも
あなたはいつもまっすぐに顔をあげて進んでいけばいい。
タクシーに乗る前、わが家をじっとみつめたマドレーヌ。
今思えば、そんなふうに生きてきたことへの信念を住処を去るあのとき固く結んだのかもしれない。
そんなマドレーヌに会えたシャルルはラッキーだ。
他でもない自分自身がつくるたった一度きりの色。
マドレーヌのように塗り重ねて、あんなふうに豊かな色をおおらかに纏い去っていけたならそれは本望だろう。
ドライビング・マダム・マドレーヌ
パリでタクシー運転手をしているシャルル。
一日12時間働きっ放し、休みは週一。おまけに免停寸前。家族にもろくに会えない。人生どん詰まり、世の中に対してイライライライライライラ…。
とある客を乗せる事に。パリの外れまでの長距離だが、その分報酬はいい。引き受ける。
マドレーヌという老女。長年住んでいた家を出て、介護施設へ。彼女をそこまで送る。
それはいいのだが…、この老女、お喋り好き。
私、何歳に見える? さあね、80歳くらい? 92歳なの。あっそう。
まだ10代だった頃の甘酸っぱいファーストキスの思い出話を語る。ババァの初キスの話なんか聞きたかねぇよ!
すんなり目的地には向かわず、あそこに寄って、ここに寄って。あんたのお抱え運転手じゃねぇよ!
そんな感じ。面倒、うんざり。最初の内は。
しかし次第に彼女の話に耳を傾けるようになる。シャルルの心境にも変化が。不思議と交流を深めていく。
お喋り好きの老女と無愛想なタクシー運転手の珍道中。もっとユーモアあってお洒落なロードムービーと思っていた。
マドレーヌの語る過去に聞く耳立てずにいられなくなる…。
16歳の時にアメリカの軍人と出会い、恋に落ちる。ロマンチックな恋は束の間、ほどなくして別れ男は別の女性と結婚。マドレーヌは彼の子を身籠っていた。
出産し、マチューと名付け、時に母の協力を乞いながら、新たなスタートを。そんな時、レイという男と出会う。
結婚するも、レイはマチューに愛情を示さず。それどころか暴力を振るう。マドレーヌにも暴力を振るい、時に強/姦さながらに…。
このままでは自分も息子も…。身を守る為マドレーヌは、レイの股間をバーナーで焼く!
レイは命は助かったが、裁判に。DV夫からの正当防衛…世の女性たちから同情の声もあったが、その当時1950年代は法律は女性にあまりにも不利だった。
実刑。禁錮25年…。
模範囚であったマドレーヌは半分ほどに減刑される。
保釈され、息子と再会。が、息子とは大きな溝が。大学生になっていたマチューは学校を辞め、戦場カメラマンとしてベトナムへ。
もうすぐ察しは付いた。男に捨てられ、別の男からは暴力を振るわれ、罪に問われ…。そこに、追い討ちをかけるかのように息子の死…。
マドレーヌの壮絶な人生に言葉を失う。
チャーミングで朗らかな人柄からは想像出来ない。
怒らないで。笑って。落ち着いて。
怒ると一つ年を取り、笑うと一つ若くなる。
マドレーヌはよくそう言う。
それに対しシャルルは、世の中ムカつく事やクソみたいな事ばかり。
マドレーヌとて世の中に怒りを覚えた事はある。どうしようもないほどの…。
それは本当だ。マドレーヌが経験してきた怒りや世の不条理は、シャルルの比ではない。
そんな怒り、悲しみ、後悔の数々を乗り越え、笑顔で生きる事を選んだ。
悲しい事、辛い事いっぱいあったけど、それと同じくらい美しい事、幸せな事もいっぱいあった。
全てを人生の思い出に。
酸いも甘いも経験してきた人生の大先輩にこんな事言われちゃあ…。
マドレーヌと接する内に、シャルルの心もほぐれていく。
マドレーヌの話が鬱陶しそうだったのに、気付けば聞く耳立てるように。
彼女の境遇に同情したり、胸痛めたり、時に憤り感じたり、一緒になって笑い合ったり。
無愛想から笑顔を見せるようになる。丸くなっていく。
心には余裕も必要。
ちょいちょいツッコミ所やオイオイ…な点も。
マドレーヌ、かなりマイペースで身勝手。
正当防衛は同情するが、家族への影響や迷惑は考えなかったのか…?
