少女は卒業しないのレビュー・感想・評価
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僕も卒業していない
朝井リョウさんの本は沢山読みましたが、少年だった私には少女の物語はピンと来ないかも・・ということで原作未読だったので、先入観なしで観れました。やっぱり朝井さんの物語は好きだなと感じました。
朝井さんの他の学園系と比較し、汗くさいバイタリティやぬめりをおさえて、か細くキラキラさせた物語という印象でした。
のどかな田舎に、飾らなくて幼くてキラキラしている複数の登場人物たちが似合っていました。自分の学生時代が生々しく蘇ってきてしまう懐かしい気持ちや風景、いつの時代も変わらぬ学園あるあるがたくさん散りばめられていて、キュンキュンさせられて、卒業式の日への気持ちが高まっていきました。主人公以外のそれぞれの奥行きみたいなものも、卒業式に向けて感じることができました。面白い小ネタのセンスもツボでした。
ありふれた通学路、家庭科室や図書室のにおい、階段の踊り場でのひそひそ話、ほこりっぽい体育館、いつか必ず訪れる卒業の日、、なんてこと無い風景に朝井さんのセリフがのると、当時の気持ちが込み上げてきてしまって、登場人物達の気持ちが生々しく感じられてしまいました。
そんなこんなで油断しており、やられました。個人的には、主人公に関わる展開はありがちにも思えるし、反則ぎみに感じました。それは勘弁して~って叫びそうになりました。とはいえ、この展開があるからこの小説が映画化されたのかな~なんて、無駄に勘繰り、複雑な気持ちになりました。最後の答辞にだいぶ救われました。投げっ放さない真面目さはさすがだなと思いました。定型にも思える答辞の言葉なのに、その重みにぎゅっと胸をつかまれて震えました。
脇役?達も素敵でした。特別な人物ではないし、そこまでドラマティックな展開があるわけじゃないけど、じゃないのに感動させられちゃうのは、やっぱりすごいと思いました。桐島の時と同様、脇役達にも血が通ってるのが朝井さんのすごいところだと思います。
相変わらず、取って付けたようなハッピー/アンハッピーエンドで括らせない点も好みでした。誰もが登場人物たちの未来に向けて、心の底から『卒業おめでとう』と声をかけたくなるような映画だったと思います。
図書室のシーンが好きでした。少しダブるような気がした個人的な思い出が蘇りました。そんな意味でも観て良かったです。
(高校時代の司書の方との出会いが無かったら、きっと読書が好きではなかった。授業をさぼった時も図書室に居させてくれて、好きそうな本も教えてもらったし、何より読書の魅力を教えてもらいました。間違えて2冊買ってしまったということで、絶対に内緒で!という約束でいただいた本を今でも持ってます。あの日当たりが良くてあたたかい図書室で過ごした時間はかけがえのない思い出です、、)
なぜ、「しない」?
なぜ、題名を「少女は卒業【しない】」にしたのかがよくわからない。
もう一度見直して考えてみたいのですが・・・。
追記
今度は最初から4人の区別もつき、細かいところまで気にしながら見ていた・・・のだが、途中から、自分の高校時代や大学時代を思い出し、後はずっとその記憶にひたっていた。
つまり、そんな映画。
ただ、2回見ても、なぜ「しない」にしたのかはわからないまま。
でも、また見に行ってよかった。
なんか登場人物みんながまぶしい!
それぞれの卒業式
河合優実は、さすがの演技だけど、感動まではいたらず。
卒業式までの2日間にスコープした群像劇の割には、テンポが悪い。4人の物語が、卒業式で交差してクライマックスを迎えるのかと想像していたが、そうでもない。
答辞を読むことになった山城まなみのエピソードは、回想編も唐突だし、ファンタジーありで感情移入がしづらい。
あのトラウマがあるんだったら、山城まなみを主軸にしたストーリーでよかったんじゃない?
