劇場公開日 2022年8月19日

  • 予告編を見る

「単なる女性映画として観るべからず」セイント・フランシス シューテツさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0単なる女性映画として観るべからず

2022年10月20日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

少し前に観た『わたしは最悪。』とか『リコリス・ピザ』とか、近年世界的に30代(前半)女性の生態を描いたような評価の高い作品が作られていて、1つのムーブメントになっている気がします。
評判が良いのでつい観てしまいますが、基本女性映画なので良い映画として理解はしても、所詮男の私はどうしても他人事のように客観的に観てしまい中々感情移入出来ませんし、いつも言うように“私の映画”にもなり難い種類の作品群です。
以前『82年生まれ、キム・ジヨン』の感想で、本作で描かれているテーマは、本来男女問わず“今を生きる総ての人が抱える問題”であると指摘した事もありました。単なる女性映画にしてしまうと、問題を矮小化させるだけになってしまいます。

しかし本作の場合、非常に生々しく女性の生理を描かれていて女性性を強調しているのですが、私は『カモン カモン』の女性版を観ているような感覚となり、テーマ的には男女問わずのもっと大きな人間の成長物語のように捉えられました。
この手の作品レビューを読むと女性観客の共感ばかり目立つことが多いですが、この手の作品群こそ男性のレビューを読むことをお薦めします。本作のテーマはタイトルからして迷えるすべての人間に対してのアンサーである様に思えました。

本作で最も描きたかったのは、現在社会の多様性やジェンダーという価値観の行き着く成れの果ての様な気がしました。なので本来悪役になるべき役や台詞を敢えて女性に言わせたりしていたので、この辺りは確信犯として作られていたのでしょう。とても、バランスの良い作品だと思いました。

コメントする
シューテツ