トイレへ。レストランのトイレを拝借。その際店の真ん前にタクシーを停めた為、渋滞。クラクション鳴らす後続車を挑発。
ついつい赤信号無視。窮地のシャルルを老人の知恵で切り抜ける。茶目っ気たっぷりではあるが、嘘も方便…?
まあそれも許しちゃう気になってくる。
シャルル役のダニー・ブーンの好演。
何よりマドレーヌ役のリーヌ・ルノー。本業はフランスのレジェンド歌手だが、彼女の存在感、ナチュラルさ、愛らしさに魅せられる。
到着の予定時間も大幅に過ぎ。
最後にディナーもして、腕を組んで夜の街を歩いて、ようやく施設へ。
お金の支払いを忘れた。シャルルも貰うのを忘れた。
また必ず会いに来る。その時に。
そう約束した。
早速翌週、会いに。妻も連れて。
そんなまさか…。
マドレーヌはその日の朝、急死した。
心臓に重い病を抱え、もう限界だったという…。
それを感じさせないほど魅せてくれた笑顔と人柄…。
彼女を思うだけで目頭が熱くなってくる。
マドレーヌから手紙。それと、思いがけないプレゼント。
どうして、こんな俺に…?
たった一度、ほんの数時間乗せただけ。
それなのに、ここまで人によくする事が出来るものか…?
それなのに、こんなにも死を悲しむ事が出来るのか…?
他人も同然なのに。
それが、一期一会。
それが、美しき旅路。
それが、人。
シャルルが振り返った時、後部座席にはマドレーヌが居るだろう。微笑みを浮かべて。
これから先の人生という道を。
見終わって何の躊躇もなく思える。
いい映画だった。
さながらタクシーでパリ探訪。街並みの美しさと言ったら…!
ミニシアター系作品では今年のベスト候補。
フランス映画の良作。
見ながら、日本でリメイクするのも良さそうと思った。
その時は、誰がいいかなぁ…?
静かな余韻に浸る愛おしい映画
なのですが、しかし・・・
マダムの思いも寄らない身の上話に
跳び上がるほどびっくりでした。
パリの街をタクシーで一日観光して老婦人とお喋りして・・
人懐っこい笑顔のタクシードライバーと老婦人のハートウォーミングな
洒落た会話と美しいパリの風景を楽しむ。
そんな予想は、柔道の背負い投げ、みたいに
投げ飛ばされて一本負け・・・そんな映画でした。
上品な老婦人(リーヌ・ルノー)をお客として乗せたドライバーの
シャルル(ダニー・ブーン)。
マダムの名前はマドレーヌ、92歳です。
今日、住み慣れたパリ郊外の家から、パリの反対側にある
老人ホームに入居するために、シャルルのタクシーを呼んだのでした。
マドレーヌはパリを横断して思い出の地や変わってしまった
街並みを走らせてと頼みます。
あちこち寄り道をする度に、身の上話が驚くように展開する。
私が想像していたようなストーリーとは、かけ離れていました。
老婦人はある意味で特異な経験をした女性でした。
92歳の老婦人の初恋・・・、
パリを解放に来たアメリカ兵と目眩く恋をして息子を授かる。
アメリカ兵は“帰ってくる“
その約束は守られることなく、
私生児の母となったマドレーヌ・テレーズ。
次に付き合った男はDV夫だった。
事件を起こしたのはマドレーヌ。
1950代半ばの事です。
女性は銀行口座を開く自由もなかった時代。
離婚を申し出ることも成らず、DVに耐えるしかない時代だったと話す。
この映画を彩る歌声は黒人歌手・ダイナ・ウィンストンや
黒人と白人の混血のエタ・ジェイムズのソウルフルなR&B。
(シャンソンでないのです)
黒人の歌手は力強い歌声で人生の悲哀をパワフルに歌う。
マドレーヌの起こした事件は《虐げられていた女性の事件》で、
時代を映す鏡だったのでしょうか、
映画は声高く言わないけれど、女性を応援している。
女性解放のアイコンだったマドレーヌ。
(シャルルの妻がググるとデモ行進をするマドレーヌの写真が)
(かなりの有名人だったのだ)
それにしても息子のマチューの人生は辛く過酷なものだった思う。
受難のような短い生涯。
父親の祖国、父親も戦った《戦争》をカメラに刻みたかった
のかも知れない。
ここでも戦争が母と息子を引き裂く。
シャルルもまた長時間労働に休み少なさと収入の少なさに
押し潰されている。
パリの放射状の車線にイラついた乱暴運転の車。