好き嫌いははっきり分かれるタイプかな…。
今年58本目(合計710本目/今月(2023年2月度)24本目)。
ここの紹介や公式ホームページ等にも紹介はあり、学校(高校)を卒業する(卒業式)の2日前からスタートし、卒業式の日やそのあと(少しだけ)に「高校でやり直したいこと」「後悔していること」に焦点をあてた内容です。
このため、主人公(誰を主人公にとるかはいろいろな立場があると思います)の移動範囲は実質的に高校以外のシーンはないので(高校以外のシーンが写る方が少ない?)、「何がなんだかわからない」ということはまず起きえないと思える一方、「そのために、映画のストーリーの範囲がどうしても読めてしまう」という考え方もあります。
私も(性別は違っても)同じような経験はしたし、人それぞれ少しずつ違っても同じようなことを考えている方は多いのではないか、あるいは、いるいないが半々くらいに分かれそうで、「そういう経験もあったなぁ」だと共感度は高いですが、そうでない場合、特定の俳優さん(出演者さん)の応援枠になりそうです。
一部、高校内で民法上怪しい行動(不法行為ほか)の描写がありますが、一部にとどまりますし、ストーリー上必要といいうるし法律を論じる映画でもないので減点なしの扱いにしています。
高校の(卒業の)とき「あのときこうしておけば…」という「悔い」がある方はぜひぜひ。
映画館という閉ざされた空間で感じて欲しい
原作と映画は別もの。
とはいうものの、いつもの癖で、監督(脚本)は原作をどう料理したのか、やはり気になります。
原作は『桐島、部活辞めるってよ』と同じように直接の絡みはない群像劇で、7つの掌編から出来ています。今回の映画は、このうちの4篇をベースに監督なりの改変を加えたものとなっていました。
私の場合、原作の中の『在校生代表』の送辞の再現を見たかったので、アレ?と思ったのは事実ですが、監督の憎いところは、ラストの方で河合優実さんにその役割をほんの一部とはいえ、転嫁したところです。
ちゃんと原作ファンにも配慮してるな⁈と単純な私などは納得してしまいました。
この映画の中では、河合優実さんの実力についてはもう別格❗️
ということで、個人的な萌えポイントをひとつだけ。
中学時代バレーボール部だった軽音部長‼️
こんな素敵な女子がいたら、私だったら一生着いていきます。
でも、男って本当にバカなんです。
神田さんがお膳立てしてくれたことには、きっと森崎は気が付かないんだろうなぁ。思い余って後輩の女子がそのことを伝えても、ふーん、とかしか反応しない。歌唱力をちやほやされて、気持ちがそっちに行ってしまったりする。そして、何年か経って、初めてその有り難さに気がつく…
みたいなことが、多いような気がします。
作田さんや後藤さんについても語りたくなりますが、やめておきます。余計な先入観なく映画からでも、原作からでも、是非感じて欲しい。そういう映画です。
大人になってしまうと、焦れったくてイライラするような時間が、どれほど宝石のように輝いていたのか、それを思い出す、とても愛おしい時間でした。
少女は「高校」を卒業するが、少女は「少女」を卒業しない。マル【追記】「カランコエの花」(2018、製作は2016)、今年最も衝撃を受けた作品。ぜひ鑑賞してほしい。【再追記】「桐島」再上映に感謝
【再追記】コレまた公開記念で、朝井リョウ原作「桐島」を上映してくれる立川シネマシティさんに感謝します。3/4(土)から1週間
【追記】「少女は卒業しない」は感動・共感したが、「カランコエの花」は感動ではなく問題提起の衝撃度がすごかった
LGBTに関する理解や社会の状況は変っていないように思える。だが「カランコエの花」を見ると製作された7年前(2016、公開2018)より確かに変化していることがわかる。
今なら生徒や先生も、もっと穏やかで落ち着いた対応になっただろう。7年前ならあれだけ浮き足だった対応だったかもしれない。LGBTが話題になることも今よりはるかに少なかった。だいたい私もLGBTという言葉を知っていたかどうかさえも怪しい
映画館と地上波でしか映画を見れない私としては、「少女は卒業しない」公開記念で上映してくれた立川シネマシティさんには非常に感謝している。(以上 追記)
名作あるいは傑作。
レビュータイトルは私の偏見に基づくバイアスのかかった見方だけど、思った通りの秀作だったので満足だ。
ひとりひとり見る人によって刺さるところが色々あると思われる。私も1つあげたかったけど、有りすぎて困ってしまったのでパス(ちょっと卑怯)
この後もう1本見るつもりだったが、いい映画を見た後の余韻にひたっていたかったので見るのをやめた。
「桐島」がつまんなかった人は絶対みない方がイイよ。人によってはヨク寝られる。zzz
ちなみに見るつもりだったもう1本は「湯道」か「逆転のトライアングル」。
2023/2/23(木) city1
祝、初主演河合優美!4人それぞれの卒業
とても後味の良い青春映画でした。
それでいて、ところどころ「なぜ?」「なんか今の変だな」という引っ掛かりがあるのですが、それが見事に回収されて、とても後味が良い。
また、セリフの無い微妙な表現や間、カット割りしないで手持ちカメラの等身大の目線が、2時間で4人の少女に感情移入させられて、それぞれの卒業に涙してしまった。
始まりは、ヤバい、たくさん人が出てくるけど、見分けがつかないかも、、、どの人が主役なのか迷いました。正確には、河合優美さんは知っていたので、残りの3人が分からなかったです。4人という数字くらいは知っていたほうが見やすいかと。
2時間でそれ4人、オムニバスのようで、それぞれが繋がっている。とても良いストーリーでした。さすが、直木賞作家です。
同時に、4人の卒業後を応援したくなる、感情移入させてくれた監督にも感謝です。
ここから、将来の「神木隆之介」や「橋本愛」のような名優が生まれるのだろうな、と。各俳優陣と応援したいです。4人の女優さんと、あの歌、、、
あらすじだけを文章に書くと、ありきたりなよくある話なのかもしれませんが、画面に食い入る映画であれば、絶妙な間とか心情が滲み出て泣けてきます。
やっぱり映画館で観る映画は良い!
