劇場公開日 2021年6月11日

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「タイトルはビートルズ由来かなぁ、と思っていたら、ほんとにそうだったけど、色々あって本編とはあまり関係がなくなっちゃったという一作。」ブラックバード 家族が家族であるうちに yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0タイトルはビートルズ由来かなぁ、と思っていたら、ほんとにそうだったけど、色々あって本編とはあまり関係がなくなっちゃったという一作。

2021年8月4日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

本筋とは直接の関連はないけど、食事の場面がとにかくおいしそうな作品でした(もっとも、「おいしい」だけじゃ済まないんだけど)。ケイト・ウィンスレットは『アンモナイトの目覚め』とは少し印象が異なる役柄を見事に演じています。そして本作の中心人物、リリーを演じるスーザン・サランドンは言わずもがなです。身近に迫った死を意識しつつも、ユーモアや洗練された身のこなしを決して損なわないという、難しい設定の役柄を魅力的に演じています。

物語の舞台はリリーとその夫が住む邸宅と、その周辺にほぼ限定されており、高級な調度品と現代的なデザインの邸宅は、それ自体がモダン・アート作品のようです。舞台装置だけでなく色彩のコントロールも行き届いていて、淡い緑と白を基調とした部屋は、現実味もありながらどこか「この世ならざる」雰囲気を醸し出しており、本作のテーマを体現しています。それでいて、非常に重要な場面で効果的に赤を配色するという手法も、基本的でありながら見事な手際です。

リリーにとって義理の息子の行動にやや唐突さがみられたり、中盤に示唆される、ある「謎」をめぐるやり取りの顛末について、ごく些細な引っかかりはありましたが、それ以上に心に残る作品でした。

本編とは直接関係ないけど、ロジャー・ミッシェル監督のインタビュー記事がおもしろくて、実はリメイク版である本作のオリジナル版を観ていないことを認めていたり、タイトルの「ブラックバード」はビートルズの同名の曲を使うつもりで付けていたけど、別の曲に差し替えることになったんでタイトルだけ残っちゃった(ラストにタロウタドリという黒鳥が写っているので、無関係じゃないとの監督の弁)、といった裏話を色々してくれています。

yui