劇場公開日 2022年12月23日

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「“戸締り”映画の影に隠れた感がある“鍵を開ける”映画だが、テーマはよりリアルで重かった❗」かがみの孤城 kazzさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5“戸締り”映画の影に隠れた感がある“鍵を開ける”映画だが、テーマはよりリアルで重かった❗

2023年1月11日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

幸せ

萌える

40数年前だが、私が中学生のときクラスに不登校の女の子がいた。
1年生だったか2年生だったか忘れたが、彼女の家に遊びに行った直後に突然休んだかと思うと、まったく登校しなくなってしまったので困惑した。
イジメやクラスメートとの確執等はなかったと思うのだが、彼女に何があったのか今も知らない。
ただ、彼女が高校に進学したとは聞いたので、その後は幸せな人生を送っているものと思う。
…と、そんなことを思い出した。

辻村深月の原作小説は本屋大賞を受賞してるそうな。恥ずかしながら未読。コミカライズもされているらしい。

鏡の向こう側に吸い込まれるのも、願いが叶うから鍵を探せと言われるも、あまりにも唐突で、取って付けたようないくつかのルールもなんだか幼稚な気がした。
重ねて、城と海のCGのテクスチャーがアニメーションと合っておらず違和感があった。
…が、気になったのはそれくらいで、様々な問題を抱えた中学生たちが閉塞感から脱け出す冒険と目覚めの物語りは感動的だったし、我々大人たちが彼らに何ができるのか、何をしなければならないのか、少し考えさせられた。

主人公 こころ をイジメていたリーダー各 真田 とその取り巻きたちは実際にいそうだし、あの子達の行為がどれだけ相手に恐怖心を植えつけるものか、ファンタジーの形をとった物語なのに、極めてリアルに突きつけてくる。
私は、「傷つく」のだろうと漠然と考えていたが、「恐い」のだと改めて知らされた。
そして、現場の大人たちのどんな対応が無理解なものなのかも顕にされている。

転入生だった 萌 がまた転校していくとき、「ああいうコ(イジメっこ)は、別の学校に行ってもいるかもしれない」と言う。萠 が こころ に言う「負けないで」は、”イジメに負けるな“ではなかった。イジメられているコがいたら“関わりたくないと思う自分に負けないで”そのコに手を差し伸べよう…だった。
イジメられた子、イジメに加担した子、イジメに見ないふりをしてしまった子、それぞれの子供たちは心に深い傷を負うのだろう。
そして、そんな傷を知らずに大人になった者が、大人の世界でもイジメを犯すのではないだろうか。
悲しく、情けない人間の本性なのかもしれない。

最初、不登校になりかけの こころ に冷徹だった母親が、フリースクールのキタジマ先生の助言で娘と向き合うようになる。
母親の変化の過程は描かれないが、彼女は立派に娘を守った。
ボイスキャスト麻生久美子の声音が暖かく優しく感じた。

不登校の原因はイジメばかりではない。
7匹の子山羊たちは、7通りの事情を抱えていた。
時を隔てて彼等に救いの道標を示し続けるキタジマ先生。久しぶりの宮﨑あおいがやはり上手い。

こころ の声を担当したのが、今最注目の若手女優當真あみ。
この娘は顔を見ていたいタイプだが、声の演技も達者だった。
『すずめの戸締り』の原菜乃華もそうだったが、最近の若い役者は声の演技も本当に上手くて感心する。
更に、歌もダンスもできちゃうんだろうなぁ、きっと。

kazz
りかさんのコメント
2023年12月18日

負けないで、と思いつつも、なかなかなケースもあるかと思います。
イジメをする人は、心に傷の無い人、というか、感じられない人かもしれません、昨今の事件など見聞きしていますと。
SNSの誹謗中傷の書き込みなども
理解しがたいですね。

りか
りかさんのコメント
2023年12月18日

こんばんは♪
共感コメントしていただきましてありがとうございました😊
本作絵柄が可愛いと、最初ながら見していたら、エラいどぎつい内容だとわかり、3回目にしっかり観ました。ほんと、スズメより高評価の方が多いですね。子供の世界の不登校ですが、子供だけでなく様々な大人も関係したり原因の一端を担っていたり、複雑な面もありますね。不登校になった子供のその先もまた様々で、

りか
Uさんさんのコメント
2023年1月25日

そうですね。「負けないで」は、無関心あるいは無傷を望もうとする自分を奮い立たせる言葉だったのでしょうね。

Uさん
ゆり。さんのコメント
2023年1月12日

kazzさんのレビュー、タイトルもとても良いです。私は最初のうち、こころは不登校で親に迷惑をかけているのに、母親に対する態度が酷くないか?と思ったのですが(自分も高校の時は行きたくなかったけど、なんとか一日も休まずに済んだので)、でもあの家に押しかけられた場面は本当に恐ろしかったです。こころはたぶん恥ずかしさやプライドや申し訳なさや怒りや色々な感情があって、助けを求められなかったんですね。
おおかみ様がこころを引きずったり、厳しいルールを科したのはちょっと違和感でした。

ゆり。
グレシャムの法則さんのコメント
2023年1月11日

kazzさん、お世辞でなく、凄いです。
〝傷つく〟以上に〝怖い〟
これはまさに原作で映画より丁寧に描かれるこころの不登校の要因の本質に迫るものだと思います。映画を見ただけで、テーマの真髄に迫るkazzさんの洞察力。こちらこそ尊敬します。
kazzさんが唐突に感じられた点については、映画より多く語られるリオンの姉のことやエピローグを読むことで、もしかしたらかなりの部分、解消されるかもしれません。とはいえ、あくまでもわたしの個人的な解釈によるものです。

グレシャムの法則
もりのいぶきさんのコメント
2023年1月11日

kazzさん、コメント有り難うございます。

>トラウマになりそうな場面もあったなぁ

と書いた私の念頭にあったのは
「ルール違反した子たちに迫る炎のオオカミ」
だったのですが
KAZZさんのコメントを読んで、他にも色々と
小さな子供には刺激の強そうな場面があったなぁ と
思い当たりました。

>性的虐待とか、親からの重圧とか、小さい子には向かない

ホントその通りですね。
さらには
「集団でこころの自宅に押しかけて
   "出てこい" とガラス戸を叩く」
これはもう、犯罪では…
と思いながら観ていたことも思い出しました。

やってはダメと思った事や
助けてあげたいと思った事が
小さな子供の心に残ればいいなと思います。

もりのいぶき