劇場公開日 2023年10月7日

  • 予告編を見る

「よい映画になりえたのに……残念」いまダンスをするのは誰だ? 出涸らし紋次郎さんの映画レビュー(感想・評価)

2.0よい映画になりえたのに……残念

2023年10月16日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 レビューの点数が高いことから見にいった。
 残念ながら他人にお勧めはできない。

 演技経験のない演者たちのたどたどしい台詞と、やけに芝居かかった俳優の舞台上っぽいしゃべりのギャップが大きく、話に入るのが難しかった。 樋口了一さんの演技あってこその映画だと思うので、周りの俳優も、彼をどう生かすかという視点で選んでほしかった(そういった意味で、塩谷瞬さんはどハマり)。

 また、やたらと場面を細かく区切り、いまいち合わない音源が次々に放り込まれ、見ていて浮き足立ってしまった。

 脚本も残念。「自分らしさ」とか「あきらめることをあきらめる」など、どこかできいたような言葉回しが多く、ぐっと心にくる台詞を見つけられなかった。中学、高校の社会科でみる学習ビデオのように感じたのは、自分だけか?

 しかしなんと言っても、ストーリーのご都合主義というか「それはないでしょ」という展開の連続が残念だった。受注など仕事風景にしても本人の特技にしても、あまりにも現実離れしていた。
 特にラストシーンではすべてがしらけてしまった。エンディングはグッドでもバッドでもいいのだが、そこまでの流れを考えても「それはないでしょう」というのが素直な感想(シーン自体もなんだか恥ずかしくなって目を背けてしまった)。

 映画の作り手はパーキンソン病の人らから話をきいて物語を編んでいったと思うのだが、「挿話」で終わってしまい、病気の本当の姿を描けていない。終盤に出てくる身重の女性の経験も、本来は身を切るような痛みのある経験の話なのに、いきなり出てきて「エピソード」で終わってしまい、迫ってこない。

 こうした、名前は聞いたことがあるが実際知られていない病気をテーマにするのはとても意義のあること。重いだけの映画にせず、明るい場面を盛り込んで見せるというのも大賛成なのだが、作り手のやり方が「これじゃないよなあ……」感満載の映画だった。

 いろいろな点から、とても、とても、残念な作品。

出涸らし紋次郎