ストレスで押し潰されそうなシャルル。
借金に免停スレスレの免許証・・・もうギリギリだ。
妻のカリーヌの《美しい瞳》を愛した素朴な男の
人生は甘くて苦い。
パリの昼と夜。
エッフェル塔に始まり夜の凱旋門で終わる長い一日。
ほんの一日の邂逅、巡り合い、偶然の出会いが、
人生に潤いの水を注ぐ。
シャルルとマドレーヌ。
奇跡の巡り会いに乾杯‼️
想像通りの作品
老婆の過酷な人生については想定外でしたが、それ以外の部分についてはほぼ想像通りの内容でした。恐らくこの作品をご覧になった多くの方々もそうだろうと思います。その、あまりにも想像通りなところが、期待通りとも言えるし、物足りないとも言えて、観る側の期待値によって評価が分かれる作品だと思います。私はそれほど期待はしていなかった分、意外と良かったので星4.0にしましたが、期待していたら星3.5、想像を超える良さがあれば星4.5だったと思います。
あと、内容について少し引っ掛かることがあり、夫を溶接用のバーナーで焼いてしまう部分については、過激過ぎて作品全体の雰囲気に合っていない気がしました。
パリで生きるとは
男は女性を敵に回してはいけない
時代が違えど立場や関係性が違えど
経験が付いてより聡明になれば人生など容易い
誰もそんな地獄のような経験などしたくもない
してきた者どうしなら共感し労う
相手の話が己のことのように
二人がそれぞれに知るパリは歴史で繋がっている
パリを知る者同士がパリの為に生きる
パリの為なら死ねるから
パリに愛される
最高の思い出。
老人ホーム行きを決めた92歳のマダム(マドレーヌ)と老人ホームへ送る46歳中年タクシードライバー(シャルル)の話。
金無し、免停寸前、無愛想のタクシードライバーシャルル、会社からの連絡で以来先へ向かうと待ってたのは92歳のマダム、マドレーヌ、目的地へ向かうまでの二人の寄り道ストーリー。
目的地は老人ホーム、老人ホームへ向かうも思い出の地を廻りたいと言うマドレーヌ、目的地へ早く送って仕事を終わらせたいと内心思うシャルル。
話したがるマドレーヌと話したがらないシャルルの距離が時間経つにつれ縮まってくのが良かった。正直マドレーヌの若き頃の思い出(暴力描写)は観てて嫌だったけど、目的地に着く前の夜のディナー、最初はあった壁も無くなり楽しそうに会話する二人の姿が観てて幸せな気持ちになりました。
目的地へ着くもタクシー代は未払い、ディナー代もシャルル持ち、完全仕事としては赤じゃん!なんて思ったけど金では得られない何かそれ以上の物をシャルル自身得たのかなと思ったし、彼の真の優しさみたいのが見れた気がした。
ラストのマダムの死は予想外で悲しかったけど、サプライズの手紙は泣けた。
フランス社会の戦前からの変様 2つの人生上質なドラマ(今、生活危機タクシー乗務員➕92歳女性の生涯の終活)・・その先に・
パリで生活が危機に格っていて常にイライラ毒づいているタクシー乗務員シャルルと、人生の終活をしようとする92歳の女性マドレーヌがひとり住まいをやめて、老人ホームへ向かうヒューマン・タクシー・ロードムービー。
内容は、タクシー車窓から見える観光では味わえない生活道路や下町街を共に乗車して風景を楽しみながらドラマを楽しめる、ほのぼのの進行(映画予告編から)勝手に思っていたら、
車中マドレーヌ女性の口から驚く戦前からの(家族や個人の権利、男女の地位・・法律・裁判)波乱に満ちた人生を語られていく。
聞くはめになったシャルルは、最初こそそっけなく対応していたものが、だんだんに自分自身の事にも思いが巡り、心通うようになっていく。
その過程が、秀悦に語られる言葉や仕草、その時代の音楽を通して進行。
やがて、タクシー運転手シャルルは、マドレーヌとの出会いにより自分の(家族)の新たに向き直る事になっていく。
マドレーヌのサプライズと共に、シャルルも新たな未来へ向けて・・・。
★シネスコ・サイズ
★Digital5.1ch
★重低音 1
★音圧 1
★分離度 3
★サイド(左右、後、活躍度)1
★サラウンド 2
ほぼ全編スクリーン側のみ使用。
音楽、その他で、残響成分サラウンド使用。
100倍返しにしたったわ
へ?何で満席?しかも女子だらけ?え?どうして?
