劇場公開日 2021年9月23日

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「知られざる「第3次世界大戦」の回避の舞台裏。こういう実話を知らせるのに映画は有効だと改めて実感。」クーリエ 最高機密の運び屋 細野真宏さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0知られざる「第3次世界大戦」の回避の舞台裏。こういう実話を知らせるのに映画は有効だと改めて実感。

2021年9月24日
PCから投稿

1960年代の初頭は、アメリカとソ連が核武装競争を繰り広げ、いつ「第3次世界大戦」が起こってもおかしくない雰囲気でした。特にソ連が、アメリカを射程においたキューバに核ミサイル基地を作った際、その緊張がピークとなります。
1962年10月16日にアメリカの偵察機がキューバ上空から核ミサイル基地の撮影を行い、「人類史上最も危険な13日」とも呼ばれる「キューバ危機」が起こります。
アメリカはソ連と交渉するも不調に終わり、10月22日にケネディ大統領がテレビ演説をする有名な映像があり、その後も一触即発の事態が起こります。
そして、10月28日にソ連側がミサイル撤去を決め、第1書記がモスクワ放送で発表、という流れになるわけですが、そもそも、なぜアメリカはキューバの核ミサイル基地の存在を知ることができたのでしょうか?
この世界の命運を決めた現実の背景には、1人のイギリスのセールスマンの存在が大きくあったのでした。

アメリカにGRU(ソ連軍参謀本部情報総局)の大佐から「核戦争の危機を回避する手助けをしたい」という申し出があり、その機密情報のやり取りをするためにCIAがイギリスのMI6に出向きます。
そして「イギリスのセールスマンが、何も知らない状態でソ連にセールスをしに行き、ソ連の高官とやり取りをすれば、ソ連のKGBの注意もそらせるはず」というアイデアを提案します。
果たしてアメリカとソ連の両陣営にスパイが多くいる中で、本当にこのようなミッションが上手くいくのでしょうか?
そこには、意外な過程と現実があったのでした。
そもそも「クーリエ」とは「外交伝書使」の事ですが、この最高機密を運び出す過程で何が起こったのかは、本編を見るのが一番早いと思います。
もちろん、CIA諜報員は複数の人物を一人の女性にして分かりやすくするなどの工夫(脚色)もあります。そして、決して派手な作品ではありませんが、製作総指揮も務めたベネディクト・カンバーバッチのもと丹念に史実を伝えている良質な作品だと思います。

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細野真宏