劇場公開日 2021年12月3日

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「【僕たちの閉塞感】」ショップリフターズ・オブ・ザ・ワールド ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【僕たちの閉塞感】

2021年12月10日
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この作品を観て、ザ・スミスに改めて興味がわいた。

作品中で使われる曲も、まあ、オルタナティブ・ロックに影響を与えたと言われるように、当時の他のロックバントと趣は異なるけれども、少しだけ知ってることもあって懐かしさも感じた。

ただ、あのラジオ局のDJと同じで、改めて聞いてみて、なんか良い感じじゃん!みたいなところがあるのだ。

ザ・スミスは、当時は、何にでもアンチな感じで、映画にもあるように、「The Queen is dead」というアルバムを作ったり、ブームタウンラッツのボブ・ゲルドフがリーダーシップを取っていたアフリカ救済のバンド・エイドを揶揄したりと、そのせいもあって、ちょっと胡散臭い感じがあったように覚えている。それで、日本では人気が出なかったのかもしれない。

このラジオ局ジャック事件も、記憶にあって、ザ・スミスファンも無茶苦茶だななんて思っていた。

ただ、この映画を観てみて、ザ・スミスにも、ザ・スミスに共感を覚える人たちにも、共感するところはある。

僕たちは、自由主義の国にいて、中国やイスラム諸国のような国家・宗教主義的な窮屈さはない。

じゃあ、それで良いじゃない、贅沢!と言う人がいるとは思うが、よく考えると、法律や様々なルールのほか、こうあってほしいとか、こうすべきだという家族や周囲の期待だけじゃなくて、流行や同調圧力だって、僕たちの身動きを窮屈にしてるじゃないかと思う。あのバカみたいな校則や、#MeTooや#KuTooで再考させられることもそうだ。それに、ネット右翼みたいな民族主義者の主張もバカげてて面倒くさい。ひどいもんだ。

横尾忠則さんが、何でもコンセプトありきのアーティストが多くなってきていて、実はコンセプトの中でしか自由じゃなくて、枠の外には無限の自由が広がっているのに、それは広すぎるのだろうか?限定は自由の放棄じゃないのか?というようなことをおっしゃっていて、確かにそうだななんて考えると、暴力や暴言・誹謗中傷はよくないとは思うけど、せめてマーケティングにリードされるような流行や、思考を強要される同調圧力からは解放されるべきだなんて思うし、そんな、啓蒙があっても良いような気がする。

そんな、ことで、機会があったら、ザ・スミスをもう少し聴いてみたいと思った。

ワンコ