サバカン SABAKANのレビュー・感想・評価
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80年代のノスタルジーにどっぷり包まれる
人生のふとした瞬間、思いがけず子供時代の記憶が蘇ることがある。あの頃は自分の暮らす町の丘を一つ超えるだけでもドキドキが募り、壁や限界を感じるどころか、眼前の海のように可能性が無限に広がっていた。代償は次の日の筋肉痛くらいか。主人公にとって「サバの缶詰」はそんな思い出の扉を開く鍵のような存在だったのだろう。いつの間にか本作は、80年代の長崎(といっても市街地からは少し離れた自然の残るエリアだが)のノスタルジーにどっぷりと包まれていく。そこで展開する出来事が通過儀礼や大冒険と呼ぶに足るかどうかはわからないが、だいぶ時が経過した今、タイプカプセルのように主人公の胸にこみ上げ、不思議な力を授ける存在なのは確かだ。真っ黒に日焼けして天真爛漫な表情をみなぎらせる子役たちも良いが、両親役の二人の包容力と大らかさはさすが。そして自然体で、ゆっくり追想に身を任せていく草彅剛の相貌がグッと沁み入る一作である。
オリジナル脚本が持つ不思議なパワーが
長崎の沖に浮かぶ島に行けばイルカが見られるという、そんなことあるだろうかという誘いに、少年は渋々乗っかってみた。乗っかったのはクラスで人気者の小学校5年生の久田、誘ったのはその貧しい身なりがバカにされているクラスメイトの竹本。幻のイルカと出会うために1台の自転車を漕いで坂を越え、下り坂ではすっ転び、島まで海を泳ぐうちに溺れかけながら、彼らの冒険は2度と来ない夏の思い出を互いの心に刻みつけることになる。
成長し、今は売れない作家である久田を演じる草彅剛のモノローグで始まる物語は、青春ノスタルジーにあるべき要素を各所に配置している。背景となる1980年代の世相、言葉も叱り方も乱暴だが愛に溢れる両親、貧しくても明るく心が挫けてない家族の風景、少年が冒険を持ちかけた本当の理由、2人が心の底で共有していた孤独と不安、紡がれる永遠の友情、やがて訪れる意外な結末etc。
映画ファンなら誰しも『スタンド・バイ・ミー』を思い出すかもしれない。他にも幾つかイメージするジャンル映画があるのだが、本作の価値は、これが原作ベースではないオリジナル脚本を基にしている点にある。恐らく様々な映画に影響を受けながら綴ったであろう脚本が、決して達者とは言えない子役たちの演技や、美しい日本の夏の風景によって具現化される時、オリジナルだけが持つ不思議なパワーを発揮するのだ。
実を言うと、筆者はラストで目頭が熱くなった。あなたはどうだろうか?今週末公開。
またね、が叶う美しい夏の物語
あの困り眉の優しい少年が大人になった役を、草なぎ剛が演じることになる。子ども時代の久田と大人の久田が違和感なく重なるのがめちゃくちゃ納得、いいね。
少年たちの絶妙な距離感、徐々に距離が近づいていく2人の姿にはとてもほのぼのさせられる。
演者も全員良い。みかん畑のお爺さんいいキャラしてるなあ、見送る時に駆けつけてくれるのもジーンと来た。
久田のお父さんが息子の背中を押したり、悲しい気持ちを受け止める…理想の父だ。かっこよくて、いいお父さんだなと感じる。
またね、またね、が泣かせます。
夏の日の思い出~君がくれたもの~サバ缶
昔ながらの少年冒険譚、夏休みの思い出、っていう分かりやすい展開の映画なんだが、こういうベタな話でもぐっときてしまうのは歳をとったせいか(Netflixで鑑賞)。
ストーリーも映像も、役者の演技も、どれもこれも特別凝ったものは何もないのだが、何故か心に沁みる。
映画の2人のように、悲しい出来事で離ればなれになるということはなくても、今40代以上の多くの人が、こういう夏休みの一日を友達と過ごした記憶ってあるんじゃないだろうか。大人になって思い返してみたら、取るに足らないことでも、子供にとっては大きな冒険。勇気を振り絞って知らない土地まで自転車で出かけて夕方遅く家に戻ってきた日があったことを思い出す。まさにノスタルジー。
当時は缶詰も、今のようにプルタブじゃなくて、缶切りで開けるものしかなかったし、サイズも大きかった。田舎の祖父母の家に行ったら、ビールやジュースも瓶のフタを栓抜きで開けていたなあ。
40代の自分自身にとっては、主人公の小学生らを通して、自らの子供時代が。
60代後半から70代の親世代には、主人公の親たちを通して、自分の子供達のことが思い出されるのでは?
そしてこの映画を観た令和の小学生たちは、どう感じるのだろうか?
