劇場公開日 2023年12月1日

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「スクリーン越しにキルギスの大地に触れられる喜び」父は憶えている 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5スクリーン越しにキルギスの大地に触れられる喜び

2023年11月28日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

キルギスの小さな村を舞台に、ロシアへ出稼ぎに行ったきり消息不明だった父の帰郷を描いた物語。23年ぶりに再会した父は記憶や言葉をすっかり失っていた。そしてふと気づけば家を抜け出し、ただ黙々とゴミを拾い続ける日々・・・。我々の頭にまず湧き上がるのは、父に一体何があったのかという疑問だが、しかし本作はそんな過去には目もくれず、「今この瞬間」だけを見つめる。すなわち、父の行動に振り回されつつも、なんとか前に進もうとする家族の姿を穏やかに、丹念に、浮き彫りにしていくのだ。背景にはキルギスの雄大な景色と、便利さからは程遠い村の環境設備、厳しさと共にある経済状況がゆったりと広がる。そんな中でも孫の少女はいつも好奇心旺盛な笑みを絶やさず、窓辺には可憐な花が咲いている。スクリーンを介してキルギスの文化や人々の心に触れられるこの喜び。彼ら家族が何を抱きしめ未来を生きようとしているのか、しみじみと伝わってくる。

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牛津厚信