劇場公開日 2023年9月15日 PROMOTION

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熊は、いない : 特集

2023年9月11日更新

【問題作か、傑作か】20年間も映画製作を禁じられ、
完成後に逮捕された“異才”の渾身作 権力に抵抗し、
命がけで撮影…この衝撃、観れば世界が静かに揺らぐ
これほどの痛烈作…映画のプロたちも否応なしに共鳴!

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「世界で最も勇敢な映画監督」と聞いて、皆さんは、誰を思い浮かべますか。イランの“異才”ジャファル・パナヒ監督は、真っ先に名前が挙がる監督のひとり。それもそのはず、イラン政府から20年間の映画製作&海外渡航を禁じられた身であるにも関わらず、映画を撮り続けているのです。

そんなパナヒ監督が、紛れもなく“命がけ”で撮り上げた渾身作「熊は、いない」が、9月15日に公開。実際に本作の完成後、パナヒ監督はイラン政府により逮捕される事態になりました。映画で権力に抵抗する“闘う監督”がタブーに切り込み描いたこの衝撃。問題作か、それとも傑作か、一度触れたら、もう安全圏にはいられません。


【予告編】“熊”とは何か? その答えは映画の中にある

【監督が尖り過ぎ】20年間映画製作&海外渡航禁止
それでも伝えたかった衝撃の“現実”に絶句

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パナヒ監督は、市井の人々にスポットを当て、イランという国そのものが抱える問題や現実を描き出す作風で知られる名匠。それゆえに、厳格なイスラム国家であるイランでは「反体制的だ」として2010年に逮捕され、まさかの20年間の映画製作&海外渡航禁止を言い渡されることに……。

しかし、そこで諦めないのがパナヒ監督! ここからは、尖りまくっているパナヒ監督の衝撃的な経歴、度肝を抜かれる抵抗の歴史を振り返っていきましょう。


●映画製作禁止なのに…不屈の精神で撮り続ける!
国内で上映禁止なのに…世界の映画祭で大絶賛!
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2010年以降にも、本作を含む5本の長編を撮影したパナヒ監督。11年には、自宅軟禁の日々をドキュメンタリー風に記録した作品、その名も「これは映画ではない」を発表。映像の入ったUSBメモリをケーキに隠してカンヌ映画祭に応募し、キャロッスドール(黄金の馬車賞)を受賞しました。まさに、半端ない“不屈の精神”が伝わるエピソードです。

現在、パナヒ監督作品はイラン国内では上映禁止。それでも、カンヌ・ベルリン・ベネチアの三大映画祭を含む世界の映画祭で常に注目され、華々しい受賞歴を誇っています。

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なかでも最新作「熊は、いない」は、パナヒ監督が逮捕&収監中であるにも関わらず、ベネチア映画祭で審査員特別賞を獲得する異例の事態に! 自身の置かれた苦境をバネに、あらゆる手を使って映画を撮り続ける。“表現の自由”を守り、反骨精神むき出しで、タブーに切り込むことも恐れない。そんなパナヒ監督が、どうしても届たかった“物語”……これは、見ない選択肢なんてないのでは?


●【あらすじ】主人公は、監視を逃れ秘密裏に撮影する監督自身!?
“限りなく現実に近い”壮絶な環境に震える
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主人公は政府の監視を逃れ、秘密裏に撮影する映画監督。演じるのはパナヒ監督その人であり、劇映画でありながら、パナヒ監督自身を投影したセルフドキュメンタリーでもあることが、本作の特徴です。

出国を禁止されている監督は、イランの小さな村から、リモートで助監督に指示を与える。彼が撮影するのは、トルコの街中で、国外逃亡を目論むカップルを追うドキュメンタリードラマ映画。さらに、滞在する村にも、古いしきたりが原因で愛し合うことを許されず、逃げることを望むカップルがいた。監督はやがて、村を揺るがす事件へと巻き込まれていく。

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監督を軸に、迷信、圧力、社会的な力関係によって妨げられる2組のカップルがたどる、想像を絶する運命が描かれる物語。“限りなく現実に近い”壮絶な設定とストーリーが、臨場感をもって迫ってきます。


●【実際に鑑賞→すさまじい臨場感で冷や汗止まらず】
物語と地続きの現実が、まさに今観るべき“渾身作”
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実際に鑑賞した映画.com編集部は、開始5分で、パナヒ監督のヒリつく演出に震えました。映画外の現実、映画内の現実、映画内で撮影されている作品――そんな3段階のレベルが融解し、リアルと虚構の境目を見失わせる驚きのオープニングで、物語に一気に引き込まれます。

映画監督は、リモートでひっそりと撮影を進めますが、ある事情から、深夜に国境まで車で近づきます。村人の誰にも会わなかったはずなのに、秘密裏の行動は次の日、なんと村中に知れ渡ることに……。