そう思わせてくれた良い映画でした。
「桐島、部活やめるってよ」以来の高校映画の傑作
卒業間近の何とも言えない緊張感に包まれた高校生活が上手く切り取られている作品。
4人の少女が軸で進められる青春群像劇であるが、不自然に絡ませるようなことはなく、細かいところで繋がってるんだなと気づかせるところがとても上手いと思った。
4人の中でも、小野莉奈は等身大の役を演じるのが本当にうまい。
"普通"それがいいんだよと思わせるリアルな姿が引き立っていた。
作品全体を通して、教室に廊下や体育館など全てが繊細に描かれた世界観は、随所に懐かしさを感じさせ、あの頃の匂いまで思い出させる没入感で、家に帰ったら卒業アルバムを引っ張りだしてあの頃を思い出したくなった。
群像劇のセンスが良い
朝井リョウ原作でまたしても映画化成功と言える作品が出てきた。監督の前作を見ていたので、プロデューサーがこの監督を選んだセンスが光る。
経験の少ない若者ばかりを集めるとどうしても嘘くさく見えることがある教室シーンも違和感なく見ていられた。セリフ回しだけじゃなく、手癖や膝の曲げ方、姿勢など演出が行き届いているなと感心させられた。
4人の群像劇なんだけど、それぞれがまず面白いことが前提。全てを伏線回収のように集める作品もいいけど、この作品は安易に逃げず、4人に重なる部分と重ならない部分とを上手く提示している。4人を並行に描いているように見えるからこそ時系列操作にしばらく気付かなかったり。さすがにそれぞれのラストは交互に描かないほうが良かったかなーと思ったけど(図書室のシーンはストレートに見せたほうがもっと感動したと思う)。
河合優実の息遣い。答辞と言えば「ラストレターの広瀬すず」だったけど、また違った形での良い答辞だった(最初聴かせないのも憎くていい)。スローから手持ちカメラがスッと動き出す緩急と河合優実の熱演。何が彼をそうさせたのかは示さないのも良い余白。
贔屓の女優中井友望と藤原季節のやり取りも良かった。一番卒業したがっている中井友望が卒業までの2日で大きく成長した結果のラストシーン。大切なことはこの2人が多く言語化していた。
うーん😔評価がなぜ
取り壊しの決まった高校(59期とあったが、60年で取り壊し?)の卒業生複数人のシチュエーションを巧みに交差させながら進んでいく
時間の流れが長く(ダラダラしすぎ)最前の人々は何度も背伸びをして、苦情殺到…テンポは最悪
ただ内容はそれぞれのシチュエーション毎にテーマ的なものがあり、楽しめた
しかしここまで評価が高いのは…
試写会の評価が多く、下駄履きだと思う
こんなに可愛女子高生だけの高校は無いだろうし、ノスタルジックには浸れたが、不完全燃焼
廃校が決まった高校で繰り広げられる、卒業式までの2日間を描いた群像...