子役2人の演技は凄いとは言えないが、上手で違和感なく観られる。親役の尾野真千子と竹原ピストルは昭和の母ちゃん、父ちゃんの味が出ていていい。特に尾野真千子って、若い頃から観ているけど、肝っ玉で声が大きいけど本当は愛情深くて優しい女性っていう今回のような役が素なんじゃないだろうか。
レビューのタイトルは、見終った後に思い浮かんだ言葉。
ZONEの「secret base」が思い浮かんだんですよ(歌詞がピッタリだと思いませんか?)。
エンディングテーマの「キズナ feat. りりあ。」は映画の雰囲気に合っていてとても良かった。こういう少年が主人公のハートフル系映画って、透明感のある若い女性シンガーの歌声が合うのだろうか(最近観た映画では「カラオケ行こ」が同じ系統か)。
忘れてはいけないのが、草彅剛。登場シーンは少なかったけれど、回想の落ち着いたトーンのナレーションと彼の佇まいが、観る者の郷愁を誘うものになっていたと思う。
こういう映画、たまに観たくなる。
昔の友達に会いたくなった
ロケーション、物語の進み方いつの間にか自然と引き込まれていた。
物語はゆっくりな感じなのに、、
誰にでも似たような経験があるし昔の思い出と重なり涙してしまった。
竹ちゃんの大人役をあえてつけなかった点も
イメージが違うとかそういう感情を持たずに終わったのが素晴らしかった。
久ちゃんの大人役の草彅剛さん表情一つ一つ歩き方など久ちゃんの子供時代の優しい性格などそこら辺をしっかり表現されていた。
1番心に残ったシーン
→いつもだらしない竹原ピストルさん演じるお父さんが「よかよか」といいながら息子を抱きしめるシーン、親と子のキズナも描かれていた。
ありそうで他にない映画でした。
子供時代の1日は、そういえば永遠だったなあ。
子供時代というのは、境遇がその子の価値を決めてしまう部分が多々ある。
境遇はその子自身の責任とは一切関係ないことなのに。
全世界の子供たちが、自分の責任にない「境遇」によって判断される他者の目から解放されて欲しいなと、改めて思った。
子供たちの演技もよく、良作。
ノスタルジー感がたまらない
小説家として活動している主人公だが、自分の名前での作品が売れずにゴーストライターとしての活動の方が増えていた。
そんな中で子供の頃のサバ缶にまつわる思い出を振り返り始めた。
子役を演じる子の演技が絶妙にいい味を出していた。
なんとも言えない表情がとても良かった。
子供の頃ってなんだか分からないけど、ウキウキして楽しくて、悲しんだりして、それでまた次の日になって。
そんな毎日の中で沢山の思い出であったなとノスタルジーに浸りました。
いつだって父ちゃんはかっこいい。
あの頃を思い出すのは、食べ物の味。その食べ物の値段は関係ない。
主人公の気持ち、というか小学生の心情変化がすごす分かりやすい。共感しやすい。
言葉が徹底的に排除されてる印象がある。
見る人を感動させるのに長ったらしい言葉なんて必要ないのかもしれない。必要なのは、サバカンとみかんと、
行動と。
これくらい分かりやすい方がいい。ただただ温かい気持ちになれる。
ロケーションがめちゃくちゃ良い。これ以上ない場所。
日本の自然がすごくうまく表現されてる。海、山、田園風景、、、ぜんぶ良い。
いつだって父ちゃんはかっこいい。
映画版ぼくなつ
竹原ピストル、尾野真千子、岩松了、ゴリけん⁈と味わい深い役者を配置すると子役が上手くなっていくマジックを見せてもらいました。
🎬"スタンド・バイ・ミー"より先に撮っていたらアカデミー賞を取っていたで賞を贈ります。
ドラマで見たかったかも
今回はネタバレレビュー
中盤まででタケちゃんと仲良くなるまでに時間使いすぎた感がありあすね
親友としてもうちょいエピソードを盛り込んで欲しかった
あと、さすがに再会遅すぎない?ってことでちょい違和感
高校時代か20代の社会人で一度会ったら良かったのになと
(自分の時は高校で再会したので)
あの時代は不良全盛期だったので、不良に喧嘩吹っ掛けるくらい肝っ玉がある子なら、学校でも番長になっていそうだなぁと思ったり
懐かしさと共に、いや~もっとこうだろ~と言う見方も出来るノストラジーな作品でした
関係ありませんが、夫婦仲が上手くいってない作品多すぎ(ボソ
これも時代かなぁ
統一感に欠ける
少年達が成長を遂げると同時に、気持ちを言葉で伝えられるようになる過程に胸打たれる。物語の回想を経て、大人の久田も家族に対する素直な気持ちや、ものを書く事への想いを再認識出来たのだろう。言葉を持つ少年と持たない少年、目標を持つ少年と持たない少年、という対比が面白い。
一方、唐突なストーリー展開に気持ちが追いつかない所があり入り込めなかった。
タイトルにもなっている鯖缶の登場に関しては、何故鯖缶でなければいけなかったのか説明がなく、亡き父の心情を一切読み取る事ができなかった。父と子の関係性がテーマの一つである事は伝わるが、それ以上の示唆は得られない。
