劇場公開日 2022年2月4日

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「老いてもなお我々を魅了するカイテルの演技」ギャング・オブ・アメリカ 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0老いてもなお我々を魅了するカイテルの演技

2022年2月7日
PCから投稿

数々の名作において切れ味のある存在感を刻むハーヴェイ・カイテルが、80歳を超えるいまどんな姿を見せるのか。若かりし頃のバイタリティは無い。体のサイズもやや縮んでしまっているように見受ける。だが、彼がいざダイナーで一言セリフを放ち始めると、そこには独特の響きとリズム、カイテルならではの穏やかな緊張感が広がり始めるーーー我々が老いてもなお彼の演技に釘付けにならざるを得ない心理的流れは、ちょうど伝記作家(サム・ワーシントン)が不安を抱えながら”ランスキー”と出会い、徐々に引き込まれていく過程と似ているかもしれない。ただ、回想と共に現在地(80年代)を同時進行で描こうとする本作の野心的な試みをつつがなく全うするには、2時間の枠内では到底無理だ。そのため多少、足早になったり、二人の関係性が沸きらないままだったり。だがそれでもなお、本作がトライしようとしたこと、カイテルが刻んだ存在感は大いに買いたい。

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牛津厚信