廃校が決まった高校で繰り広げられる、卒業式までの2日間を描いた群像劇。それぞれに秘めた想いや、わだかまりを抱えた主人公たちが、思い出の後ろ髪を複雑に引かれながら、歌や答辞、花火に込めて自分の意思を校舎に残していく。
別れの時が近づくにつれ、強固になる結ぼれ。
ほどくのが難しく、これほど残酷でこんなに苦しいなんて。それぞれの想いが限界を越える時、各々の心の叫びが観客の記憶の渦を疼かせる。
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個人的MVPは佐藤緋美。ラスト間際、彼のあるシーンに全てを持って行かれた。
河合優実の仕掛けは一瞬、彼ではなく、母がそうなのかと思ってしまった。ラストシーン、定型的な答辞の読み上げより、自分の想いを自由に吐露するとかであれば、もっと心が動いたかも
しかし、藤原季節にメガネかけさせてあの仕上がりにした製作陣天才だろ…
卒業したけど
2023年1月29日
映画 #少女は卒業しない (2022年)鑑賞
高校の卒業式の前日と当日を迎えた4人の女子高生のそれぞれの2日間を描いた作品
進学、友情、恋愛・・・高校生の抱える悩みや希望が、主人公たちの素晴らしい演技によりみずみずしく描かれてます
@FansVoiceJP さん試写会ありがとうございました
絶妙なカメラワークと演出で泣かせてくる良作
舞台挨拶付き特別上映会&初日舞台挨拶で鑑賞。
河合優美さんが好きで観に行ったが、想像以上に作品自体よかった…!
キラキラした高校生活と恋愛映画と思いきや、ポップな色使いや、直接的な恋愛表現はほとんどなく、演出とカメラワーク、そして俳優の表情で泣ける作品となっていた。
カメラワークは時にドキュメンタリーのようなブレブレなショット、光と背景のボケを使った背中のショット、横からのツーショット、そして、ここぞとばかりのアップ。場面ごとに巧みに使い分けられていた。
劇伴は必要最低限で作品を邪魔せず、支えている。
最初は気になった、ぶつぶつに切られている場面展開も、各ストーリーの連続性を表現するためなのだろう。
キャスティングも、それぞれの役にぴったりで、言葉にならない細かい表現をしていた。
お目当ての河合優美さんは、期待以上、何も語らなくてもその表情だけで、画に惹き込まれる。
原作がいいとは思うが、その魅力が映画として表現されていた。
監督いわく、原作からは大きく変えているとのこと。
うまく映画用にまとまっていた。
エンドロールの主題歌は作品に寄り添ってはいたが、もう少しスローテンポで感傷に浸らせて欲しかった。
(2回目の鑑賞)
結末がわかって観ると、気づきがあって面白い。
細かい演出、小道具で季節感をあらわしたり、多くを語らずに、状況をわからせたり、工夫をしている。
また、舞台挨拶では、映画から出てきたように、それぞれの個性を活かして撮影されたことが伝わってくる。
河合優美さんは実際の卒業式でも答辞を読んだそう。イメージそのまま笑
小野さんは活発なキャラクターそのままに、素直に接するもうまくいかない後藤役。1番共感できた。
中井さんは、天然?なキャラクターでとても個性的。たどたどしい、話し方が心地よい。
小宮山さんは高校生離れした、顔ちっちゃすぎな8頭身でびっくり笑 たたずまいだけで惹きつけられる。作品では純真なんだけど、したたかなのがまたいい。
丁寧に、まっすぐに作られた作品だと改めて感じた。
2023年劇場鑑賞15,31本目
ダニー・ボーイ
舞台挨拶付き特別上映にて。
なるほど朝井リョウという感じの、学園群像劇に意外な真相付き。
案外良くて「なるほど」となる『ダニー・ボーイ』、河合優実の演技の説得力を筆頭に、主役・準主役級の若手たちの演技はなかなかのもの。あまりに青春賛歌に振りすぎてる気がしないではないが。
タイトルの出方も良かったんだが、卒業するんだかしないんだか、となりましたね…
少女、卒業しないってよ
あの「桐島、部活やめるってよ」を超える衝撃作。
桐島同様、今後日本映画界を背負って立つ俳優陣、監督さんになることを確信しました。
とにかく今作を浴びてください。
四人の高校生にとっての卒業式当日とその前日を描いた切なくも爽やかな青春譚
廃校が決まり校舎の取り壊しも決定している山梨県下の高校での卒業式とその前日の物語。春からの上京を前に地元の大学に進学する彼氏と気まずい関係になってしまった由貴、卒業式後のライブ準備に忙しい杏子、クラスに居場所がなく卒業式前日でも図書室に籠ろうとする詩織、そして卒業生代表として答辞を任されたまなみ、4人の高校生はそれぞれに秘めた想いを胸に最後の2日間をかけがえのないものにしようとしていた。
