劇場公開日 2024年4月5日

「人生を経るにつれ熟成され味わい深くなっていくであろう名作」パスト ライブス 再会 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5人生を経るにつれ熟成され味わい深くなっていくであろう名作

2024年4月14日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

ふっと溜息がこぼれるほど味わい深い作品だ。人生は刻々と移り変わる。でも初恋どうしの二人はなかなか再会できないーーー。ソン監督の半生をベースにした本作は、韓国生まれで現在はNYで暮らす主人公のアイデンティティを表情豊かに映し出す。おそらく彼女は昔と今の自分は違うと強く意識しながら生きてきたのだろう。確かに文化や環境はその性格を逞しく変えた。だが一方で、彼女にとって初恋相手ヘソンは、封をしていた記憶や感情をゆっくりと思い起こさせる存在でもある。二人が辿ってきた人生。そして今この地で巡り合う縁。心象を彩るNYの街並みが壮麗なカメラワークによって映し出され、感情と思考が散りばめられた脚本は一言一言を噛みしめたくなるくらい洗練されている。男女の台詞にこんなに魅せられたのは『ビフォア・サンライズ』以来かも。極め付けは夫役のジョン・マガロだ。柔らかな口調と佇まいにこちらも思わず頬が緩みっぱなしになった。

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牛津厚信