劇場公開日 2023年9月15日

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「変化しないために努力する町」アリスとテレスのまぼろし工場 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0変化しないために努力する町

2023年9月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

時間が止まった街を舞台にしていることに、社会に対する批評性が宿る。この作品世界で時が止まったのは、1991年の1月。バブル崩壊の二ヶ月前だ。作中のおじいさんのセリフで言うところの「一番良かった時代」に時が止まったので、この街の人々はその後の平成不況を知らない。
その一番良い時代をなんとか維持しようと、この街では変化・成長することを禁じている。定期的に「自分確認票」を提出させ、変化していないことを確認させる。この町の人々は、変化するために努力するのではなく、「変化しないため」の努力を強いられている。
日本が一番良かった時代で止まってくれていればと思っている年長世代は実際にたくさんいるだろう。しかし、そんなふうに維持する努力をしても、この町のように、徐々にどこかに無理が出てきて、いつかは崩壊することが目に見えている。そんなことに若い世代を巻き込んでいいのかと、この映画は問いかける。
唯一、肉体が変化する五実を元の世界に戻すために、中学生たちが奔走する。大人たちはそれを止めようとする。大人たちの都合で変化を止めている日本社会への痛烈な批判精神が宿る映画だ。

杉本穂高
ゆんさんのコメント
2023年10月4日

Σ(゚◇゚;)マジデッ!?

ゆん