劇場公開日 2021年11月26日

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「エイベックスは詐欺か何かにあったんですか? それぐらい不出来な映画でした」幕が下りたら会いましょう 東鳩さんの映画レビュー(感想・評価)

1.5エイベックスは詐欺か何かにあったんですか? それぐらい不出来な映画でした

2021年11月28日
PCから投稿

元々CDが売れなくなり、コロナ禍のせいでライブ収益も途絶えて、音楽とは別に新たな事業で収益出さないと会社が潰れそうなのは分かりますけど
それにしても???な映画でした
エイベックスがいくら出資して映画作らせたのか分かりませんが、こんな出来なら詐欺にあってるようなもんですよ
面白いものを作れる脚本監督と素人に毛が生えた程度の脚本監督すら見極められないなら、エイベックスは映画事業に手を出さないほうがいいんじゃないでしょうか?

細かい指摘はキリが無いんですが、大きく言えば、松井玲奈のキャラに目的や主体性が無いのが大きな問題です
基本受け身で、他者のアプローチがあってからご都合で話が少し動いて、そしてすぐに手詰まりになって話が停滞し、またご都合で話が動いて、……で、観客にはまったく納得感が無いのに松井玲奈だけ急に納得して終わる、という現代芸術みたいなラストには呆気にとられました

妹の書いた戯曲を勝手に演劇にしたことで2人がギクシャクしたなら、そこだけを中心に中心に描けばいいのに
妹は腹違いだったとか、離婚した父親とか、その父親と新しい母親の間に生まれた別の妹とか、妹の死因はアルコールハラスメントとか、家業が床屋とか、そういうのが本筋と関係無さすぎるのに尺を取り過ぎです
そういう設定を出すなら、それらすべて関係あるように伏線バラまいた上でラストに収束する脚本にしないと……
実際はまったくそうなってないですね

それに妹も妹で何を考えてたのかがまったく不明です
戯曲を盗まれたことに対してどう思っていたのかもそうですが、何をしたくて東京に行き、何でこの会社に入社したのか、何で後輩かばってアルコールを多飲したのか、とか一切何も描かれていないし分かりません
あの死に場所になった工場?にも何でゲートを開けて入っていったんですか?
なんであのタイミングで松井玲奈に電話したんですか?
一体何を言おうとしていたんですか?
妹は実の父親と交流があったんですか?
松井玲奈には、あの時電話に出ていれば……という後悔の葛藤は無くていいの?
そういうのが全く描かれていないし、答えも出してないし、多分、創作者たちの中にも答えが無いのがハッキリ伝わってきました
だからマジでレベルが低いと断言します
本当だったら、戯曲を盗まれたことに対しての妹の本音が明らかになって、それがポジティブなものだったから松井玲奈のカタルシスが氷解して泣くラストを迎えるとか、それが主人公の物語ですよ

今の脚本のままで、松井玲奈は一体何が腑に落ちてラストで泣いてたんですかね?
あれじゃあ、こっちが腑に落ちないんですよね

あのラストも本当ならエンドロール後のオマケ映像じゃないですよ
松井玲奈の泣き芝居、1番最高の演技が物語のピークに来ないと
主役の良い芝居を中心に据えないで、監督がしたかったであろう舞台に妹のマボロシが現れるというシーンをピークに据えてる時点で、監督の力量が?×10です
こんなの、自分がやりたい演出するために物語やキャラクターの行動原理や主演の演技プランを丸ごとぶち壊してるだけですからね

根本から間違ってますけど、とりあえずこの編集をアリとするならば、松井玲奈がラーメン食って泣くためには、あのラーメンは妹が1番好きだったラーメンとか、そういうのも前フリしてないとダメですよ
脚本がホント浅くて、演出もその不自然さをカバーするんじゃなくて、変わったアングルで撮ろうとか(松井玲奈が泣くシーンを完全に真横から、中途半端な画角で撮っても涙が見えないんですけど?)、表情じゃ無くて仕草や小物を撮ろうとか、そういうセンス自慢を優先して演出してるからダメな監督だなと心底思いました

東鳩