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観客の数ほど解釈がわかれる作品ですが、筆者はどこか、この村に対して異様なムードを感じていました。誰も信用できない村人たち、鳥肌ものの監視社会、村人の前で「嘘をついていない」と神に宣誓する異様な儀式――スリラーやミステリーのような質感すらある、すさまじい臨場感で、冷や汗が止まりませんでした。パナヒ監督による暗喩的な体制批判をピリピリと感じつつ、鑑賞者は最後まで、「どこまでが現実なの?」と問い続けることになります。

そして意味深なタイトル「熊は、いない」の“熊”とは、一体何を意味しているのでしょうか。劇中では、「熊=村の外にある脅威」であり、ある意味では村人を縛るために創作された、架空の存在でした。しかし皮肉にも、現実のパナヒ監督の逮捕によって、このタイトルは逆転し「熊は、いる」と示した。ゆえに本作は新たなステージへと歩を進めています。監督が逮捕されるまでを描いたような、現実と地続きの物語は、まさに今観るべき、すさまじい代物なのです。


【映画館支配人=映画のプロたちの圧倒的支持を獲得】
鮮やかな語り口が、恐るべき熊を浮かび上がらせる

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この「絶対に見逃してはいけない」作品には、“真の映画好き”ともいえる映画館支配人たちが、熱視線を注いでいます。この項目では、そのすさまじい“熱”が伝わるコメントを紹介していきます。


●知りたくなるはずです。世界で最も勇敢な映画監督のことを。
――新宿武蔵野館 菅野和樹(支配人)
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ジャファル・パナヒ監督を知らなくても、映画を観れば《熊》とは何かを知ることができます。すると不思議と監督のことを知りたくなるはずです。世界で最も勇敢な映画監督のことを。


●今回も痺れました。
――静岡シネ・ギャラリー 海野農(副支配人)
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ジャファル・パナヒ監督が彼の映画作りの前に立ちはだかるハードルをアイディアと覚悟で跳び越えたりくぐり抜けたりしながら、あたたかいユーモアと鋭い批判性をそなえた新作を届けてくれるたびに、心の中で喝采を送っています。今回も痺れました。ところで、自作に本人役で出演する映画監督が時々いますが、彼ほど良い塩梅で「映画監督のジャファル・パナヒおじさん」を演じられる人はいないと思います。俳優パナヒの「良い塩梅」ぜひご注目ください。


●きっと思うだろう。パナヒ監督の作品をこれからも観続けたいと。
――伏見ミリオン座 岩崎方哉(副支配人)

(※「崎」の正式表記はたつさき)

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第79回ベネチア国際映画祭で審査員特別賞を受賞した今作「熊は、いない」。興味をそそるタイトルの物語の中身は、パナヒ監督が撮るドキュメンタリードラマのカップルと、パナヒ監督が滞在する国境近くの村でのカップルという2組を通してイランの現状を描くという力作だった。熊はいるのかいないのか、ぜひ劇場でパナヒ監督のメッセージを受け取って欲しい。そしてきっと思うだろう。パナヒ監督の作品をこれからも観続けたいと。


●果たして自分はあの村人のように【熊】なんか居ないと言えるのか。
――アップリンク京都 鳥井優希(副支配人)
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日本に暮らしている中ではおおよそ直面することのない、イランの不条理な問題を目撃すると同時に、慣習に従って生きるイランの人々の言動からはある種の既視感を覚える。ドキュメント性が極めて高く感じる演出だからこそ身に迫るものがあり、果たして自分はあの村人のように【熊】なんか居ないと言えるのか、そもそも日常に潜む【熊】をどれだけ認識できているのか試されているようにも感じた。


●パナヒ監督は、きっと映画の神様に宣誓している。
――シネ・リーブル梅田 瀧川佳典(営業係)
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107分という時間の中に、緩やかで朴訥な演出で、しきたり、掟、教義、法律、思想、文化、文明、権力、正義、自由、家族、国境、情、愛、子供、責任、食事、幸福、平和、そして“映画”について考えさせられる見事な作品でした。どんな圧力や苦難にも屈しないジャファル・パナヒ監督は、きっと映画の神様に宣誓しているのだと思います。


●この世で最もエゴイスティックなアーティストをも皮肉に晒してみせる。
――KBCシネマ 八重尾知史(スタッフ)
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虚実をいとも簡単に、幾度も越境して見せる鮮やかな語り口が浮かび上がらせるのは、戒律やしきたり、こうであれという願い、恐れるべき熊。大いなる者の不在の中で抑圧し合う人間の愚かな営みを冷ややかに見つめながらも、映画監督という、この世で最もエゴイスティックなアーティストをも皮肉に晒してみせる自己言及っぷりに痺れました。


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