いやいやいや。途中で分かりましたよ。女子だらけだった理由が。フェミニズムですね。これはれっきとした、左寄りになってない純粋なフェミニズムの物語、だったりする。女子で満席になるのも理解できる内容でした。
いやいやいや。
しっかし、怖いっす。と言うか、痛そうだ。
女子供に手を出す野郎は、それくらいの目にあっても当たり前ですか?
それは現在においても、そうはならんとは思うけど。
タマ一個を焼き切るくらいなら、賛成ですw
縁は異なもの味なもの
「縁は異なもの味なもの」とはよく言ったものです。
いつも仏頂面のタクシー運転手シャルルと、
終活のため生家を後にするマドレーヌ92歳。
世代はもちろん、生まれも育ちも違う2人が
徐々に心を引き寄せられ互いに「大切な人」とまでさせる
数時間のフランスはパリの旅🇫🇷🗼🚗³₃
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マドレーヌが語る、女性が生きづらかった時代
甘く切なくそして苦しく痛々しい記憶。
そんな記憶をなぞるかのように
パリの街並みを走らせるシャルル。
すぐ目的地に向かわないその寄り道に、
最初はイラつきを見せますが、
次第に、彼女の「人となり」に惹かれていく様が、
彼の表情と行動やひとつひとつの言葉の変化で
読みとることができます。
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ユーモラスでチャーミングな2人
人との繋がりが希薄になりつつあるこんな時代だからこそ
世代を越えて「人として」惹かれ合う2人に
ラスト15分、涙なくては観られません。
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追記)
マドレーヌが最も幸せな記憶は米兵マットとの短い恋だからか
舞台はパリであるのに、音楽はアメリカの曲ばかり流れる。
まとわりつくようなフランス語のラブソングとかも聴きたかった。
この映画をチョイスした自分。エライ!
あんまりよく分からずパリの名所観光巡りをするのかな?ぐらいの軽い気持ちで観たのに。
このおばあちゃんの半生凄過ぎる。その時代に女性が生きるのは、すごく大変だったんだなと思う反面、やりすぎではと思う自分もある。でもそこまでしないと世間は変えられない。でも…ううーん。
中身が何か知らないとはいえ、手紙をあんなに簡単に渡しちゃうんだ。映画として余分な説明は要らないのだろうけど。
でも本当にいい映画に出会えて良かった。
ほぼ実年齢のおばあちゃん 、エイズ活動などもしている凄い女優さんだったんですね。
おばあちゃんとばかり言っていては失礼ですね。リーヌ・ルノーさんです。
アカデミー賞主演賞をあげたい。
予告編から受ける印象と随分違う。 話が上手くまとまりすぎている。 ...
