劇場公開日 2022年8月13日

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「香港デモの最前線の記録」時代革命 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5香港デモの最前線の記録

2022年8月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

2019年の香港デモの最前線をカメラで収めた作品。あの時、何が起きていたのかを知る上で貴重な映像が満載だ。
デモ側へのシンパシーを持って撮影されている作品で、デモがどのようなプロセスを経て敗北に終わったのかを克明に記録している。
200万人が集まった(実際にはそこまで集まっていないと思うが)時点では、デモ参加者には希望が見られる。しかし、警官の横暴が激しくなり、白いシャツを着たマフィアたちが市民に暴行を加えるようになってからは絶望まっしぐら。このデモは、そもそもは逃亡犯条例の撤回を目標に掲げていたが、途中からは向かってくる警官にひと泡吹かせることへと目標が後退しているようにも見える。
途中から明らかに勝ち目がなくなっているが、勇武派は大学に立てこもり最後まで抵抗を試みる。残るのは悲壮感だ。
デモが終わっても若者はまだ諦めていないという姿勢を見せて、なんとか前向きに映画を終えようという努力が見える。その努力自体にも悲壮感が宿っているように感じられる。巨大権力が本気で牙を向いた時、市民にできることは何かを真剣に考えるためにも本作は観ておいたほうがいい。

杉本穂高