劇場公開日 2023年3月24日

「 本作はもあまりワニが歌う事にとららわれず、「人生において大切なものは何か」を気づかせてくれるヒューマンドラマとしてみるべきなのでしょうね。」シング・フォー・ミー、ライル 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0 本作はもあまりワニが歌う事にとららわれず、「人生において大切なものは何か」を気づかせてくれるヒューマンドラマとしてみるべきなのでしょうね。

2023年4月12日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

舞台はニューヨーク。
 ショーマンのヘクターは古びたペットショップで、魅惑の歌声を耳にします。歌っていたのはなんと、一匹のワニでした。 ヘクターはそのワニのライルを相棒にしようとしますが、ライルのステージ恐怖症が判明し、ショーは大失敗。
 ヘクターは去り、取り残されたライルはたった一匹、 アパートの屋根裏に隠れ住むのでした。ヘクターが残していった音楽プレーヤーを握りしめて…。

 長い月日が経ったある日、プリム一家がライルの潜む家に越してきます。一家のその少年ジョシュは、新しい環境に適応するのに苦労していました。この家に住むライルと同じく心に深い孤独を抱えていたのです。そんなある日、彼が新しい家の屋根裏部屋に住んでいる歌うライルを発見します。やがてふたりは、歌を通して心通じ合わせて親友になります。しかし、ライルの存在が邪悪な隣人、ミスター・グランプスに知られると、動物管理局に通報されてライルは動物園に押し込められます。
 ライルの救出に向けて、ジョシュはヘクターを見つけ出し、協力を求めるのでした。

 本作はそもそも歌うワニがいるなんてこと自体、フィクションとしてのリアリティは相当に緩いです。けれども登場人物たちも、作品世界の住人たちもワニが歌うことに何の驚きもしないのです。
 最初の緊張して歌えなかったステージでも、衣装を着て二本足で立っているワニだけでも、じゅうぶんすぎる見物でしょう。それがなぜか他の人間のパフォーマーと同列に見られていること自体、とても奇異なことです。
 ただ映画作品では、『パディントン』のように擬人化された動物キャラクターが活躍することで、失意の主人公が人間らしさや活力を取り戻すしていくことが、一つの定番となっているものと大らかな気持で鑑賞すべきなのでしょう。
 曖昧になりがちな「人間らしさ」ですが、擬人化された動物キャラクターが頑張ることで、自然に共感できるものとして描きやすいと思います。

 ただネタバレは避けますが、本作ではライルはミュージカル映画だからってスターにならなくてもいいという割り切り方に疑問を感じています。歌えるワニという最高のアイデンティティを持っていても、本人がやりたくないなら違う幸せを与えてあげるべきだというのも、最近の人権の尊重を受けた考え方ではあります。
 でもねぇ、もし本当に歌えるワニがいたら、世間はほっとかないでしょう。たちまちライルの元へマスコミが押しかけてて、時の人いや時のワニとなることは必至です。あまりそこを突っ込みすぎると別な作品になってしまうので、これくらいにしておきます。
 本作はもあまりワニが歌う事にとららわれず、「人生において大切なものは何か」を気づかせてくれるヒューマンドラマとしてみるべきなのでしょうね。

 とにかく表情豊かなライルのかわいさ・魅力がハンパないです。家族で見に行けば、きっとお子さんには大受けする作品でしょう。『ラ・ラ・ランド』や『グレーテストショーマン』の音楽スタッフが手がけているだけに、楽曲も馴染みやすく感動できるメロディーでした。
 歌ってる大泉洋は、特訓を受けてハリウッド本社のテストを受かっただけに、まずまずの歌いっぷりでした。

 皆さんも、琵琶湖の岸辺に出かけたら、『ライル』の歌を歌いましょう。(琵琶湖には和邇という駅と地名があります。)

流山の小地蔵