劇場公開日 2022年12月9日

「絶望的な世界で"死"の恐怖に取り憑かれた僕たちの行き着く先は…お先真っ暗かでっち上げた希望か、はたまたスーパーマーケット=大量消費・物質主義か?」ホワイト・ノイズ とぽとぽさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5絶望的な世界で"死"の恐怖に取り憑かれた僕たちの行き着く先は…お先真っ暗かでっち上げた希望か、はたまたスーパーマーケット=大量消費・物質主義か?

2022年12月30日
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死ぬのが怖い?なんともないフリしてもやっぱり死は怖くて、生きてるうちから生を全うできない。だけどこれなら、もしかしたら死を殺せるかもしれない…。大好きノア・バームバック(&グレタ・ガーウィグ)の素晴らしいドラメディを中心としたフィルモグラフィーにおいて正直弱めな作品かもしれないが、本作で彼が成し遂げた新たな挑戦は大いに歓迎されるべきだし、やはりこれもまた彼なりの独自の調理で人生を切り取った見事な一品に仕上がっているのだ。自身にとって新しいことしようという気概の伝わる挑戦は、コロナ禍に相応しい。
テレビ。あるいはこれは映画です、というフィルターを通した始まり方。衝突シーンはアメリカ人ならではの生きることの祝祭、楽観的な死。あらゆるプロットは死に向かっている人生はいつだって二択。悲劇的な映像に惹かれる我々にとって暴力が意味するものは生まれ変わりなのか?ヒトラーとエルヴィス、圧政を英雄視する絶望的状況…中に入ってくる厄介さ。だけど恐怖が邪魔をする。黒煙という社会を象徴するメタファー。
生という丘にしがみついて、人は事実という敵に囲まれた弱い生物。だけど、死への恐怖を乗り越えて、どうせここで待つしかないなら、人生を踊ってやる。スキーマスクという小物使いも印象的ながらやっぱりTVという80年代当時を象徴するメディアに、回りトラックという差異を伴う反復。歳を重ねたからこその死生観や信仰。知性に訴えかけてくる野心的作品で、気の利いた展開からの…。最後がとにかく最高すぎる!

JAK
♪LCD Soundsystem

とぽとぽ