劇場公開日 2021年6月4日

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「ゲーム感覚を強調したループSFアクション。ナオミ・ワッツとメルギブの対話シークエンスは別の意味で見もの」コンティニュー 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5ゲーム感覚を強調したループSFアクション。ナオミ・ワッツとメルギブの対話シークエンスは別の意味で見もの

2021年6月6日
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鑑賞方法:試写会

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主人公のロイは元特殊部隊員。ベッドで目覚めると得意の武器がそれぞれ異なる殺し屋たちから次々に襲われ、数人は返り討ちにするが、何人目かで失敗し命を落としてゲームオーバー。ベッドの場面から死闘がリスタートする…。一定幅の時間を延々と繰り返すタイムループものはSF映画の人気サブジャンルだが、設定が特に近いのは桜坂洋原作、トム・クルーズ主演の「オール・ユー・ニード・イズ・キル」だろうか。敵の攻撃はある程度パターン化しているので、繰り返すたびに相手の動きを予測できるようになるし、対戦スキルも向上する。「Boss Level」という原題も含め、ゲームをかなり意識した作りになっている。

当初ロイは自分が時間のループに取り込まれてしまった理由を分からずにいるが、やがて元妻で軍需系の研究所に勤める科学者のジェマ(ナオミ・ワッツ)と、その上司(メル・ギブソン)が取り組む極秘プロジェクトに関係があることに気づき…。

主演のフランク・グリロは1965年生まれの55歳。デビュー作は92年の「マンボ・キングス わが心のマリア」(懐かしい!)だそうだが、主要な役が続くようになったのは2010年代に入ってからなので遅咲きの部類に入るだろう。若い頃からレスリングやブラジリアン柔術などをやっていたらしく、さすがに格闘アクションは本格派。ガンアクション、肉弾戦、剣での対戦などバラエティーに富むファイトで楽しませる。なお、斬首のショットも何度かあるので、残酷描写が苦手な方、お子さんと一緒に観ようと思う方は留意すべきだろう。

監督のジョー・カーナハンは、過去作に「スモーキン・エース 暗殺者がいっぱい」「特攻野郎Aチーム THE MOVIE」などもあり、大勢がわちゃわちゃと戦いを繰り広げる活劇が好みのよう。ちなみにロイが息子ジョー(フランクの実の息子リオが演じている)と「96時間」の話をして、“強い元軍人”という観点で「リーアム・ニーソンは偽物、パパは本物」と言う場面があるが、カーナハン監督作の「特攻野郎~」と「THE GREY 凍える太陽」にニーソンが出演しており、しかも後者ではグリロも共演しているので、ここは仲間内のジョークだろう。

中盤、研究所のオフィスでナオミ・ワッツとメル・ギブソンがプロジェクトについて話すかなり長めのシークエンスがあるのだが、2人のスケジュールが合わなかったのか、ワッツの顔が写っている時のギブソンは後頭部だけ、逆にギブソンの顔が見える時は女優を背後から写すといった具合に、ボディダブルを使った切り返しショットを延々とつなげている。ただし引きの画で2人の顔を収めたショットも若干あり、そこはおそらくポストプロダクションでどちらか一方をCG処理したのだろうと思われ、あの手この手でスター2人が対話しているように見せる苦労に気を取られてしまい台詞の内容がさっぱり入ってこないのには参った。

高森 郁哉