予告編から受ける印象と随分違う。
話が上手くまとまりすぎている。
最後ご都合主義ではあるが、劇伴も相まって後味よく劇場を後にできる。
余韻たなびく、いい映画。
回想がザリガニの鳴くところぽい。
過ぎ去り日々を巡る
住んでいた家を出て施設に入ることに
なったマドレーヌ92歳
そんな中タクシーのなかで自分の
若い頃の恋愛を話はじめる
これまでの波乱万丈の人生など…
少しずつ。
タクシー運転手のシャルル
シャルルも借金、今度違反したら
商売できなくなる一歩手前で崖っぷち
でイライラが隠せない
マドレーヌの人生を聞いているうちに
自分の妻や娘のことを思いやる
…いつの間にか
ふたりは会話を楽しむ様に
パリの街並みと夜景の素晴らしいさ
観光した様な気分です
マドレーヌは
誰かと話したかった
…自分の話を聞いて欲しかったのかも
二人にとって最高の一日になった
乗り越えた人の言葉
これぞロードムービーなのだろうか?
舞台はパリのタクシーの中だし、内容は人生を生きてきた女性の話だ。
日々の生活に困窮する運転手と、見るからに上品な92歳の女性。彼は彼女との旅を通して解放されていくようだった。
彼の境遇を見ながらどこの国もドン詰まりで、金に縛られながら生きてんだなぁなんて思う。冒頭のBGMもギスギスした感じだし。
彼は終日イライラしているようにも見えてた。
そこにかかってくる配車のインフォ。
事態は何も好転しないのだけど、BGMがポップな感じに変わり、空の絵になる。
…案外、俺の気分も良くなった感じがした。
乗せた客は92歳の女性。
自宅を離れ老人ホームに入るらしい。よく喋る。
自由を手放す状況は、2度目の収監にも通ずるのだろうか?
彼女は自身の半生を語りだす。
ファーストキスから始まるのだが…今の風貌からは想像もつかないような人生が語られる。
始まりのキスからして、兵隊に遊ばれたんだろうって思ってしまうのだが、生きて行く中で美化もされているのだろう。
16歳で妊娠、シングルマザーになり、子供は私生児として誕生する。中絶が禁止されてる時代でもあったのだろう。結婚した夫がDVで、裁判起こしたら男尊女卑の社会だから25年の禁固形。
13年経って出てきた息子は、犯罪者の息子として辛い青春のようだし、再会して2週間後に向かったベトナムで、戦火に巻き込まれて死亡。
…なぜ、今、貴女はそんなに楽しそうに笑っていられるの?そんな世界を名残惜しそうに見つめるの?
思い出ってのは、愛した人との時間っていうのは、そんなにも人生を強く豊かにしてくれるのだろうか。
運転手も、楽な人生ではないのだけれど、そんな人生を経て尚、笑顔を絶やさぬ老婆に勇気づけられていくようだ。
「たいした事ないわよ。大丈夫。」
そんな風にも思えたのだろうか?冒頭険しかった表情は、次第に柔らかくなっていく。
目的地につき、施設に入っていく老婆はとてもとても寂しそうだった。思えば、タクシーの運転手とはいえ、ここまで彼女の話に耳を傾けた人はいなかったのではなかろうか?どこか、自分の生立ちを残していきたかったんだろうかと、ふと思う。
とても地味な映画であったけれど、人生を歩き続ける上で色んな教訓が詰まった作品だったと思う。
92歳の言葉は分厚かった。
運転手のように自分も励まされていたように感じる。
さすがはフランス映画。赴きがあり深い。
いい映画
ピンチのタクシーの運転手が、おばあさんを乗せました。
今からホームにいく92歳の方 ちょい寄り道してよから、2人の人生の旅が。波乱の人生なんや。びっくり‼️でも最後は、良かった。フランス映画にしては
ハッピーエンドだね。
une belle course
施設の自動ドアを挟んで別れを惜しむ2人が、昨年、またいつか会えると思っていた父ともう亡くなった自分の経験とリンクし涙が溢れて止まらなかった。
人生最後の日に自分の父は何を想っていたのだろう。
私のことは過ったのだろうか。
自分が人生最後の日には何を考えるのだろう。
今いる自分の大切な人たちを大事にしよう。
パリ版道との遭遇
今年11本目はMOVIX三好で鑑賞
主人公含めてみんな運転マナーがよろしく無い感じだが、見慣れた名古屋走りと変わらない為、怖いと思うのは右側通行のために起こる感覚の違いのみ。
