劇場公開日 2021年10月30日

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「B級映画にしてはよく出来ている方だと思う」マスカレード 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5B級映画にしてはよく出来ている方だと思う

2021年11月5日
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鑑賞方法:映画館

 本作品は、観客をミスリードするタイプの映画である。ネットで公開されている作品情報がそれに輪をかける。おまけに入場するときにチラシを渡す念の入れようである。作品情報やチラシを読んでいなければ、もう少し解りやすかったと思う。

 音楽の効果は抜群だ。単に夜の木を映しているだけなのに、低い不協和音が流れるおかげで、怪しさ満点である。おかげで違いに気づけなかった。その違いというのが、次のような違いである。
 ローズは強盗を裏で操っている謎の女ではない。屋敷は同じ屋敷ではない。一方は森や川のそばにあるが、一方は広大な人工庭園の中にある。子守は同じ子守ではない。マスカレード会場のホステスの名はローズではない。

 こういったことに気づくことができて、尚且、現在と過去という時間の認識まであれば、本作品は意外なほど単純で、世界観の浅い作品であることが解る。内容は単なるクライム・リベンジだ。
 チラシのタイトルは「少女vs強盗団───その背後に隠された真実に驚愕するレイヤード・アクション・スリラー」となっている。レイヤードとはつまり現在と過去を重ね合わせたという意味だ。ここに気づいていれば、最初からネタが解って鑑賞できただろう。

 盗んだ絵画を画商に持ち込むと、通報される恐れがあるが、自分が画商として売るのであれば、絵の入手方法は守秘義務として明かさずにいられる。本当かどうかはわからないが、少なくとも本作品はそういう想定だ。

 ネタバレにならないように注意して、鑑賞した人だけに解るように解りにくく書いてみた。なんだそんなことかと軽い失望を感じる人もいるかもしれない。確かにラストのネタバラシのために一生懸命の作品にも感じられるが、強盗と少女の攻防には一定の緊張感があり、80分という短さもあって、割と面白く鑑賞できた。B級映画にしてはよく出来ている方だと思う。

耶馬英彦