劇場公開日 2022年6月24日

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「キャラとストーリーを、ひねりにひねって、最後まで搾り汁を出そうとする怪作。」神は見返りを求める DEPO LABOさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0キャラとストーリーを、ひねりにひねって、最後まで搾り汁を出そうとする怪作。

2023年7月1日
iPhoneアプリから投稿

売れないYouTuber女子と、少し器用で孤独な中年男が出会う。

男の手助けもあり、ドイヒーコンテンツを量産するが、女子は売れっ子YouTuberに引き上げられるにつれ、中年男に冷たくあしらう。

そして、中年男は女子に対して暴力的なまでに執着していく。

(以下ネタバレあり)

男は経済的にも社会的にも孤立していくなか、暴露系YouTuberとなり、女子とディスり合いの泥仕合に発展。

その模様を利用しようとする周囲のYouTuberたちへの嫌悪感がMAXに達した女子は、中年男に対して歪な安心感を覚えてしまう。そして、過激な撮影により大火傷を負う。

病室で未成年迷惑系YouTuberの魔の手から女子を救った中年男は、それでもなお見返りを求め、女子と決定的な確執を残してしまうが、すべてを投げ打ってでも手に入れたかった、孤独を埋めるマスターピースを手に入れる。

人生の再出発を誓う男だが、二度と戻らない過去の幸せな世界に囚われつづける。

▼「出会いが最悪なふたりほど実は最高のパートナー」という定番シナリオパターンの真逆をやってる

・この作品では「出会いは最高だけど実は最悪のパートナー」という展開にしている

・しかも、主人公の両者が善vs悪のキャラで対立させるのではなく、悪vs悪(未熟vs未熟)というキャラで見事なまでに泥仕合に発展させる

・しかも!そこだけでは終わらず、中年男ってもしかしたら実はいい奴なのかも..?と思わせる仕掛けがあったり、女子の中で中年男に対する歪な安心感が芽生えたりと、キャラクターにどんどん捻りを加えていく

・主人公両者自身の豹変ぶりで捻りを加えたあと、中年男よりも邪悪なYouTuberどもといった、外的要因により、女子主人公に捻りを加えているのが、すごい曲芸。

・暴力まで振るわれたトラウマ級のストーキングされたのに、もう一度中年男に気持ちが傾くという無茶さに対して、なんとか説得力を持たせる必死な工夫だったと思う

▼とにかくキャラとストーリーを、ひねりにひねって、最後まで搾り汁を出そうとする演出と演技がものすごい。

・病院で、中年男が未成年迷惑系YouTuberに対する「顔を晒したらお前の人生終わり。気が向いたらネットに上げるから毎日ビクビクして過ごせ」という演技の中に、青年の今後を気遣う優しさが、滲み出ちゃってるのがすごい。

・この今後を案ずる優しさは、アダルティーなボディペインティングに走るYouTuber女子に対するものとリンクして、あぁ根はいい奴なんだなぁ的な印象を持たすひねりを、ここでも加える。

・しかしその直後、病室で大火傷の女子に対してカメラ回して嫌われる &「ありがとう」マスターベーションを繰り広げる中年男を見せて、やっぱだめだわこいつという捻りを即座に加える。笑

・中年男は真の満足も得られたことだし、再出発するかと思いきや、未成年YouTuberの焦りと恨みを買い、刺される。

・裏切りに裏切った挙句、主要キャラをラストで全滅させるという展開は、マカロニウエスタン的なド定番な流れに持っていってしっかり締めるという。。

・1時間40分というコンパクトな尺の中で
、レール捻りまくりのジェットコースターすぎるシナリオに、最大限の遠心力を与える主人公たちの演技力。ただただ、すごいものを観た。。。

・主人公同士はどっちもどっちで悪。そしてそれを取り巻く人間たちはもっと悪。という究極性悪説な設定のお話。

▼強烈なキャラのあとに、より強烈なキャラをだすというカブせ方

・悪いもの(主人公たち)を登場させて、いろいろやったあとに、もっと悪なもの(YouTuberたちや会社の同僚)を登場させてる

・未熟なもの(主人公たち)のあとに、もっと未熟なもの(少年迷惑系YouTuber)を登場させてる

・あとからもっと強烈なキャラを出していくという被せ方は、ポンジュノ監督の「母なる証明」や「パラサイト」でみられる、弱者を出したあとに、もっと弱者を出すというカブせ方に似ている

DEPO LABO
トミーさんのコメント
2023年9月24日

大分前の鑑賞なので・・
バッドエンド前が途中に出ていたとは。岸井ゆきのさん、本当にイヤそうな顔しますね、大火傷を負った時は不謹慎にも噴き出してしまいました。本当に、絞り出した作品のイメージが有りました。

トミー