劇場公開日 2022年10月8日

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「いったん始まった「逆回転」の速さ」夜明けまでバス停で talkieさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5いったん始まった「逆回転」の速さ

2024年1月19日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

一見すると順風満帆の生活を送っているようには見えても、いったん何かに躓(つまづ)いて、人生の歯車が逆転を始めたとしたら、その逆転の速さ(凋落の激しさ)は、筆舌に尽くしがたいものがあるようです。

猛威を振るったCOVIT-19(新型コロナウイルス)が、季節性インフルエンザ並の扱いに変更されたのは、ようやく去年(令和5年・2023年)のこと。
それまでは、得体の知れないウィルスへの恐怖が、飲食や宿泊から(過剰に?)人を遠ざけてしまっていたように思われてならないのですけれども。
(今朝までピンピンしていた人が、昼過ぎにはICUに収容されて人工呼吸器が必要になるとか、いったん重篤化すると、そのスピードは早かったことは、現場の医療関係者を驚かせたとは聞き及びますけれども。
しかし、当時はテレビなどが盛んに喧伝したようにCOVIT-19の致死率が季節性インフルエンザの数倍とか言われても、そもそも季節性インフルエンザの致死率はコンマ数パーセントとかいう話ですから、その「数倍」では、本当は高が知れていたはず。)

そしてコロナ禍が去ったこれからは、じゃふじゃぶと注ぎ込まれたコロナ関連融資によって押し潰されてしまう企業が必ずや出てくることでしょう。

飲食関係を始めとして、それで人生の歯車を狂わされてしまった方々も、少なくないことで、本当に、胸が痛みます。
そのことに、思いが至ると。

本作は、『TATTOO<刺青>あり』が、秀作だった高橋伴明監督の手になる一本ということで、TSUTAYAの宅配レンタルで、媒体(DVD)が送られて来るのを楽しみに、待ちに待って鑑賞した一本になります。

その期待にも違(たが)わない、佳作であったと思います。評論子は。

(追記)
監督さんとしては、決して多作とは言えない方と思いますけれども。本作の高橋監督は。評論子は。
しかし、前作にしろ今作にしろ、チカラのある方だと評論子は思うので、是非とも次回作にも期待したいところです。
本作は、その次回作がいよいよ楽しみになった一本だったと、申し添えておきたいと思います。

(追記)
本作の後半の「爆弾騒ぎ」は、いささか過剰ではないかとの意見もあるようですけれども。
他の方のレビューも読ませてもらうと。

しかし、COVIT-19に対する不安や、生活上の不安から、元学生運動の闘士と称するホームレスに唆(そそのか)されて、三知子がその方向に走ってしまったのも、本作の要素の一つを成すのではないかと、評論子は、思います。

それは、別作品『福田村事件』などでも描かれているような、不安な社会情勢の下での…否、不安な社会情勢の下だからこそ起き得べき「思わぬ出来事」というものが、コロナ禍の社会で、実際に起こっても不思議でなかったことを暗示しているように思われるからです。評論子には。

案外、最後に彼女を襲撃しようとした犯人も、そういう不安な社会の中で、マスコミの喧伝に乗ぜられてしまっていたのかも知れない。
その警鐘であったとすれば、その重みは、決して軽くないように、評論子は思います。

talkie