原作者が朝井リョウなので当たり前ですが、『桐島、部活やめるってよ』によく似た切ない雰囲気が印象的。『桐島〜』は同じ一日を違う視点で何度もなぞる物語だったのに対して、本作はさりげなく挿入されるカットでようやく気付かされますが巧みなミスリードでドラマに厚みを持たせています。そこは変な比較ですが『仮面ライダー THE FIRST』によく似ています。描かれる4つのストーリーはほぼ交わることなく流れてそれぞれの結末に辿り着きますが、最も切ないのはまなみの物語。何が起こったかはほとんど直接的に語られずポトポト落とされるカットの断片がずっしり重い刹那に誘います。
ただそこにいるだけでドラマが勝手に湧き上がるかのようなまなみを演じる河合優実の存在感がなんといっても圧倒的。全ての表情が美しくて尊くて、最後の主演作『古都』の山口百恵を思い出しました。小野莉奈が演じる由貴は『アルプススタンドのはしの方』で演じたあすはとよく似て胸の内のわだかまりを不自然なまでに明るい言動でカモフラージュする様が痛々しい。小宮山莉渚が演じる杏子が一番ミステリアスなキャラですが、その心の底にある思いは誰よりもプリミティブでキュート。中井友望が演じる詩織は最も地味ですが、彼女を救うのが『キャリー』であるところに胸をかきむしられました。鋭角的で精悍なマスクが印象的な『佐々木、イン、マイマイン』の藤原季節が詩織に最後の2日間の過ごし方を伝授する坂口先生を演じていたのが意外でしたが、他作品では見たことがないような柔和な表情で好演しています。
『桐島〜』のような派手なクライマックスはないものの、いかにも卒業式後のような甘酸っぱさが味わえる素晴らしい青春譚に仕上がっています。
その卒業の意味に涙なしでは見られない、河合優実の底知れぬ演技に驚く
今回の東京国際映画祭で1番注目していた作品。河合優実さん初主演を中川駿監督が撮るなら期待が上がらない訳がない。ホントに涙が止まらなくて、高校時代を「あの頃」と思える人で良かった。Q&Aの内容を交えながら記していく。
原作は朝井リョウさんの短編集。ちなみに私は未読。 その中で中川監督が4人の少女をピックアップし再構築。群像劇のようで異なる脚本としてリビルドされた。しかしながら、まなみを主人公としたのも納得。漠然と私も生活しながら感じていた事を作品に落とし込んでいて、主人公にするのも納得だ。その点は、監督へのQ&Aで聞くことができたので、下のコメント欄にネタバレありの元、書いておく。監督に「いい質問ですね」と言われ、終了後に改めて「質問ありがとうございました」と会釈されたことはしばらく思い出になりそうだ。照
学校は不思議なもので、別に誰かと仲良くしても良く、居心地が誰にとってもいい場所ではない。さらに言えば、世界の全ての中にいくつもの物語が流れている。それを交わらず、彼女たちの生活と区切りとして卒業を描くから惹かれてしまう。たった2日、されど2日。終わっていく日々の中で動いていく個々の生活は、どこか懐かしくもくすぐったい。あの面倒臭さに少し焦がれる程。しかしながら、そこは朝井リョウさん。ある秘密を携えて進んでいく。単なる青春モノではなく、「卒業する」彼女たちに捧ぐ花束たちに涙が止まらなかった。
主演は待望の初主演となった河合優実さん。監督によると、意図した演出を振っても見透かされている感覚になるとか。彼女に構図を教えて演技してもらう方がしっくり来ると言うから驚きだ。彼女自身も相変わらず心を掴んで離さない演技が今作でも出ている。何より主演としての器と輝きを自ら放っている点が素晴らしい。
小野莉奈さんに小宮山莉渚さん、中井友望さんといった今をときめく少女が集結。佐藤緋美さんや田畑志真さん、窪塚愛流さんといった学生キャストにも注目して観てほしい。個々の関係性と普遍的な学生生活を垣間見るようで微笑ましかった。
仲良くしていたあの人は今、どこで誰として生きているだろうか。キャラは変わったのだろうか。素敵なパートナーは出来ただろうか。抗うことなく終わった高校生活を改めて想いを馳せる。どこかざらついた記憶の蓋を再び開けたくなって、いつかの友に連絡をしたくなった。輝かしいあの頃と共に。
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