劇場公開日 2021年6月11日

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「自分で決断する別れの時。」ブラックバード 家族が家族であるうちに 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0自分で決断する別れの時。

2022年6月22日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

2019年(アメリカ/イギリス)監督:ロジャー・ミッシェル。
安楽死を覚悟したリリー(スーザン・サランドン)は、ある週末を、
最愛の家族・友人と過ごしてから、旅立とうとしている。
その3日間を描いています。
順調にその日を迎えられる筈だったが、娘のジェニファー(ケイト・ウィンスレット)が、
父親ポールと母親の親友リズのキスシーンを目撃したことから、
思いがけぬ展開を迎えて波乱含みとなります。

この映画を観た人は全員「安楽死の是非」を考えずにはいられないと思います。

私は2018年のNHKのドキュメンタリー番組で重い神経難病の女性が
スイスの安楽死施設で自分らしさを保ったまま亡くなる瞬間を見ました。
ベッドに横たわり「宜しいですか?」「はい」の会話の後で、注射。
身じろぎひとつせず、呻き声ひとつあげず、ものの2分で眠るように、亡くなりました。
衝撃だったのは、苦痛が皆無だったこと。
リリーさんは同じくALSの患者だと思います。
夫のポール(サム・ニール)は医師で、あと数週間で、リリーは歩けなくなり、水も唾も薬も飲み込めなくなり、気管を切開して人工呼吸器を装着、胃に穴を開けて栄養を注入することになる。
そうなる前に、インターネットで用意した薬を飲み、その後ポールは散歩に出る。
帰ってから、「妻が自殺した」
そう通報するとのシナリオ。

偶然にも私の親友が、2月にALSを宣告されたのです。
最初に会話が不自然になりました。
話すことが難しくなったのです。
宣告される2ヶ月前。お会いしました。
言葉を話すのに大きくくちを開きゆっくり話すのですが、聞き取り難い。
話すのにとても疲れる・・・と言っていたのが印象的で、そのときは、
「軽い脳梗塞の後遺症」と医師に告げられたと言ってました。
彼女の場合。話せない、食べ物が飲み込みにくい、噛めない、耳鳴りがする。
それから徐々に運動障害が進んでいきました。
私は、とても聞けませんでした。
「人工呼吸器は付けるの?」とは。
人工呼吸器装着はイコール遺漏をすることを意味します。
現在、日本で新たに人工呼吸器を装着するALS患者は15%から17%と推測され、
装着率は世界一高いそうです。
逆に言えば、85%近くの人は、人工呼吸器を装着せずに亡くなっていることになります。
呼吸器を装着せずに迎える「死の苦痛」は恐ろしく、想像もつきません。
人工呼吸器を使わない場合、病気になって死亡するまでの時間はおよそ2年から5年。
(・・・・これは地獄ですね)

2020年11月。ALS患者の女性が面識のなかった医師2人に殺害を依頼したとされる、
「京都ALS患者嘱託殺人事件。」
我が家でも娘が非常に関心を示して、
「日本でなぜ安楽死が認められないの?」
「京都の女性は、自殺出来るうちにそうしなかった事を、深く悔いていた」
そして女性の24時間介護にあたっていたチームは、非常にショックを受け、
悔恨を滲ませて、徒労と無力感を感じたそうです。
日本人はどこかで死のあり方を間違っていませんか?

琥珀糖
マサシさんのコメント
2024年2月18日

他の方の死生観ですから、僕には無関係ですが、死んでも生きて地獄なら僕は生きていたいですね。

マサシ