母親の死について。人は親になると用心深くなるもの。まして、あれだけ沢山の子をシングルで育てる身であれば、自分自身の命の重みは身に染みて実感している事だろう。不注意による事故であっさり死んでしまう場面には苛立ちさえ覚えた。
裏設定まで把握して観れば腑に落ちたのだろうか。少年達の名演が光っていただけに、最後まで気持ちが乗り切らず残念だった。
とても良い
1986年と言えば、ボクは4歳だけどとても懐かしく
まるで自分の思い出のように浸る事が出来ました。
こんな事、俺もしたわと
小5の頃の思い出がどんどん浮かんで来て
友だちに会いたくなりました。
今のご時世だと子どもだけで海を泳ぐなんて危険極まりないとなると思うけど、
あの頃って危ない事を子どもだけでたくさんしたよなと、今の子どもたちに同じ経験をしろとは思わないけど、当時はそうやって成長して来たなととても懐かしくなりました。
夏休みだけの友だち、たった1か月だけの友だち
と言うのも良かった。
子供には永遠にも似た長く濃い1か月と言うのも
経験上よく分かる。
主人公が親父の胸で泣くシーンは涙無しには見れなかった。
息子が丁度小5なので一緒に観たかったけど、
息子が途中で寝てしまった事だけが心残りです。
2人で見た夕焼け雲、釣りをした夏の日の想い出、また会えることを切に願う作品
1986年の長崎の少年時代に体験した
男の子の友情が描かれたストーリーでした。
自分が、小学4年生のときに同級生の男の子がキン肉マンの消しゴムを持っていたこと
斉藤由貴の歌、懐かしい思いで見ました。
暑い夏の日に2人で自転車で出かけた体験は、
途中で災難に合いながらも、親切なお姉さん
に会うことができたりして、唯一無二の
忘れられない冒険になったと思いました。
2人で飲んだラムネ、一緒に泳いだ海
イルカを見ることは出来なかったけど
夏の潮風が顔に触れたこと
釣りをしてサバカンを2人で食べたこと
竹本くんがきょうだいたちと遠く旅立つ日
久田くんは、再び会えることを
信じながら、家族の優しい愛情に包まれていました。
大人になっても共に冒険をした
想い出は色褪せることなく、2人の胸に刻まれていると思いました。
ゴリパラ出てるよ
2023年7月4日
映画 #サバカン #SABAKAN (2022年)鑑賞
#新しい地図 から #草彅剛 でラジオドラマをやりたいので何かいい題材が無いか尋ねられ、監督の #金沢知樹 が生まれ育った長崎県長与町を舞台に子供時代の体験を反映させた物語を書いたのが始まり
スシローがサバ缶寿司を出したそうですね
子役たちのみずみずしさ
主演二人の今この時じゃないと出せない表情を奇跡的にとらえる事が出来たある意味運の良い映画
お話は非常に普遍的で誰にでも経験のある少年時代の黒歴史でもあり、かけがえの無い真珠のような瞬間でもある
お涙頂戴的な演出は大人達の小手先の芸ではあるのだが、子供達の未発達な、演技とも素ともとれる振る舞いでそれを感じさせない
俺はこの映画を観ながら、歳をとるにあたって仕方なく置いていってしまったものをいくつか思い出していた
刹那を繊細に温かく表現
2022年劇場鑑賞58本目 傑作 77点
2022年劇場観賞103本中の7位の作品。
当レビューは観賞から1年近く遅れてしていますが、丁度Netflixにて配信されたので2回目鑑賞し終わったタイミングでの感想になります。
まず冒頭の草彅剛が現代に思い悩む入りの出来事が、書き物をやっている人によくぶつかる才能とニーズの反比例に動く世間に対しての失望で、23年春公開の斎藤工主演の零落にも通づる問題提起。
そこから部屋で自分は本当は何をしたかったのか、夢中になっていた時を思い褪せていると目線の先にはサバ缶があり、連想させた小学5年生の夏を思いだし手が動く。
そこからはもう心弾む一夏の大冒険が始まり、平成生まれ令和現代の当方でも十分染みてくる。
尾野真千子と竹内ピストルの掛け合い、岩松了演じる森のおじさん、村川絵梨演じるちょっとお姉さん等周りを囲むキャラクターが作品のタッチに輪郭を作っている様で、間違いなく今作の高評価に大きく関わっているに違いない。
23年春に雑魚どもよ、大志を抱け!という同型作品が公開され鑑賞しましたが、完全に今作が上位互換すぎて足元にも及ばなかった。
決定的なのは物語終盤の別れのシーンのこちら側の心の洗われ具合が段違いで、今作はグッときました。
配信でも観れますので是非鑑賞ください。
あいたーす!
涙のデトックス。久々にたくさん泣いた。泣かせるところでまんまと泣いた。心の豊かさは、金があるかどうかではない。そんな綺麗事がこの映画の中では通用する。たくさんの大人たちが、彼らを育てた。男優賞は竹原ピストル。
全267件中、1~20件目を表示