ヒロインは92歳のおばあちゃんだが若い頃のシーンが多いので艶もある映画、特に道がフォーカスされている訳では無いがパリの街並みを昼夜眺めながらあちこちに行くので、ちょっとした旅行気分が楽しめ、パリ版道との遭遇の様だと思いながら観てました。
観終わった時点で思ったのは、おばあちゃん男運悪過ぎだけど最後に主人公に会えたのが救いだったか。主人公からすれば蜘蛛の糸の様なオチとも思えた。
遅刻厳禁(自分にね)
引っ越して遠くなった有楽町、移動時間を読み違えて多分数分遅れで入場。エレベーターのタイミングも悪くイライラして入場したら買ってた席に荷物が置かれていて、仕方なく前方横の空いてたところに着席。タイトルが出る前だったからまだいいかな~。
全体に流れるムードは評判通りでいいお話だったが、あの事件はちょっと…。たしかに酷い旦那だとは思うが、連れ子第一の奥さんに苛立つ気持ちもちょっとは分かり、あんなに本格的に焼こうとしては流石にアカンという気持ちが強く、も少しマシな手段にしてほしかった。
実年齢の役柄を演じたリーヌ・ルノーに脱帽
ダニー・ブーン演じるシャルルは、低賃金・長時間労働で家族と過ごす時間も取れないタクシードライバー。この辺りの事情は、フランスも日本とも変わらないようで、彼はかなりやさぐれていている。そんなシャルルが乗せたのは、リーヌ・ルノー演じる御年92歳のマドレーヌ。彼女は身体の自由が利かなくなってきたことから、自宅の一軒家を引き払ってパリの反対側に位置する老人ホームに入るためにタクシーに乗る。そんなシャルルとマドレーヌのお話でした。
シーンの多くはタクシー車内での2人の会話と、マドレーヌの回想シーンで構成されていました。彼女の驚くべき体験は、子供時代から順を追って語られていき、所縁のある場所にタクシーが立ち寄ることで、過去と現代が立体的に繋がるように仕上がっていたのは見事でした。
戦争でナチに父を殺されたこと、解放軍たるアメリカ軍の軍人とひと時の恋に落ちたこと、アメリカ軍人との間に出来た子供を連れてDV男と結婚してしまったこと、その男のシンボルをバーナーで焼いたこと、そしてその罪で禁固25年に処されたこと(模範囚だったことで13年で釈放)など、まさに激動の人生を語るマドレーヌの話を聞き、やさぐれていたシャルルも我々観客も彼女に魅せられていく。そしてドライブの最後は高級レストランでのディナー。ここまで来ると2人はもはや恋人同士以上の関係になっているようでした。そしてラストは突然のマドレーヌの死とともに、シャルルはプレゼントを受け取るというもの。この辺りはお話の途中から薄々予想出来る展開でしたが、それですら久々に号泣してしまいました。それくらい、わずか1日のドライブで出来た2人の絆に感情移入できる作品でした。
ストーリーの本筋と離れて強調されていたことは、マドレーヌが夫からDVを受けていた1950年代は、女性の権利が大幅に制限されていたということ。一例として挙げられていたのは、銀行預金を作るのですら、夫の許可が必要だったというのだから、いくら何でもという感じでした。そういえば昨年上映された同じフランス映画「あのこと」でも、1960年代になってすら人工妊娠中絶が認められていなかったことが描かれていました。戦後を回想する現代フランス映画において、かつて女性の権利が大幅に制限されていたことがいろいろな角度から描かれてるところを観ると、実は現代においてもそうした問題が残っているんじゃないかと想像を巡らせたところでした。(G7参加国で唯一夫婦別姓を認めていない日本も他人事ではないでしょうが。。。)
あと驚いたのが、マドレーヌを演じたリーヌ・ルノーの年齢。劇中92歳という設定でしたが、調べてみると1928年生まれなので、当年取って94歳。つまり劇中の年齢は実年齢だったという訳です。いや~、あの貫禄ある演技は、本物の年輪から来るものだったのかと、舌を巻きました。
そんな訳で、涙を誘うお決まりのストーリーというベタな展開ではありましたが、それをフランスらしい軽妙洒脱なユーモアを交え、そして何よりリーヌ・ルノーの愛すべき演技にやられてしまったので、評価は文句なしの★5とします!
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