劇場公開日 2023年10月6日

「それではひとつ聞きたいのですが、人をわかるってどうゆうことですか?」アンダーカレント 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0それではひとつ聞きたいのですが、人をわかるってどうゆうことですか?

2023年10月13日
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鑑賞方法:映画館

今泉力哉監督の描くミステリー。まあそれで間違いはないのだが、謎解きというよりも人間の心の奥底にしまい込んだ何か(過去、嘘、本当の自分、、)を問いかける物語。映画の中のセリフは、誰の発言とも限らず、今泉監督によって柔らかく伝わってくる感覚がある。それはときに、物語の中のセリフなのに、あたかも自分への言葉のように。
「日本では年間85,000人の人が失踪しているんです。」と探偵山崎は言う。調べると確かに、警察庁発表『令和四年における行方不明者の状況』において、「令和4年は、統計の残る昭和31年以降で最少を記録した令和2年から2 年連続で増加し、8万4,910人(前年比5,692人増加)となった。」とある。前年比増加率が6%を超えているってことにも驚きを隠せないが、まあそうだろうなと頷いてしまう自分もいる。自分でも時たま、このまま何もかも捨て去ってしまえばどれほど気楽かと思うこともあるからだ。でも、実際はその選択はないのだが、何かしらのキッカケや背中押しがあれば、あり得なくもない。

映画鑑賞の後に、原作漫画を読んでみた。当然、映画のセリフと同じセリフばかりなのだが、結末を知ったあとに読む言葉の数々は、すべて結末を示唆したフラグにしか思えなかった。それはネタバレを知ってしまったうえでの興ざめとかの類ではなく、ほらここで君(かなえ)は無意識のうちに真相に気づいているじゃないか、というじれったさ。当然それも、鈍感さに対する苛立ちというよりは、手を差し伸べたくなるような歯がゆさに似てる。

山崎が言う。
「結局ね、わからないことをあれこれ考えてもしょうがないんですよ。わからないことはわからないし、わかることはそのうちわかるでしょう。」
投げやりのような、関心のないような、そんな他愛のないようなセリフでもあるが、これがまたとても愛情深く聞こえてくるのだから不思議だ。
そして続けて言うのだ。
「奥さん、あなたはどうです?あなた自身のことは彼にわかってもらえてたんですか?」
この言葉を目にした瞬間、強く胸を叩かれた。
ふと、是枝監督のテレビドラマ「ゴーイングマイホーム」の中で宮﨑あおいが、失踪した旦那加瀬亮を突き止めた時の場面を思い出した。加瀬亮の理由は、この映画の中の瑛太とは違っていたが、一度は信じた男が自分から気持ちも含めて離れて行ってしまった女の表情という点において、真木よう子と宮崎あおいの顔は、同じだった。

サブじいの言葉が頭をよぎる。
「どう見えるかということは、何をするかということとあまり関係ないことだからな」
世間の人付き合いの真理だ。そして僕が人付き合いが下手で、友達も少ないのは、これに気づいていてるから人に頼ることをしたくないからなんだろうなって、思えた。

栗太郎