アネット

劇場公開日:

解説

「ポンヌフの恋人」「汚れた血」などの鬼才レオス・カラックスが、「マリッジ・ストーリー」のアダム・ドライバーと「エディット・ピアフ 愛の讃歌」のマリオン・コティヤールを主演に迎えたロック・オペラ・ミュージカル。ロン&ラッセル・メイル兄弟によるポップバンド「スパークス」がストーリー仕立てのスタジオアルバムとして構築していた物語を原案に、映画全編を歌で語り、全ての歌をライブで収録した。スタンダップコメディアンのヘンリーと一流オペラ歌手のアン、その2人の間に生まれたアネットが繰り広げるダークなおとぎ話を、カラックス監督ならではの映像美で描き出す。ドライバーがプロデュースも手がけた。2021年・第74回カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞。

2020年製作/140分/PG12/フランス・ドイツ・ベルギー・日本・メキシコ合作
原題:Annette
配給:ユーロスペース
劇場公開日:2022年4月1日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第79回 ゴールデングローブ賞(2022年)

ノミネート

最優秀主演女優賞(コメディ/ミュージカル) マリオン・コティヤール

第74回 カンヌ国際映画祭(2021年)

受賞

コンペティション部門
監督賞 レオス・カラックス

出品

コンペティション部門
出品作品 レオス・カラックス
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(C)2020 CG Cinema International / Theo Films / Tribus P Films International / ARTE France Cinema / UGC Images / DETAiLFILM / Eurospace / Scope Pictures / Wrong men / Rtbf (Televisions belge) / Piano

映画レビュー

5.0人形は人間より雄弁

2022年5月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

表題となっているアネットは主人公夫婦の間に生まれる子供の名前だが、この役に人形を当てたのが大正解だった。人間はかなり古い時代から、人形を作ってそこに様々な意味を仮託してきた。不滅の肉体だったり、理想の身体だったり、聖性や呪いの象徴としても扱うこともあった。そのように意味付けされた人形の存在感は生身の人間を超えている。人形には表情がないから、人形を見る私たちはそこに自分の見たい感情を投影してしまう。そのせいで、人形は時に人間以上に雄弁な存在として振舞い得る。本作はまさに人形をそのような、人々の感情や理想を投影する偶像(アイドル)として用いている。
ミュージカルを選択したにもすごく良かった。リアリズムでいかなくて済むので、人形がいても違和感がない。超現実的な空間を見事に作り上げて現代的神話を創出している。カラックス久々の特大ホームラン。今年を代表する1本。

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杉本穂高

4.0舞台ミュージカルを映画の世界観で自由奔放に表現した楽しさと人形アネットの斬新さ

2024年1月17日
PCから投稿

笑える

悲しい

楽しい

完璧主義の耽美的な映像を得意とする寡作監督レオン・カラックス監督のユニーク且つ独創的なロック・オペラ・ミュージカル映画。舞台ミュージカル「アネット」上演が観客席の垣根を越え、街に躍り出て歌い踊り芝居をするカラックス独自の世界観が楽しい。狭い舞台では表現できない自然の息吹と街に巣くう人間の吐息を映像化した野心作にして、ストーリー自体が凡庸なのが勿体ないくらいで、もうひと捻りあれば文句なしの傑作になったであろう。しかし、この映画の面白さは、カラックス監督の映画愛に裏打ちされた野心にあり、それはアネットを操り人形で演じさせた挑戦に価値がある。人形が持つ独特な生命感と神秘性を生かし、最小限の動きだけでアネットの名演を生み出している。予想通り最後は人間の少女に替わったが、人形程の存在感が無いのがそれを証明している。

主演のアダム・ドライバーとマリオン・コティヤールの役になり切っての熱演も素晴らしい。カロリーヌ・シャンプティエの撮影は、夜のシーンが特に素晴らしく、カラックスの世界観を美しく表現していて見事。演出も含め嵐に遭遇するヨットの海のシーンの舞台劇的な表現と孤島に上陸した後の幻想的な絵画の色調の趣もいい。ヘンリーが住む家のプールの使い方の巧さも印象的。初めて聴くスパークスの音楽は台詞を重要視したもので、ロックの派手さより演技に寄り添った音楽の印象を持った。日本の古舘寛治が産婦人科医師役で出演しているが、何故そこにと思ってしまい可笑しくなってしまった。

最初のタイトルバックの録音スタジオから街に繰り出すスタッフ・キャストが期待感をもたせ、最後はカーテンコール宜しく森の中を皆が行進する。登場したアネットの人形たちも皆に抱えられている。悲しいストーリーのミュージカルでも、人形が活躍する斬新さと巧さが観ていて楽しいミュージカル映画でした。舞台の面白さ、音楽の素晴らしさ、そして映画の楽しさが一つになったレオン・カラックスの秀作。

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Gustav

3.0大雑把な悲劇の中に登場人物たちの感情の根拠が隠されていて、脚本も好...

2023年11月9日
iPhoneアプリから投稿

大雑把な悲劇の中に登場人物たちの感情の根拠が隠されていて、脚本も好きだったし、演技も素晴らしかった!ただミュージカルの物語の大雑把さは、音楽で脚色されることを踏まえてのことだと思うから、音楽がしっかり情緒たっぷりじゃないと物語として観るには厳しい時がある。今作の音楽は不穏なキャッチーさは良かったけど、自分はハマらずで感情がイマイチ乗らなかった。

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えー

5.0愛の不可能性を子供の目線で。

2023年8月5日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

2020年。レオス・カラックス監督。二度目。毒舌コメディアンの男と人気オペラ歌手の女。住む世界が異なる二人のエンターテイナーが恋に落ちるが、不安から破滅を迎え、さらにその子(アネット)をめぐってもう一波乱が起こるという話。
音と映像のセッティング調整から始まる冒頭(May we start)と出演者や関係者がまとまって挨拶しながら消えていくエンドコール的はラストまで、映画であることの自意識に貫かれた作品。相変わらず愛の不可能性を追求しいるが、そのなかには、愛を映画化することの不可能性も含まれているのだ。
恋の悲劇もとても美しく描かれているが(この女性の役者さんを美しいと感じたのは初めて)、そこで終わらず、資本主義の搾取問題、エンタメ世界の浮薄な観客問題、子供の人権・人格問題、そして人間の孤独問題を、現代社会における局限の姿で描いている。男女はそれぞれ「深淵をのぞいてしまった男」と「何度も死ぬ女」である。コメディアンという形で世界と人間の真実を追求している男は、結局は殺人を犯すのだから罪と罰を受けるのは当然だが、オペラ歌手として成功し、子供をつくり、愛する男を持った女がどうしようもなく「何か違う」と思うとき、子供から見たエゴイズムがあるのは否定できないという意味で、女もただの被害者というわけではない。どうしようもない世界や人間の在り方を、子供の登場によって倫理的に問うことが可能になってる。愛の不可能性はより深まる。
音楽が素晴らしい効果を上げている。耳に残るリフレイン。導入と結末で映画の内と外が入り乱れ、歌が現実の世界とミュージカルの世界を橋渡ししている。
すごい映画を見た。二度目にして同じ感想。

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