劇場公開日 2021年12月31日

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「激ハマリなデンゼル御大の暴君演技」マクベス regencyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5激ハマリなデンゼル御大の暴君演技

2022年1月21日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

怖い

単純

何度も何度も映像化されているシェークスピアの戯曲ゆえ、ストーリーは知ってて当たり前。それでもいまだに作り続けられているのは、いかに作り手のイマジネーションを掻き立てる題材であるという事の証。近年マイケル・ファスベンダーがマクベスを演じたバージョンでは、マクベスが幾度の戦争によりPTSDを患っているという解釈が加わっていた。
そんななか本作は、製作がA24で、しかもコーエン兄弟の片割れジョエルが妻のフランシス・マクドーマンドと初めて二人三脚で挑んだというだけで興味十分。モノクロで画面比率4:3のアカデミーフレームという点でオーソン・ウェルズ版を意識したと思われるも、『蜘蛛巣城』を想起させるシーンもちらほら。
ストーリー展開が戯曲通りに進むというのは些か意外だが、なんといってもマクベスをデンゼル・ワシントン御大が演じるというだけで★3つは固い。『イコライザー』のマッコールさんのような無敵の男役が激ハマリなデンゼルの、権力に憑りつかれ妄想に恐れおののく暴君役はちょっと珍しいかも。それでも剣劇アクションをしっかり入れているあたり、製作陣は彼の起用法を分かっている。
マクドーマンド演じる発狂していく妻も、彼女のあのシワだらけの容姿がモノクロの陰影で浮き彫りとなって怖さが増していて、この人も自分のポジションを分かっている。 ついでに触れるとキャスリン・ハンター演じる魔女も不気味すぎ。
ただその魔女の予言が、戯曲では「女の股ぐらから生まれた者には殺されない」だが、字幕も吹替えも「女から生まれた者には殺されない」と抽象的なニュアンスになっているのが引っかかる。これではマクダフの「俺は母の腹から突き出された(帝王切開で生まれた)」というセリフが活きなくなってしまっている。
まぁ細かいツッコミはさておいて、シェークスピア劇の映画は色々と見比べて楽しむのが一興。『マクベス』に関しては前述の『蜘蛛巣城』とファスベンダー版が比較的観やすいかも。

regency