劇場公開日 2023年8月11日

  • 予告編を見る

「珍妙なストーリーになるのは行政側の意向を優先したから?」さよならエリュマントス yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5珍妙なストーリーになるのは行政側の意向を優先したから?

2023年9月20日
PCから投稿

今年320本目(合計970本目/今月(2023年9月度)30本目)。
(参考)前期214本目(合計865本目/今月(2023年6月度まで))

 ストーリーとしてはかなり「変わった」もので、一見して何がいいたいか理解が難しいところではあります。
ただ、山梨県という語は具体的にでるし、山梨県内の甲府市、大月市、笛吹市という3市(ほかにもあったかな?)も明示的に出るし、その中での高齢者の多いと思われる地区における娯楽の在り方という観点でみたとき、明示的に山梨県や県内の市町村がスポンサーしていることはうかがえないものの、かなりきわどい表現等があるのに協力などしていることからすると、いわゆる「ご当地枠」であり「興味がでたら山梨県に来てくださいね」という趣旨に、一種の「半官半民」的な部分も感じられないわけでもありません(ただ、地名が出るのみで、山梨県をはじめとした名産品などとコラボした様子は見当たらず)。

 結局チアリーダーは何がどうなってどうなったの…というのも明確に読み取れないのは、映画の中であまり関係のないサブ筋(不動産を買い取ってうんぬんとか何とか)を入れたこともあり、これらが相まって「何がなんだかよくわからない」状態になってしまっています。

 ただ、趣旨的にはおそらく「地域行政における地方活性の在り方」といった論点を取り上げたかったのだろうという気はしますし、ミニシアター中心で初監督かそれに準じる方の作品としては多くは引けないだろうというところです。

 採点は以下の通りで、4.3を4.5まで切り上げています。

 -------------------------------------------------------
 (減点0.3/チアリーダーグループを抜けるとか抜けないとかという話)

 法律上は民法上の「組合」か「権利能力なき社団」のいずれかと思いますが、前者の場合、組合からは離脱の自由があります(678条、かつ、この法規は強行規定(最裁平成11.2.23))ので、やや何を言いたいのか不明な点があります。

 (減点0.2/医薬品を渡す行為について)

 睡眠薬などでない限り、「業として」渡す行為でなければ(=反復継続することなく、一度限りなどの行為なら)、薬機法には抵触しませんが(24条/睡眠薬等は「麻薬及び向精神薬取締法」で無条件でアウト)、実際に「業として行う」のでない限り自由なため(睡眠薬など除く)、災害時等には薬の「譲り合い」も実際にありますが、これはトラブルを引き起こすことになりますので(法で認められていることと、飲み合わせの問題ほかは異なる。だから、お薬手帳というものはある)、ここは一言入れておいてほしかったです(なお、「あの薬」は法律上、「麻薬及び向精神薬取締法」にあたるかどうかは微妙です)。

 (減点0.2/謎の「医薬品」から起きたトラブルの描写について)

 要は「こんな薬効かなかっただろう」からストーリーが動きますが、そこは、詐欺(96条)で攻めるのは難しいです(詐欺には、「相手に詐術をはたらきかける意思を持っている」と「それにより相手が錯誤に陥った」という二段の故意が必要)。そうではなく、錯誤(95)の中の「共通錯誤」で取り消すほうが早いです(実務上のお話)。

yukispica